暇72
こんにちは、すち君。
学校からの帰り道、学校一の人気者であり陽キャの代名詞みたいな暇72君に話しかけられた。
すち
え?あの…。
暇72
最近俺のことよく見てるよね?何か用?
すち
い、いや…そういうわけじゃ…。
オレは彼にある疑念を抱いていた。それは、彼が吸血鬼じゃないかということだ。元来、吸血鬼は赤い目をしていることが多い。彼の綺麗な赤い目は、オレと同じもののように見えて―――。
暇72
よっと。
そう考えていると、暇72君に眼鏡を取られた。
すち
うわっ!?ちょ、暇72君、返して…!
オレがかけてる眼鏡は認識阻害用の眼鏡。吸血鬼は無意識で魅了(チャーム)の能力を使ってしまうので、オレはその能力を使わないよう眼鏡をかけてるのに…!
暇72
大丈夫、目隠さなくていいよ。…俺も、すち君と一緒だから。
バサッという音と共に暇72君の背中に生える羽。それはとても見覚えのある…オレと同じものだった。
暇72
なんですち君は陰キャやってんの?
すち
…苦手なんです、人と関わるの…。チャームの能力もあんまり使いたくないですし…。
暇72
ふーん?てかさ、敬語じゃなくていいよ。俺もすち君と一緒で、まだ運命の相手見つけられてないし。
吸血鬼には運命の相手が居るとされている。その運命の相手と結ばれると、血を吸わなくても生きていけるとかなんとか…。と言っても、オレ達が血を接種するのは1年に1度位だし、別に生きてる人間から吸わなくても、正直献血でなんとかなるレベル。
すち
そう、なんだ…?暇72君いっぱい人侍らせてるから運命の相手見つかってると思ってた…。
暇72
あれは人間界に溶け込むためのカモフラージュ。…つっても、チャームの能力ありきだから俺の本性を見て好かれたわけじゃないと思うけどね。
はは、と力なく笑う暇72君を見て、初めて彼の人間らしいところを見たと思った。…いや、彼は人間じゃないんだけど。
すち
…そうかな。オレは、今ちょっと話しただけだけど…ひまちゃんは悪い人じゃないと思ったよ。
オレの言葉に暇72君…ひまちゃんは驚いた表情になる。
暇72
…すち、急に距離詰めてくるね。
すち
ひまちゃんも中々じゃない…?
同時に笑い合って、オレとひまちゃんはその日を境に秘密を共有する友達になった。