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Saya💗🐱
Saya💗🐱
ふわりと体が浮くような感覚があれば 屋上に着く合図。
何度も見た景色。
少し後悔のあるこの場所に、 何度も何度も連れてこられる。
ここに来たところで、 何が起こるわけでもない。
ただただ、あの頃と同じように、 校庭を見つめるだけ。
校庭の雰囲気は随分と変わって、 バスケ部の外練習も なくなってしまったようだった。
正直、良い思い出は少ないこの場所に何度も来てしまうなんて、 まだ未練があるのかな、 なんてくだらないことを考えながら、夕日を見つめる。
もう一度、百ちゃんに会いたい。
百ちゃんに最後に言われたあの言葉。
嘘だってわかっても、後悔なんて 消えるわけなくて。
「大嫌い」じゃなくて、 「大好き」って言ってほしい。
ただ、それだけなのに...。
桃
いつものように夕日を眺めていると、 突然声が聞こえた。
まさか俺に話しかけられているなんて思いもしなかったので、 誰に話しかけているのか気になった 俺は、声の聞こえた方へ体を向ける。
赤
振り向いた先にいたのは、 真っ直ぐとこちらを見る、 ピンク色の髪をした男の子______
まるで百ちゃんのような、 男の子だった。
桃
俺の周りには誰もいない。
つまり、彼には俺が見えているということだった。
赤
とりあえず答えてみる。
桃
桃
やはり俺の声は届いているようだ。
先輩...といえば先輩だが、 正確には違うというか...
しかし、それを伝えると ややこしいことになるので、 そういうことにしておこう。
赤
赤
桃
赤
桃...?百ちゃんと同じ名前...。
目の前の後輩くんは 百ちゃんだったりして... なんてまた考えている自分に呆れる。
桃
赤
会ったことがあるかと言われれば... まだわからない。
百ちゃんの話をするのも違う。
まだ初対面だし...
赤
純粋な疑問だった。
この学校の屋上に来る人というのは、俺も含め、大抵変わった事情が ある人ばかり。
彼もまた、何か深刻な悩みを 抱えているのではないかと思った。
桃
彼は少し考えた後、こう言った。
この感じだと、深刻な悩みでは なさそうだ。
赤
桃
少々キレ気味に言う桃くん。
見た目は百ちゃんに似ているが、 性格は違うみたいだ。
赤
赤
百ちゃんの練習している姿を見るのが大好きで、毎日ここに来ていたことを思い出して恥ずかしくなった俺は、 照れ隠しに夕日の方に体を向ける。
夕日を見ると、やはり 百ちゃんに会いたい、という気持ちが強くなってしまって、寂しくなる。
桃
赤
何かを察したように、それ以上 深く聞いてこないところから、 彼の優しさが見えた気がした。
山にすっぽりと頭まで 入ってしまった夕日。
夕日が沈むと、またふわりと 体が浮くような感覚になり、 元いる場所へと戻らされる。
あと数分で何も言わずに消えていたら 怖いだろう、と思い、 「...あ、夕日、落ちちゃったね」 と帰宅を促すような発言をしてみる。
赤
桃
なぜか戸惑っている桃くん。
桃
俺と一緒に帰ろうとしていたと いうことか。
帰りたい気持ちは山々だが、何せ俺はここから出られない。
どう断ればいいものか...
赤
そんな苦し紛れな 言い訳をしてごまかす。
桃
納得がいっていない様子の彼。
それはそうだろう。 普通、ここで一緒に帰る流れに なるのだから。
桃
赤
まさか、そんなことを言われるなんて思っていなかった。
正直、このまま彼と会い続ければ、 百ちゃんと重なって、離れられなく なりそうで怖くてたまらない。
でも、桃くんを求めている 自分がいるのも事実だった。
赤
そう、答えてしまった。
桃くんは少し安心したような表情に なり、会釈をして走っていった。
赤先輩、か...。
桃くんと話していると、百ちゃんに 先輩呼びされているようで、なんだか照れ臭くなる。
そんなことを考えていると、ふわりと体が浮き、目の前が真っ白になったと思えば、いつのまにか元いた場所に 戻ってきていた。
また明日も会えますように...なんて。
赤
体が重い。
周りを見渡すと、またあの屋上に 来ていた。
体が浮いた感覚がないままここに 来たから、体が重いのか...などと 考えながらいつものように 夕日を眺める。
“また今度”っていつだろう...。
今日は桃くん来てくれるかな...。
気がつくと桃くんで頭がいっぱいに なっている自分が馬鹿馬鹿しい。
桃
赤
桃
こいつ...
性格は似てないと思ったのに...
似ている。いや、似すぎている。
赤
言い訳する俺を見て、ケラケラと笑う桃くん。
これでは百ちゃんのときと立場が 変わらない...。
桃
笑っていたかと思えば、急に真面目な話をする桃くん。
そんなところも、百ちゃんと少し 似ている。
赤
桃
真っ直ぐ俺を見つめながらそんなに 真面目に感謝されると照れてしまう。
赤
桃
赤
俺を茶化す姿は、まさに百ちゃん そのもので、本当に生まれ変わり なのではないかと疑う。
桃
赤
彼の視線は、俺の首元に向いている ようだった。
桃
赤
百ちゃんのくれたネックレスを 指差しながら確認する。
桃
桃
純粋に褒めてくれる桃くん。 百ちゃんもきっと 喜んでいることだろう。
赤
先輩からもらったことは、 伝えておこう。
赤
桃
赤
赤
桃
赤
“その先輩は死んだ” なんて、彼に伝えることは できなかった。
桃
しんみりした空気になり、完全に 気を遣われている。
俺が空気を変えなければ...!
赤
桃
赤
赤
桃
俺が敢えて“イエローアパタイト” という名前を出した理由。
...イエローアパタイトの意味 “嘘”
俺の存在自体、嘘だということを、 わかってほしかった。
気づいてくれないかな、なんて 出来もしないことを願う俺は、 バカなのかもしれない。
桃
赤
そんな俺をよそに、優しい言葉を かけてくれる彼。
...好きになっちゃうじゃん。
赤
桃
赤
桃
赤
どこかで聞いたような言葉。
百
百
百ちゃんが何度も伝えてくれていた 言葉だった。
桃
桃
桃
赤
そういえば、百ちゃんもあの言葉の 後に告白してきたな、と思い出す。
本当に生まれ変わりなのかもしれない
そう思うと、断れなくなる。
本当は、断らないといけない。
彼との関係は、持ってはいけない。
だけど、離れたくない。
そんな葛藤が俺を苦しめる。
赤
赤
赤
桃
自分では判断できないと思った俺は、条件をつけることにした。
普通ならありえない条件。
そうすれば彼が諦めてくれるだろう。そう思った。
赤
赤
赤
桃
それはそうだろう。
普通に考えてありえないのだから。
本当の理由を言ってしまえば楽なのだろうが、勇気のない俺は、 「なんで...なんだろうね」 と、苦し紛れにごまかした。
桃
赤
何を言っているんだ、この子は。
毎日会いにこないと会えない恋人 なんていらないはず。
赤
赤
赤
桃
慌ててもう一度条件を繰り返して みたものの、彼の答えは 変わらなかった。
桃
桃
そんな少し頑固なところも百ちゃんに似ていて、俺の中でどんどん桃くんが百ちゃんと重なっていく。
このまま続けばいいのに。
そう思ってしまった。
赤
桃
赤
桃
自己満足のために、もう一度 確認してみた。
あくまで桃くんが、 その決断をしたんだと自分に 思い込ませるように。
赤
赤
結局自分の気持ちに勝てず、桃くんと関係を持ってしまった。
桃くんのせいにして。
最低だと自分でも思う。
でも、もうこうすることでしか自分の心を守ることができなかった。
少し冷たい風に吹かれながら、 俺は今日もまた、夕日を眺める。
あの日以来、俺たちは正式に“恋人”になってしまったわけだが、恋人なのに恋人らしくない。
そんなあやふやな関係を ずっと続けていた。
桃
赤
今日も来てくれたんだ、なんて 思いながら彼の名前を呼ぶ。
本来あってはならない関係をどこか 楽しんでいる自分に呆れる。
桃
赤
赤
桃
屋上から見る夕日。
この景色こそ、俺の短い高校生活、 いや、人生の全てとも言える。
百ちゃんと出会ったのも、 付き合ったのも、別れたのも。
...俺が、人生を捨てたのも。
全部の始まりであり、終わりでもあるこの場所は、本当に俺の全てだと 言えた。
そんなこと桃くんには話せないけど。
赤
桃
赤
赤
百
百
赤
百
赤
百
赤
赤
百
百
赤
百
赤
百
桃
まったく。俺と同じ反応しちゃって。
赤
桃
桃
赤
“百ちゃんに呼ばれてるみたいで” と続くはずの言葉は、隠しておく。
桃
桃
赤
そういえば雨の日にここに 来たことはなかった。
正直、桃くんと出会ってから何日 経っているのかもわからないし、 気づけばここにいることばかりで、 何もわからない。
桃
“いつも晴れるわけじゃない” ということは、付き合ってからは まだ数日で、その間はたまたまずっと 晴れているってことか。
赤
嘘。
桃
赤
嘘。
桃
桃
素直すぎる。
桃くんと出会ってから嘘を 重ね続けている俺にとって、その 素直さは罪悪感にしか変わらなかった
赤
罪悪感に負けた俺はまた、 あやふやにする。
桃
赤
桃
そう微笑む桃くん。
ずっとこの笑顔を守れたら、なんて 出来もしないことを願う。
桃
突然お腹を抱えてしゃがみ込んだ 桃くん。
さっきまで普通に話していたはず...。
赤
返事がない。
ダメ。死なないで。 まだ、こっちに来ちゃダメ...!
そう願っても、俺が彼に 出来ることはない。
...俺は、幽霊だから。
苦しむ桃くんを前に、ただ呆然と 立ち尽くしていた。
橙
誰...?
桃
橙くん、って言うんだ。
橙
橙
桃
橙
桃
橙くんって子が連絡してくれている 間もずっと苦しむ桃くん。
そんな姿を見ていられなくなった俺は目線を彼から外してしまった。
もし、死んでしまっていたら。
もし、もう会えなかったら。
後悔の言葉だけが、俺の頭を めぐり続ける。
どうしてあの時最後まで 見届けなかったのか。
どうして... 何もしてあげられないのか。
来るはずのない彼を待ちながら、 そんなことを考える。
赤
思わずため息が出た。
「ため息ついたら、幸せ逃げるよ」 なんて言っていた百ちゃんを思い出す
...とっくに幸せなんてないっつーの。
冷たい風が俺の体をすり抜ける。
...あの橙くんって子。
たぶん俺のこと見えてないよな...。 桃くん、気づいちゃったかな...。
ずっと気づいてほしいと思っていた はずなのに、いざ気づかれそうに なったら気づいてほしくないなんて 思う自分に驚く。
離れたくない。
そんな思いとは裏腹に、別れはすぐ そこにあるような気がしていた。
今日も来てしまった。
なんだか夕日を見る気持ちには なれず、逆方向にいることにした。
桃
名前を呼ばれた気がして、振り返る。
そこにいたのは、紛れもなく、 桃くんだった。
赤
桃
俺の名前を呼んだ瞬間、 飛びついてきた桃くん。
桃
少し震えた声でそう言う彼。
ごめんねを言うのは、 俺のほうなのに。
赤
会えた嬉しさを隠すために、 “バカ”なんて言葉を吐き捨てる。
バカ、なんて思ってないのに。
赤
桃
黙り込む彼を見てすぐに、 何かあったことだけはわかった。
赤
桃
普段とは違う名前の呼び方に、 嫌な予感がする。
桃
桃
赤
余命3ヶ月。
どこかで聞いたことがある。
赤
桃
桃
夕日の光が一瞬雲で隠される。
桃
桃
赤
......
なんで...?
なんで百ちゃんと同じ病気に 桃くんもなるの?
桃
赤
もし、あの時のように“治らない”と 言われたら。
そんな不安が俺を襲う。
桃
赤
冷静を装っていても、本当は膝から 崩れ落ちるくらい、安心していた。
赤
「百ちゃんみたいに」とは続けない。
桃
眉間に皺を寄せながらそう言う彼。
桃
...ついに、か。
ここで言うべきか否かなど、 イエローアパタイトのネックレスを 握りしめたところでわかるはずも なかった。
桃
助けてくれたやつ...橙くんだっけ。
桃
...やはり橙くんには見えていなかったということか。
桃
もう、言うしかないのだろう。 真実を。
赤
不思議そうな顔をしてこちらを 見る桃くん。
そもそも、隠していることがあると いうだけで驚くだろう。
赤
大丈夫。 きっと彼は、 百ちゃんの生まれ変わり。
赤
赤
桃
言ってしまった。
桃
やっぱりそう思うよね。
でも、嘘なんかじゃないんだ。
赤
桃
ショックで何も言えない彼に、 俺は続ける。
赤
冷静に言っていても心の中は痛くて、苦しくて、怖くてたまらなかった。
桃
彼の見た目、性格、喋り方、笑い方。
そして...病気。
その全てが、俺の大好きだった人__
百ちゃんにそっくりだった。
彼は、百ちゃんの生まれ変わりで 間違いないはず。
あくまで勘だけど、そう思った。
赤
信じてもらえないかもしれない、 という不安がよぎる。
でも、結局最初に出会った頃の 俺たちにはもう戻れない。
だったら今、勇気を持って 言うべきだろう。
赤
桃
赤
赤
百ちゃんとの関係。
どんな人だったのか。
どうやって出会ったのか。
どんなふうに付き合って、 どんなふうに別れたのか。
俺が自殺したこと。
イエローアパタイトの意味。
全てを、桃くんに話した。
赤
桃
「君と別れないといけない」
そんなこと、 口が裂けても言えなかった。
赤
赤
赤
赤
赤
一度息を吸う。
ここから先を言うのは、 俺にとって少し勇気のいること。
もう一度大きく深呼吸をして、 気持ちを整えた。
赤
桃
最後まで伝えないと。
俺と同じ道を歩んでほしくないから。
赤
桃
今にも泣きそうな声で 問いかけてくる君に俺は続ける。
赤
赤
桃
赤
なぜなら俺は____
赤
赤
それなのに。
赤
赤
もう、百ちゃんにしか見えなくて。
赤
桃
赤
わかってる。
自分勝手なことくらい。
十分すぎるほど、わかってる。
だけど、過去は変えられないから。
未来を変えることしか、 今はできないんだ。
赤
桃
桃
初めて見る桃くんの涙。
涙とともに溢れる言葉たちは、どれも俺が百ちゃんに伝えたものばかりで、桃くんの今の気持ちは、痛いほど わかった。
赤
反対に、百ちゃんの気持ちも 今はわかる。
桃
...どちらの気持ちもわかる今、 俺はどうするべきなのか。
赤
悩んだ末、まず彼の思いを 受け止めることにした。
あとは俺の思いを伝えるだけ。
赤
桃
赤
俺が君に伝えたいのはただ一つ___
赤
恋人を失って、生きることを諦めて しまった俺だからこそ、 君に伝えたかった。
死んだ先には何もなくて、自ら命を 捨てたことを後悔するばかりの日々。
やっと出会った好きな人とも、 生きていた頃と同じようになんて、 当然出来るわけもなくて、結局迷惑をかけることになって。
そんな残酷な世界を、君にだけは、 味わせたくない。
桃
赤
桃
その後の言葉をなかなか続けない彼にもやもやしながら次の言葉を待つ。
桃
なんだ。そんなことか。
そんなの、良いに決まってんじゃん。
赤
桃くんはふっと微笑み、 「じゃあ、また明日」 と帰って行った。
早めについてしまった。
だけど、今の俺に夕日を見ることなどできるわけがなかった。
フェンスの影に隠れて、 色々なことを考える。
永遠なんてない。
身をもって感じてもまだ、永遠を望む自分がいて、そんな自分に呆れる。
今日が最後。
そうわかっていて百ちゃんもあの場にいたと考えると、心苦しくなる。
俺も百ちゃんを見習わないと。
赤
ようやく意を決した俺は、いつもの 場所へと向かうことにした。
夕日に照らされる淡いピンク色の髪が見えてくる。
彼はすでに来ていた。
赤
桃
そう言って飛び込んでくる彼。 そんな姿に懐かしささえ感じる。
桃
赤
今さらそんなことを聞いてくる彼に 思わず笑みがこぼれる。
赤
赤
桃
少し悲しげな笑顔でこちらを見つめる桃くん。
そんな表情をされると、こちらまで 寂しくなってくる。
桃
桃
桃
桃
彼のその言葉に、 “勇気を出して言ってよかった” と心から思えた。
赤
赤
桃
真面目な顔をしてそんなことを 言う君に、また惚れてしまう。
赤
「好き」と直接伝えたわけでは ないのに、いまだに照れる自分が 逆に面白い。
桃
赤
桃
しれっとそんなことを言う君が、 百ちゃんに見えて仕方ない。
赤
夕日の傾きが大きくなってきた。
桃
寂しそうに呟く桃くん。
赤
そう言った瞬間、一気に寂しさが込み上げてきて、なんだか泣きそうに なってくる。
そんな空気を断ち切ったのもまた、 彼だった。
桃
桃
手...?
一体なんのために、と思いつつ とりあえず手を差し出す。
桃
赤
驚く俺を無視して、彼は俺の指に ダイヤモンドの指輪をはめた。
赤
桃
桃
桃
“嘘”って意味があること、 覚えてたんだ。
それだけでも嬉しいのに、彼はさらに続ける。
桃
赤
桃
桃
百ちゃんそっくりなんだから。 また同じようなこと考えて...。
赤
大好き。いや___
赤
桃
桃
そう言って彼は夕日に背を向けて 歩き出す。
百ちゃん。
桃くんが本当に百ちゃんの 生まれ変わりなのだとしたら。
今度こそ、本当の思いを 伝えあえたね。
永遠の愛、ちゃんと受け取ったよ。
来世ではもっと大好きを伝えるから。
...ありがとう。愛してる。