テラーノベル
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午後の授業が終わると、颯真は何も言わずに校舎を出た 大翔はそれを見て、少しだけ早足で追いかける。
大翔
颯真
大翔
颯真は立ち止まり、空を見上げた 雲がゆっくり流れている。
颯真
それだけ言って、歩き出す 大翔は笑いながら、隣に並んだ。
図書館の扉を開けると、ひんやりとした空気がふたりを包む 木の棚に並ぶ本、静かな足音、遠くでページをめくる音
颯真は何も言わずに奥の棚へ向かう 大翔は少し迷ってから、別の棚へ
しばらくして、ふたりは偶然、同じテーブルに座った それぞれ違う本を手にしていたが、ページをめくるタイミングが不思議と重なる 大翔が小声で聞く
大翔
颯真
大翔
颯真は少しだけページを戻して、指で一行をなぞる。
颯真
大翔は黙って頷いた。
颯真
大翔
颯真
大翔
颯真は目を伏せて、ページを閉じた。
颯真
大翔
ふたりの間に、言葉にならない何かが流れていた それは風のように、そっと心に触れていた。
図書館を出たあと、ふたりは駅までの道を歩いていたが、大翔がふと立ち止まる。
大翔
颯真は少しだけ迷ったが、頷く
ベンチに並んで座る二人 図書館での集中がほどけて、風が頬をなでる 夕焼けが空を染めて、木々の影が地面に揺れていた。
しばらく沈黙が続いたあと、大翔がぽつりと口を開く。
大翔
颯真
大翔
颯真は少しだけ眉を動かしたが、何も言わなかった
大翔
颯真
大翔は、ベンチの背もたれに体を預けて、空を見上げた
大翔
颯真
大翔
颯真
二人の間に、また風が通り抜ける その風が、少しだけ二人の距離を縮めたような気がした。
大翔がポケットから小枝を取り出して、足元の砂をつつき始める 颯真はそれを横目で見ながら、何も言わずに空を見ていた
大翔
颯真
大翔
大翔
颯真は少しだけ目を伏せて、言葉を探すように口を開いた
颯真
大翔
颯真
大翔は枝を止めて、颯真の横顔を見た
大翔
颯真
大翔
颯真は、ふっと笑った
颯真
大翔
二人はまた沈黙する でもその沈黙は、さっきよりも少しだけ、あたたかかった。