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グク
食べかけのポテトを残してジョングクが立ち上がった。 ハンバーガーはあっという間にジョングクのお腹に入ってしまって、それを包んでいた紙はもう小さく丸められている。
何もかもを遮断して、ただ早く時間が過ぎろと願っていたはずなのに。 今はその時間にのんびりとコーヒーを味わっている。
徐に見た携帯の待受画面に表示されてる時間は、あっという間に6時半にもなる。 "あっという間"と感じるのも不思議だ。
まだまだ温かいコーヒーをまた一口飲んだ時、自動ドアが開いて急に騒がしくなった。
男3人組。 その姿に背中の筋肉が自然と強張った。
大丈夫、大丈夫。 ただお客さんが入って来ただけ。 ジンヒョンに一応連絡を入れておこうとカトクをひらいて
『ジョングギとマックにいるから心配しないで、朝ご飯ま
男
肩がビクついた反動で手が滑ってジンヒョンへのカトクがそこで送信されてしまった。 3人組の1人が僕を見下ろしてすぐ隣にいる。
'やめろってー'なんて残りの2人は離れた所から笑っているし、僕に声かけた1人は明らかに2人分のヘルメットを確認したはずだ。 アルコールの臭いが鼻をつく。
男
答えられない。 身体に力が入ってしまって。
男
男
そう言ってやや俯く僕を覗き込むから距離が無闇に近くなって血の気が引いていく。 怖い、気持ち悪い、怖いーーー
吐きそう。
グク
手元に影が落ちて爽やかな香りが漂った。 顔を上げるとジョングクの背中があって、声をかけてきた男はその広い背中の向こう側で。
グク
ジョングクの冷静な声は大きくないのにしっかりと店内に響いて、カウンターの中で怪訝な顔をしてこっちを見ている店員にも聞こえたようだった。
眉を顰めたジョングクと目が合う前に、椅子から勢いよく立ち上がってトイレに駆け込んだ。 僅かに食べたポテトと半分程飲んだコーヒーを全て吐いてしまった。
口を濯いだ後でトイレの鏡に映った自分の顔を見たら、酷い顔だった。 まるで"あの時"と同じ様な。
グク
トイレのドアを開けるとすぐ目の前にジョングクがいて、男前なその顔に"心配"が浮かんでいた。
グク
その言葉に座ってたはずの席を見てみたけれど、3人組の姿はなかった。 かわりにちょっとだけ乱れた3個の椅子があるだけ。
わかっている。 悪い人じゃない。 僕が過剰反応しただけなんだ。
でもまだ胃の辺りがふわふわとしていて、そこを抑えた手がギュッと自分のTシャツを掴む。 ジョングクに心配させない様に。 大丈夫って言い聞かせる様に。
ホソク
細く静かに息を吐いて
ホソク
あともう少し強くお腹のTシャツを強く握る。 冷や汗が流れる程じゃなくてよかった。
グク
頭上から柔らかくて明瞭な声が鼓膜を揺らした。 それだけじゃなくて、ジョングクの手が僕の背中に触るか触らないかくらいの力で添えられて
グク
真摯で強くて温かさまで感じる様な視線を向けた。
ジョングクのその言葉に、その手に、どんな効果があるのかは分からない。 でも、強張った身体が解れていく感覚は確かに感じた。
その手に促される様に席に戻る前に自動ドアが開くと同時に慌てた様子のジンヒョンが入店して来た。
ホソク
ジン
そうだ。 トイレに駆け込んだから携帯をテーブルの上に置き去りにしてたんだ。
ホソク
ジン
グク
グク
ホソク
やや俯いたジョングクの顔に暗さが見えて慌てて否定した。 本当に違う。 むしろ逆。
不安と恐怖に息を押し殺す様に耐える薄暗い時間を、一瞬でも大した事ないって思わせてくれたんだから。
僕の発言に少し驚いた顔をしたのはジョングクだけじゃなく、ジンヒョンも同様だった。 力強く否定したのに、事の詳細を話す事は不可能で。
ホソク
兎に角、素直な感情だけをジョングクに向けて言った。 何もかも純粋に見つめていそうな黒目の大きなその目はきっと、僕のそれにも気付いてくれるはずだから。
僕が自分の口でちゃんと発言した事でジンヒョンも嘘ではないと思ったのか
ジン
ジョングクに頭を下げて言ったくらいだ。 そう"ありがとう"だ。
何故その一言を言えなかったのかと思って、店から出て1人バイクで帰るジョングクを見送る時。
ホソク
まだバイクのエンジンをかける前にやや慌てて言ったのは、エンジン音でかき消されない為だ。
グク
グク
羨ましい程に綺麗に口角を上げて話すジョングクはまだエンジンをかけずにいる。
グク
ホソク
グク
やや滅茶苦茶な事を言ってるのはジョングクも理解してるようで、白い歯を覗かせてふふっと笑った。
そうしてやっとエンジンがかかると、案の定この辺一体に地響きのようなその音が響いて近くのバス停にいる人がこっちに振り向く程。
ホソク
少し大きめの声で言ったが、聞こえたかどうか。 でも要らぬ心配だったようで
グク
バイクのエンジン音の中でもジョングクの声はそうハッキリ聞こえた。 それから、ジンヒョンにも軽く手を振ったジョングクが車通りの増え出した道路の中に颯爽と消えて行った。
ジンヒョンとタクシーで家に向かうほんの数分。 珍しく揺れが心地よくてうたた寝をしてしまった。