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隊長を殺した時
春千夜
俺の中で、
何かが満ちた
最初は震えていた手も、
血を浴びた瞬間、不思議と止まった
春千夜
その感覚はまるで
長年喉の奥に刺さってた棘が
するりと抜けたみたいだった
春千夜
隊長の顔は、死んでもなお
やさしかった
春千夜
春千夜
家に帰って、隊長の ”頭” を棚に置いた
周りをホコリ1粒も残さず
綺麗にした
それでもなお汚く写った
俺は頭を撫でた
子供の頃兄がくれなかった愛情を
隊長から奪うように
_この人の全部が欲しかった
血も、骨も、声も、名前も、
この人の中に俺がいないのが
ずっと悔しかった
だから
春千夜
春千夜
指でなぞった頭蓋骨のラインは
白磁の彫刻みたいに冷たかった
冷蔵庫の奥、誰にも見つからないように保管した
これが、俺の
「家族写真」
夜な夜な取り出しては、
語りかける
恋人の寝息を聴くように
春千夜
春千夜
春千夜
___
春千夜
春千夜
___
春千夜
そう話しながら、隊長にマスクを当ててやる
昔、俺にあげた布切れを
春千夜
やっと、やっと俺のものになった
他の誰にも、触れさせない
_愛してる
この想いが呪いでも、呪縛でも
俺はずっと、
ずっと
あんたの”弟”でいたかったんすよ
この骨の重みが、
ようやく俺に「帰る場所」をくれた
春千夜
「マスクをくれたから、だから嫌いに なったんです」