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月の光を辿って

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月の光を辿って

17 - 第17話 真夜中の襲撃⑤

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2025年06月27日

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魔物から逃げつつ神殿に向かうスイとそれを追いかける3人。 スイは魔物の重い攻撃を受けつつも神殿へ向かっていた。

魔物

いつまでその場しのぎを続ける気だ?
姑息な小娘め……。

魔物

我はあと一発で貴様を仕留めることも出来るぞ。

スイ

(確かにこのままじゃ神殿までは持たないかもしれないですね……。)

魔物

どうした? 急に黙り込んで。
死ぬのが怖くなったか?

魔物

命乞いをしたら許してやらなくもないぞ。

スイ

命乞いなんてしません!

スイはそう言うと、振り返って魔物を斬った。 攻撃はきちんと入り、魔物の皮膚に傷をつけた。

魔物

人々は愚かなものだ。

魔物

我に勝てる人間など居ない。
だと言うのに、このように戦うのだ。

魔物

人間は愚かさそのものだ!

スイ

さっきから何なんですか……っ!

魔物が勢いよく振り下ろした腕を、 スイは剣を盾にすることで防いだ。

魔物

……やはり、人間は愚かさそのものだ。
特に貴様はそうだ。なぁ小娘。

魔物

貴様の武器……

魔物

それで本当に我に立ち向かえると思っているのか?

スイ

……は、何言って───

ピキッ

スイの剣はヒビが入ってしまった。 魔物の攻撃をずっと剣で防いできたからだろう。

ヒビが入ったスイの剣を見た魔物は、 そのまま刃の部分をとても強い力で握った。

ヒビが入るほど脆くなっていた剣は、 魔物が力を加えることによってすぐに壊れてしまった。

魔物

───さて。
貴様を殺してやろう、小娘!

スイ

あ……。

霽月

(やばい……。)

霽月

(このままじゃスイが───)

魔物

……ん?

魔物

なんだ、貴様の仲間は貴様を捨てて逃げたのではなかったか?

スイ

……!

魔物が武器を失ったスイに向かって攻撃を仕掛けた瞬間、 イザヤが魔物にライフルの弾を当てたのだ。

致命傷の様な傷を負わせることは出来ないものの、 魔物に隙を作ることが出来た。

魔物

まぁいい……。

魔物

気分が変わった。
小娘、貴様は後で殺す。

魔物

まずは我を撃った不届き者を見つけて殺してやる。

魔物

貴様を殺すのはそれからだ。

スイ

……そうですか。

スイ

なら、遠慮なしに逃げますね───!

魔物

(愚かな小娘め。向こうは行き止まり、
あるとしても神殿だけだ。)

魔物

(今回は馬鹿な人間だから殺しやすいし操りやすいな。)

霽月

……どうするの?
スイの武器、さっき壊れたよね。

イザヤ

俺達で出来る限り時間を稼いでから神殿に向かうぞ。

ザイン

あの様子からして、魔物は神殿が封印場所になっているということを知らない……。

ザイン

出来るだけ魔物を弱らせて神殿までおびき寄せればあとは簡単ですね。

イザヤ

あぁ。

霽月

もう神殿まで向かってもいいと思うけど?
まだ時間稼ぎが必要なの?

イザヤ

出来るだけな。

魔物

ふむ……そういうことだったのか。

ザイン

なっ……!

ザイン

絶対聞かれてましたよね今の!?

イザヤ

落ち着け。

魔物

ならば話は早い。
我は神殿に向かって小娘を殺すとしよう。

霽月

あ、ま、待て!

マドカ

あ、先輩……!

スイ

マドカちゃん。準備は出来た?

マドカ

はい。もうバッチリです!

マドカ

先輩のお陰でこんなにも時間が取れたので!

スイ

私だけじゃないんだけどね……。
あはは……。

マドカ

そういえば先輩……武器はどうしたんですか?

スイ

実はあの魔物に壊されちゃって。
買い替えないとなぁ……。

マドカ

そんなことが……。

マドカ

……あの魔物、殺してもいいですか?
ちょっと腹立ってきたので。

スイ

えぇっと……?

スイ

多分あっちで戦ってるだろうから───

魔物

小娘め……やはり貴様を先に殺してやろう!

マドカ

うわ、出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

スイ

そんなおばけみたいな……。

マドカ

魔物なんて存在自体がおばけじゃないですか!

マドカ

どうなってるんですか?
向こうで戦ってるんじゃないんですか?

イザヤ

すまないスイ!

イザヤ

魔物に神殿のことが聞かれてしまった!

スイ

えぇ!?

マドカ

どっ、どうしますか?

マドカ

ひとまず封印しちゃいますか?

スイ

出来るかな……。
私は武器壊れちゃったし……。

魔物

死ね───!!

魔物がそう叫びながら腕を振り下ろした瞬間。

スパッ───

何かが魔物の体を真っ二つに切断した。

陽葉

はぁ……。

陽葉

こんな雑用押し付けないでよー!

ゲントウ

はいはい、すまんすまん。

霽月

あいつ……。

魔物

ぐ……ぐあぁ……!

魔物

我が主……なぜこのようなことを……!

ゲントウ

招集も無視するような奴をそばに置いておく理由はないと思ってな。

ゲントウ

オレは思い通りにいかないことが嫌いなんだ。

魔物

そんなことが……?

ゲントウ

はぁ……。

ゲントウ

陽葉。お前が好きな遊び相手だろ。
やっていいぞ。

陽葉

いいの〜?
やったぁー!

陽葉

それじゃ、遠慮なくやっちゃうね。

突然現れた陽葉は魔物の体を刀で切り刻んだ。 魔物の体は真っ二つになり、魔物は地面に倒れた。

陽葉は再び刀を振った。 刀は魔物の体に傷をつけるだけだった。

魔物

我が主! どうか命だけはお許しを……!

ゲントウ

その主の命令を二の次にする奴があるか。

ゲントウ

お前は死んで詫びろ。いいな?

魔物

あああああああぁぁぁぁ……

魔物

あぁ……ぁ……。

魔物がピクリとも動かなくなったことを確認すると、 陽葉はつまんないとぼやきながらも刀をしまった。

魔物

(なぜ……なぜだ……。)

魔物

(我は───否、私は……。
あの者達に負けるつもりなどなかった……。)

……私、あなたが羨ましいわ。

えっと……?

どういうことでしょうか?

あなたは戦士として立派な人よ。
誠実で、芯があって逞しい、戦士の鏡。

私も体が弱くなかったら……。

私からしたら貴方も立派な方ですよ。
貴方は何があっても諦めないでしょう?

その身体を蝕む病に対してだって、
それは変わらない。

そうかしら?

それで言ったら似たもの同士
なのかもね、私達。

……私はそんな貴方が好きです。

この戦いが終わったら、結婚しませんか。

私は、貴方を守る為に戦います。

え……?

それって……いいのかしら?

何も出来ない私だけ守られるなんて……。

こんな私より、もっと多くの人を守った方がいいんじゃないかしら?

ですが、私は貴方を守りたいのです。
……大切な人として。

ふふ、ありがとう。

何だかお姫様になった気分だわ。
素敵な騎士に守ってもらえるんですもの。

えぇ。貴方の騎士として、
私の生涯をかけて貴方を守ると誓いましょう。

ありがとう。

ふふ、私ってば幸せ者ね……。
こんなに素敵な人に守ってもらえるのね。

夢の中に居るかのような気分だわ。

いいえ。きちんと現実ですよ。

そう言い、私は幸せそうな顔をしている その人をそっと抱きしめた。

こんな幸せが、 ずっと続くと思っていた。

……!

やっと起きたか。

俺はお前の事情をよく知らないが、
これだけは言っておこう。

もう魔物との戦争は終わった。
……いや、休戦とも言えるか。

どういうことでしょうか……?

とにかく、戦争は終わったようなものだ。
おそらく数百年の内は平和だ。

あの人は!?

私は戦場の近くであの人を見かけて、
その時に魔物に襲われて……。

はぁ? あの人?

確かに、お前の腕に魔物が
残したと思われる傷はあったが……。

私が倒れていたところで、
茶髪の女性を見かけませんでしたか?

茶髪の女性……。あぁ、あの女の人か。
その……お前の大切な人なのか?

何だか申し訳なさそうに聞く医療班の人を見て、 私は何となくあの人に何があったのか察してしまった。

あの人に一体何が……?

魔物から深い傷を負っていたみたいで、
俺達が来た時は既に亡くなっていた。

あの人は今どこに居るんですか!?

ええっと……確かリーダーが
その人を埋葬するとか言っていたな。

貴方達のリーダーの方は、今どこに居ますか?

外だな。

というか、お前まさか───!

その方の所に行ってきます!

おい、ちょっと待て!

お前はまだ傷は癒えていないし、
魔物からの攻撃の後遺症が残っているんだぞ!

それでも私はよかった。 あの人に会えるならば何でもよかったからだ。

ゲントウ

実験は失敗、か。

ハァ、ハァ、ハァ……。

カハッ……!

ゲントウ

……あ? 何だ?

あの人は……!
どこに居るんですか!

ゲントウ

何だ、自分から実験体になりに来たのか?
これは少々リスクが伴う実験でな。

ゲントウ

これを聞いても実験体になる程の死にたがりなら別にいいんだが。

ハァ、ハァ……!
茶髪の女性はどこですか?

ゲントウ

茶髪の女?

ゲントウ

そんな奴居たか?

貴方が埋葬すると言っていた……!
その方はどこですか!

ゲントウ

あぁ、あの女のことか。
ハハハ、埋葬なんてする訳ないだろ?

ゲントウ

実験体として有効活用させてもらったぞ。

ゲントウ

元より、そういう契約だったからな。

契約……?

ゲントウ

研究所の技術で怪我人を助ける代わりに、死人は実験に使わせてもらう。そういう契約だ。

それじゃあ、貴方達が
怪我人を殺す可能性は……!

ゲントウ

そうだとしたら、
どうしてオレ達はお前を助けた?

ゲントウ

お前は建物の中に居た怪我人は
見てこなかったのか?

ぐっ……。

貴方が実験体にした女性はどこですか!

ゲントウ

……気付かなかったのか?
お前のすぐそこに居る“それ”なんだが。

え……

私のそばに居たのは、黒い塊のような何か。 私でもそれがあの人だと認識することは出来なかった。 それくらい酷い姿になっていたのだ。

あぁ……あぁぁあ……!

ゲントウ

ところでお前、オレの実験体にならないか?
失敗しても、あの世でそいつと会えるかもな。

なる訳ないでしょう……!

私はこの人を守ると約束したんです!

もはや人の形をしていないあの人を抱きしめ、 私はそう叫んだ。

ゲントウ

だが、お前の言っているあの人はどうだ?
もう既に死んでいるじゃないか。

それは貴方が……!

ゲントウ

オレは既に死んだそいつで実験をしただけだ。

ゲントウ

それで、そいつは既に死んだのにその約束を守ってなんの意味があるんだ?

ゲントウ

だから実験体にならないかと言ったんだ。
それに、お前はもうじき死ぬだろう。

ゲントウ

お前が無理やり体を動かしたせいだ。
まだ傷は癒えていなかったのにな。

……分かりました。

貴方の実験の実験体になります。

ゲントウ

あぁ、お前ならそう言うと思っていた。

ゲントウ

今すぐやるぞ。
痛いかもしれないが我慢しろ。

主だった人にそう言われ、 私は重くなりつつあった瞼を閉じた。

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