始業式やら自己紹介やら、かったるいやり取りが終わり、現在は帰りのホームルームだ。
それももう、終わろうとしている。
時計の針をじっと凝視し、チャイムが鳴るのを今か今かと待っている。
「先生からの話は以上です」
示し合わせたかのようにタイミングよくチャイムが鳴り響く。
帰りの挨拶をして、生徒たちは解き放たれていく。
僕もそそくさと荷物をまとめて帰る準備をする。
家に帰ったら、ヒナタと何して遊ぼうか……
昇降口で上履きを外履きに履き替える。
その時だった
ゾーヤ
ギュッと、ゾーヤは肩を掴んで離さない。
カナタ
僕は振り解いて歩き出した。
ゾーヤ
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤ
意外って、なんだよ
喉まで出かかった声を抑える。
だけどそれを口に出せば、保育園の頃の話を持ち出されていじられることは必至だろう。
ゾーヤ
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤ
僕のyesもnoも聞かないままに、ゾーヤは家と真逆の方向に歩き出した。
カナタ
カナタ
結局、ゾーヤに着いてきてしまった。
辿り着いたのは、お洒落な街並み。
カナタ
カナタ
ゾーヤ
そう言って、ゾーヤはズガズガと歩みを進めていく。
やがて、一台のキッチンカーの元へと辿り着いた。
これで公道を走ってきたことが信じられないほどに華やかな装飾があしらわれたキッチンカーだ。
カナタ
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤに背中を押され、呆気なくクレープ屋の前に導かれた。
「いらっしゃいませ」
高いところから店員さんが微笑んでいる。
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤにこっそりと囁く。
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤ
カナタ
「ご注文、承りました」
そう言って、キッチンカーの奥に引っ込んでいく。
カナタ
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤ
ゾーヤ
カナタ
カナタ
しばらくして、店員さんが二つのクレープを握りしめて戻ってきた。
ゾーヤ
ゾーヤはお金を払ってクレープを受け取る。
ゾーヤ
小さなベンチに並んで腰掛ける。
肩が触れ合ってしまうくらいには、少し狭い。
ゾーヤ
カナタ
カナタ
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤから受け取ったクレープを眺める。
赤いソースがかかったホイップクリームに苺や棒状のお菓子が刺さったいかにも甘そうなクレープ。
ゾーヤはというと、ニコニコとしながらじっと僕を眺めている。
どうやら、僕が食べるのを待っているらしい
カナタ
一口頬張ると、イチゴの酸味とホイップクリームの甘味が同時に口一杯に広がった。
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤ
そう言って、ゾーヤも食べ始めた。
ゾーヤ
カナタ
意味は分かんないけど、多分美味しいと言うことだろう。
ゾーヤ
人差し指を口元に当てて物欲しそうな目でこちらを眺めてくる。
本当はこんなカップルみたいなことしたくないけど、奢ってもらった身だ。断るのも忍びない。
カナタ
ゾーヤに向かってクレープを差し出す。
ゾーヤ
ゾーヤは僕が齧ったところと同じところを頬張る。
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤ
カナタ
正直引いたけど。だけどゾーヤのこの手の発言は気にしたら負けだ。
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤ
黙々と、お互い自分のクレープを食べることに集中する。
ゾーヤ
数分ほど経った時、ゾーヤが吹き出した。
カナタ
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤ
ゾーヤ
ポケットを弄り、ウェットティッシュを取り出した。
ゾーヤ
ゾーヤは僕にはウェットティッシュを渡さず、自分で一枚取り、こちらを覗き込む。
カナタ
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤはニヤニヤとほくそ笑みながらウェットティッシュを構えている。
ウェットティッシュを持ってるのはゾーヤだけ……。
くそが
カナタ
キュッと唇を結ぶと同時に、自然と目を閉じてしまう。
しかし、いつまで経っても顔を拭かれる感覚がしない。
まだか……?
その時だった
なんか
息が当たって……
ふわりと、生暖かい空気が肌を掠める。
ゾーヤの息遣いが間近に感じられる。
カナタ
静かに目を開けると、ゾーヤの顔がすぐそこまで接近していた。
その刹那
赤く、透明なベールを纏った舌がクリームの付着した箇所をなぞった。
カナタ
バクバクと、鼓動が高鳴っている。
ゾーヤ
そんな僕とは対照的に、ゾーヤはケロッとした表情で僕から顔を離す。
カナタ
カナタ
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤ
ゾーヤ
もういい
早く食べて帰ろう。これ以上は心臓が持たない。
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤ
カナタ
コメント
4件
これ好き…… やばい幸せすぎる 昇天しそう()
初日からデートとはこれからもっとたくさんデートできそうですね。今のところカナタ君は完全に受けですけど、攻めになるときがくるのでしょうか?自分はカナタ君には常に受けであってほしいですけど。それとゾーヤ君の一人称が私のところありますが、ミスなのでしょうか?
今回もカナタくんがかわいいです。毎回毎回本当にかわいいカナタくんが見れて幸せです。もちろんゾーヤくんもかわいいです。やっぱりゾヤカナは最高だ。