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その夜。
黄は眠れなかった。
布団の中。
暗闇。
赫の言葉が頭から離れない。
『どこが大丈夫なんだよ』
優しかった。
怒っていた。
自分のために。
そんな人、 久しぶりだった。
でも、 怖かった。
期待したら終わる。
昔みたいに。
また裏切られる。
また、 笑われる。
だから、 誰にも頼っちゃダメだ。
黄は机を開ける。
ノート。
『卒業まで 83日』
数字を見る。
息が詰まる。
最近。
卒業まで、 耐えられない気がしてる。
ふと。 カッターが目に入る。
静かな部屋。
黄はそれを手に取った。
震える。
怖い。
でも。
”少しだけ痛みを作れば、 心が静かになる”
それを知ってしまっていた。
浅く。
ほんの少し。
赤い線が浮かぶ。
黄は目を閉じた。
涙が落ちる。
黄
その声を聞く人間は、 誰もいなかった。
次の日。
水が最初に気づいた。
黄の袖。
赤い跡。
水
屋上。
水は真顔だった。
水
桃は俯く。
桃
水
水の声が震える。
怒りだった。
水
その瞬間、 桃の顔色が変わった。
壊れていく音
「死ぬよ、黄ちゃん」
その言葉が、 桃の頭から離れなかった。
屋上。
冷たい風。
水はフェンスを握ったまま、 唇を噛んでいる。
紫
紫
赫は壁を蹴った。
赫
どうしてもっと早く動かなかった。
どうして、 ”本人が嫌がるから” なんて理由で止まっていた。
でも。
黄は本当に、 助けを拒むのだ。
「大丈夫だから」 笑いながら。 壊れそうな顔で。
水
水
その目は、 もう笑っていなかった。
緑は静かに口を開く。
緑
短い言葉。
でも、 全員が頷いた。
その日の昼休み。
黄は保健室にいた。
理由は、 立ちくらみ。
でも。
黄
そう言って、 すぐ教室へ戻ろうとする。
養護教諭は困った顔をした。
養護教諭
黄
養護教諭
黄
笑う。
その笑顔が、 逆に危うかった。
ガラッ。
保健室の扉が開く。
桃だった。
後ろには、 紫たちもいる。
黄の肩がビクッと揺れる。
黄
赫
ぶっきらぼうに言う。
黄は困ったように笑う。
黄
緑
緑は即答した。
静かな声。
でも、 有無を言わせない。
黄は目を伏せる。
優しい。
みんな優しい。
だから怖い。
”いつか離れていく” そう思ってしまう。