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あなたが兄じゃなければよかった

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あなたが兄じゃなければよかった

第2話 - あなたが兄じゃなければよかった第2話

11,253

2019年10月07日

#青春恋愛

#禁断の恋

#兄妹

#切ない

つごもり

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つごもり

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母

…あなたたち、なに、してるの？

ゆり

（う…うそ…！）

ゆり

（どうしようっ）

ゆり

（私まで蓮くんのベッドに入ってるなんて）

ゆり

（お母さんに、誤解されちゃうんじゃ…っ）

ゆり

ち…っ、ちがうのっ

ゆり

この状況は…！

蓮

…ん、ごめんゆり

ゆり

え…？

蓮

寝ぼけて抱き枕にしてた

蓮くんはあっけらかんと言って

私を離して起き上がった

蓮

制服、しわになってない？

ゆり

…だ、

ゆり

大丈夫…だと思う

蓮

ならよかった

蓮

起こしてくれてありがとな

蓮

びっくりさせてごめん

ゆり

…も、もう…っ、蓮くん

ゆり

寝起き、悪すぎだよ…

ゆり

（寝ぼけてたようには、見えなかったけど）

ゆり

（合わせてたほうがいい…よね？）

母

あなたたち…、

母

いくつになっても、本当に仲がいいわね

ゆり

あ、あはは…

母

はやく支度して降りてきなさい

母

もうご飯できてるわよ

蓮

もうすぐ行くから

母

じゃあ…下で待ってるからね

ゆり

…………

蓮

…………

ゆり

…れ、蓮くんっ！

蓮

…ん？

ゆり

な、なんか…

ゆり

誤解、されちゃってないかな！？

蓮

誤解？

ゆり

へ…ヘンなふうに

ゆり

思われなかった、かな…

蓮

…………

蓮

ふっ

蓮

いや、大丈夫だろ

蓮

俺ら兄妹だよ？

ゆり

そ…そう、だけど

蓮

ゆりって昔から、考えすぎるとこあるよな

蓮

なにも心配する必要ないから

ゆり

…っ

ゆり

（頭…なでられた…）

あたたかくて優しい手に

胸がきゅんと高鳴ってしまう

ゆり

（…だけど、はっきりわかる）

ゆり

（蓮くんは兄として接してるだけ）

ゆり

（意識してるのは…私だけ）

ゆり

（当たり前のことなのにな…）

ゆり

（いちいち、切なくなる…）

蓮

…あ、ゆり

蓮

そこに置いてあるシャツ取って

ゆり

え？　あ…うん

ゆり

はい…、って！

ゆり

な、なんで脱いでるのっ！？

蓮

なんでって、着替えるから

ゆり

私まだいるのに！

蓮

いや…俺の着替え見たいのかと思って

ゆり

なっ…そ、そんなわけないでしょ！？

ゆり

蓮くんのばか…っ！！

私は真っ赤な顔で怒鳴りつけて

急いで蓮くんの部屋から飛び出した

ゆり

（ま、またからかわれた…っ！）

ゆり

（妹としてしか見てないからって）

ゆり

（いきなり脱ぎ出すなんて…！）

ゆり

（朝から心臓に悪いことばっかりだ）

ゆり

（顔、すっごく熱いし…っ）

ゆり

（このままじゃリビングに行けないよ…）

ゆり

…っ、はあ…

ゆり

（…一瞬しか…、見てないけど）

ゆり

（蓮くん…着痩せするタイプなのかな）

ゆり

（ちゃんと…男の人の体つきで…）

ゆり

（って、思い出しちゃだめ…！！）

ゆり

（こ、これじゃただの変態だよ！！）

ゆり

…………

ゆり

（…気持ち悪がられるから、なんて）

ゆり

（さっき思わず言っちゃったけど）

ゆり

…気持ち悪がられる、のは

ゆり

私のほうだけ…だよね

ゆり

（実の兄に恋してるなんて）

ゆり

（すっごく、おかしいことだって…わかってる）

ゆり

（あの日から、ちゃんと──）

─10年前─

ゆり

あれ…ママ…？

ゆり

おにいちゃんは？

母

あら、おはよう

母

お昼寝からもう起きたのね

母

蓮ならいまピアノ教室だけど

母

もうすぐ帰ってくるはずよ

蓮

ただいまー

ゆり

あっ

ゆり

かえってきた…っ！

ゆり

おにいちゃん、おかえりっ

蓮

わっ…

蓮

ただいま、ゆり

蓮

どうしたの、急に抱きついてきて

ゆり

だって、さっき起きたら

ゆり

おにいちゃんいなかったから

ゆり

さみしかったの…

母

ゆりは本当に、蓮が好きね…

ゆり

だいすき！

ゆり

ゆりね、大きくなったら

ゆり

おにいちゃんのおよめさんになるのっ

蓮

ぼくのお嫁さん…？

蓮

ほんとに！？

ゆり

うんっ！

母

もう…、蓮、ゆり？

母

残念だけどね、兄妹じゃ結婚できないのよ

ゆり

…え？

蓮

…………

母

蓮にも、ゆりにもきっといつか

母

この人だって思える相手が現れるわ

ゆり

それは…

ゆり

おにいちゃんじゃ、ないの？

母

そうね…

母

もっと、別の人よ

お母さんがあのとき見せた

あきれたような微笑は

いまも心の隅っこを焦がしてる──

ゆり

（それ以来、私は蓮くんに）

ゆり

（“好き”を言えなくなった）

ゆり

（私が伝える“好き”は）

ゆり

（“兄”へ向けた気持ちじゃないから）

ゆり

（私はどうしても…蓮くんのことを）

ゆり

（“兄”としては、見られないから）

ゆり

（蓮くんを名前で呼びはじめたのも）

ゆり

（私の“兄”なんだと突きつけられるのが）

ゆり

（苦しくて、仕方がなかったから…）

ゆり

（きっと、だれも気づいてない）

ゆり

（ううん…絶対に気づかれちゃだめ）

ゆり

（この気持ちだけは、だれにも知られちゃいけない）

ゆり

（なにがあっても、隠し通さなきゃ──）