灰谷兄弟の天才お姉ちゃん

俺らは、物心ついた時から あの奴隷オークション会場にいた

親なんて見たことはないし、興味もない

毎日毎日、 奴隷としての役割を教え込まれたり

時には売られたりもした

狭い牢獄の中で

一生こうして暮らすのかと 絶望する日々

ﾄﾞｺﾞｯﾎﾞｶｯﾊﾞｷｯﾎﾞｺｯﾄﾞｺﾞｯﾎﾞｶｯﾊﾞｷｯﾎﾞｺｯ

死ぬよりはマシだと自分に言い聞かせ、

殴られてボロボロになった手足を動かす

弟だけは守らねばと 毎日必死に働いた

そんな地獄のような日々が

''あの日''に終わりを告げた

驚いた

俺らに1億も出す奴がいるのか

でも、あいつもきっと 俺らの顔しか見てない

そう思っていた

この時俺は

この言葉の意味がわからなかった

俺らはただの消耗品で 命として見られたことがなかったからだ

「こいつは他の奴らと何かが違う」 そう思った

耳を疑った

今までに、俺らの名前を聞いてきた奴は いなかったからだ

こいつは、本当にいい人なのかもしれない

一瞬そう思ってしまい、ハッと我に帰った

人間なんて、いつ裏切るか分からない

信用し、裏切られて悲しむのなら

初めから信用しない方がいいと思っていた

と、一瞬思ってしまった

まさか、訳も分からず俺たちを買ったのか？

５０億というとんでもない額で

奴隷オークション会場

正直言って、これが一番驚いた

俺は髪が長いし、中性的な顔立ちをしている

それ故に 俺が男だと見抜ける奴はいなかった

その通りだった

金のためだけに性別を変えられ

偽物の性別に肯定して生きる

俺にとって、これほど屈辱的なことは 他になかった

俺はこの時

竜胆以外の人間に初めて

心を開いた

それから''姉ちゃん''は

たくさんのマスコミや野次馬が家に押しかけた時も

ショッピングモールで変なジジイに絡まれていた時も

俺たちを助けてくれた

我ながら、自分の無力さに腹が立つ

姉ちゃんは 俺たちにこんなに気を配ってくれて

こんなに優しくしてくれるのに

俺は迷惑をかけるばかりで 姉ちゃんの為になることを何もできてない

俺たちは、姉ちゃんの何なのだろうか