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ひとしきり笑った後、糸が切れた人形のように何も考えずに監視を始めた。自分はただの駒なのだ、駒は駒らしく仕事をしていればいい。とにかく監視、監視、監視……そう思ってしまったのかもしれない。
人形に自我が戻ったのは数時間後だった。場違いすぎる呑気なチャイムで目が覚めた。良い子はお家に帰りましょうのアレだ。数時間の記憶がゴッソリと抜け落ちている。思い出せるのは……そう、あのグロテスクな絵。
三日月 乃愛
頭が異常なほど痛い。ズボンのポケットから頭痛薬を取り出し、落とさないように慎重に包みを開けて、水で押し込んだ。苦い薬の後味と頭痛を二重で感じながら頭を押さえる。再び正気に戻ったのは監視カメラから悲鳴が聞こえてきた頃だった。
笹ヶ月 莉魔
監視カメラの先でヒステリックな落ちこぼれたヒロインが悲劇的な涙を流していた。周りの召使い達はうんざりしたように彼女を見下ろしていた。そんな中で探偵おじさん高梨 慧紅が彼女に近寄り、肩を優しく叩いた。こんな状況でなければ「変態おじさん」と叩かれているんだろうと妄想を広げる。
高梨 慧紅
『残念』、それがこの死亡遊戯で何を表すのかはもう分かっている。監視カメラを操作して星羅を探す。校内には最低20個以上の監視カメラがあるため途中からはただ『カメラ切り替え』のボタンを連打する単純作業に成り果てた。
そしてついに体育館のステージ付近に女性が倒れているのを発見した。焦点が合わない目を大きく開け、手を伸ばしているような格好で固まり、倒れている星羅。腹には一本のナイフが刺さっていて、そこからは赤黒い血の奔流(実際には止まっていた)がこびりついていた。UVスキャナーを作動させてナイフの持ち手部分を拡大する。指紋は無い。拭き取ったか、手袋でも付けたんだろう。犯人はそこまで馬鹿じゃないらしい。
新羅 胡桃
シンデレラ、新羅 胡桃はその美しい瞳から涙をポロポロと流していた。涙を拭っても拭っても涙はこぼれ落ちる。そういう優しさの持ち主だったのだろうと思う。今はただの演技をしている性悪にしか見えない。姫には王子様がいるものだ。空は彼女を側に引き寄せて抱きしめた。優しく頭を撫でながら、小さな声で呟く。
星見 空
新羅 胡桃
きっと高校では「え?あの二人、付き合ってないの?お似合いなのに。」と陰で噂されるタイプの極秘カップルだろう。真偽は知らない。少しの嫉妬心で「どうせ勃っているんだろう」と空の下半身を拡大してみると、足元には昨日までは無かった手形の赤黒い血がついていた。更に拡大して、パソコンをいじり、星羅の指紋情報と比較してみる。
一致していた。星羅の指紋と。空の足元にこびりついた血は星羅によって付けられた。そして星羅は死んでいる………
……………空が、星羅を殺した?何のために………?マウスを掴む手が汗で震える。……震える?なんでだ?死体もサイコパスも何回も見てきた。なんで………『怖い』んだ?いや、違う。怖いんじゃなくて……怖いんじゃない。そう、面白すぎて笑えてきたんだ!!!きっと、きっとそう………
震える手を収めながら画面を桃色の安っぽい恋愛ドラマに戻す。二人は本当にお似合いの幸福そうな高校生だった。ここだけ時空が違うみたいに。
三日月 乃愛
再び画面を戻そうと人差し指をパソコンのキーボードに沿わせたとき、カメラ越しに空と目があった。彼は、姫を守るようにギュッと引き寄せると…………
星見 空
こちらを見て、満足そうな、嬉しそうな笑みを浮かべた。