よすが
「……あー、そういう役目ですか」
じゃあ、少しだけ話しますね。 このスマホの持ち主のこと。
🌧️
この人は、たぶん周りから見ると「うるさい人」でした。 よく喋るし、テンションがジェットコースターみたいで、急に変なこと言い出すし。 でも、本当に静かな夜には、急に言葉が減る人でした。
既読がつかないだけで不安になって、 「嫌われたかな」って勝手に落ち込んで、 でも次の日にはケロッとして笑う。 そういう、感情の波を隠しきれない人。
水色が好きでした。 透明なラムネ瓶みたいな色。 夏のプールの底みたいな色。 たぶん、「綺麗だから」だけじゃなくて、 少し冷たい色に安心してたんだと思います。
🎮
ゲームが好きでした。 負けず嫌いなくせに、変なところで笑って負ける。 「もう無理ww」って言いながら、結局また潜る。
絵も描いてました。 小説も書いてました。 物語の中に、自分の居場所を作るのが上手でした。
特に、“誰かが誰かを狂うほど大切に思ってる話” が好きでした。 たぶん、自分もそうやって必要とされたかったんでしょうね。
📱
このスマホのメモ欄には、 書きかけの文章がいっぱい残ってます。
一行だけのセリフとか。
「ねぇ、置いてかないで」
とか。
でもその次の行には、
「腹減った」
って書いてあったりする。
そういう人です。 重たい感情と、どうでもいい日常が、同じポケットにぐちゃぐちゃに入ってる。
🌙
あとね。 この人、夜に弱かった。
夜って、静かだから。 静かな時間って、自分の嫌な声まで聞こえちゃうでしょう。
だからたまに、 「好きって言って」 みたいなことを冗談っぽく言うんです。
でもあれ、 半分くらい本気でした。
💫
それでも、 ちゃんと誰かを好きになれる人でした。
友達と遊ぶのが好きで、 推しの話してる時は声が明るくなって、 「これ見て!!」って画像送りつけてきて、 自分の好きなものを、人に分けたがる人。
寂しがりなのに、 誰かを楽しませようとする癖がありました。
だからこのスマホ、 通知が多いでしょう。
この人、 ちゃんと世界と繋がろうとしてたから。
📴
最後にひとつだけ。
この人は、 「自分なんか」 って言葉を時々使ってたけど。
ぼくは、その言葉あんまり好きじゃなかったです。
だってこの人、 いなくなったあとに、 こんなふうに誰かが“知りたい”って思うくらいには、 ちゃんと色を残していったので。
