冬弥
ここ、は…?
男1
さぁて、始めますか
冬弥
…ぇ…?
男2
男の癖にかわいい顔してんじゃん
冬弥
…なん、で…?
男1
確かにな!
男1
俺新しい扉開いちゃったかもw
男2
俺もだわw
冬弥
ぅ、や、だ…!
男1
よろしくね、とーやくん♡
冬弥
ッぁああああ!!
彰人
冬弥
冬弥
っ、え…?
彰人
どうしたんだよ、ボーッとして。
彰人
体調でも悪いのか?
冬弥
彰人…?
冬弥
(夢、だったのか…)
彰人
夢じゃねぇよ
冬弥
え?
彰人
夢じゃねぇ。
冬弥
何、が
彰人
もう、俺の隣はお前じゃない。
彰人
じゃあな、
彰人
"キタナイ"元相棒?
冬弥
ま、待ってくれ、彰人…!
父さん
冬弥!聞いているのか!
冬弥
ッ…!
父さん
はぁ…お前はどうしてこんなこともできないんだ。
冬弥
あ、ぁあ、ごめ…なさ…
父さん
お前なんかいらなかった。
父さん
青柳家の恥だ。
父さん
同じ家で暮らしていることが恥ずかしい。
冬弥
ッ、!
冬弥
うまくできなくて、ごめんなさい…!頑張るから…!頑張るから、見捨てないでください…!
冬弥
もっと練習するから…!
冬弥
もっと…もっと…!
父さん
良い。
父さん
お前にはもう、期待しない。
父さん
二度と話しかけるな。
冬弥
ッ!!!
一人、また一人と、拒絶される度に。
心に少しずつヒビが入っていった。
兄さん
これでわかっただろ。
冬弥
にい、さん…
兄さん
お前は
兄さん
もういらない
冬弥
いら、ない…?
兄さん
分からないのか?
兄さん
本当にバカだな。仕方ないから教えてやるよ。
兄さん
お前は、
兄さん
さっさと死ねばいいんだよ。
そうか
死ねばきっと
楽になれる
何かに怯えることもないし
拒絶されることもない
あぁ、疲れた
もう
死にたい
バリン
冬弥
ッ…!
冬弥
あき、と…?
彰人
おう。体は平気か?…隈すげぇけど。
冬弥
…なんで
彰人
?
冬弥
なんでいるんだよッ!!
彰人
はッ、冬弥?!
冬弥
俺のことなんかもうどうでもいいくせにッ!
冬弥
俺のこと…!捨てた癖に…!!
冬弥
放っておいてくれよッ…!
冬弥
なんでこんな辛いことばっかり…!
彰人
冬弥!落ち着け…!何いってるんだよ!さっきから一人で!
冬弥
離せッ!
彰人
ッてぇ…!
冬弥
ッうあああ!うるさいうるさいうるさい!!!
彰人
くっそ…!冬弥ッ!!
彰人は、冬弥の体を押し倒して、押さえ付ける。
その瞬間、今まで叫んでいた冬弥の瞳が恐怖に染まった。
冬弥
ぁ…あ…!やだ、いやだ!ごめんなさい!離してぇぇ!!!
彰人
っ、!
冬弥
痛いのはいやだ…ッ!
冬弥
言うこと聞くから許してくださいッ!!やあああぁッ!
彰人
…冬弥…!
優しく、彼の体を抱き締める。
体は可哀想なくらいに震えていて。
それでも、人のぬくもりを感じて、なのか、
冬弥は徐々に正気を取り戻していく。
彰人
冬弥。
冬弥
ぁ、あき、彰人…!
彰人
大丈夫だから。
冬弥
あきと…あきと、あきとっ!
彰人
冬弥。俺が分かるか?
冬弥
あ、ぁ…
冬弥
わか、る…
彰人
ん。そっか。
トン、トン、トン
一定のリズムで背中を叩きながら、抱き締めたまま小声で歌う。
彰人
~~、~~…♪
彰人
~~~~~、~~…♪
冬弥
…ぁ…
冬弥
(あたた、かい)
冬弥
(彰人の声だ…)
眠りを誘うように、ゆったりと、優しく紡がれてゆく歌声は
冬弥の涙を拭った
彰人
冬弥。
彰人
俺の相棒はお前だけだからな。
冬弥
…!
彰人
俺はお前のこと、捨てたりなんかしない。絶対に。
冬弥
彰、人…
彰人
だから、安心して眠れよ。俺がずっと側にいるから。な?
冬弥
…あぁ…
冬弥
あり、がと…ぅ
冬弥は目をそっと閉じて、眠りに落ちる。
涙の後と、枯れた声が、とても痛々しくて。
けれど、彼の傷は確実に癒えただろう。
…と、勘違いしてしまった。