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ある夜の事だった。 その日は雨が降っていて、俺は部活で帰りが遅くなり、近道の公園を通り過ぎようとしていた。

すっかり暗くなってしまった...急げ急げ

...ん?誰かいる...

公園のブランコに、誰かが座っているのが見えた。 でも暗くてよく分からなかったので、そのまま通り過ぎようとした。

見たところ小さな子供ではなさそうだし...まあいいだろ

少女

あの...

(うおっ...!?話しかけられた)

ど...どうしました?

少女

あ...なた私が視えるの...?

........え?

少女

........え

俺はよく分からず混乱していた。 視えるの、なんて聞かれるシチュエーションなど、1つしかないからだ。

........君は...人間じゃないとか?

少女

........え??

...えあ...ごめんなさい違うか

少女

...そうなのかも

え!?

少女

あ...わたし....私は人間...だった

...過去形?

少女

うん...

てことは...今は?

少女

私...私ね

少女

死んじゃったみたいなの

........え

えと...とりあえず座って

少女

うん...

暖かいものもってくるから

少女

あ...ありがとう

部屋の扉を静かに閉める。

(正直...まだ混乱してる。でもそれは彼女も同じなのかもしれない...)

ただいま。えと...コーヒーと紅茶、どっちがいい?

少女

あ...どっちでも

少女

........

...そっか。
紅茶きらい?

少女

ううん!好き

じゃあ紅茶で...

少女

ありがとう...。

どことなくぎこちない感じで、沈黙がしばらく続いた。

...あのさ。ほんとに...幽霊なの?

少女

...うん

少女

触ってみる?

え...

あ...じゃあ...

失礼します...

........っ!

少女

...すけちゃうでしょ?

少女

まだ...信じられない?

...ううん。信じるよ

少女

そう...

少女

優しいのね

え?

少女

今まで視える人には何度か会ったの

少女

でも...誰も私を信じなかった。

少女

汚物のように見られた...

少女

...優しくしてくれたのはあなたが初めて...

そっ...か...

少女

...うん

...

あ、俺は...透。松本透。

君は?

少女

私は...

少女

...なんとでもよんで

え?

少女

名前が無いの。というより思い出せない...かな。

そうなんだ...

じゃあ...幽霊だから霊子さん

少女

霊子さん?

少女

ふふっ...なんだかすごく単純な名前ね

ごっ...ごめん。ネーミングセンスがなくて...

少女

いいのよ。ふふ...

あんまり笑わないで...

少女

そうね...ごめんなさい

そう言いながら、霊子さんは笑っていた。 でもそのおかげで、少し空気が和んだ気がした。 俺は良かったと思う反面、恥ずかしかった。

あれ...雨が止んでる

霊子さん

ほんとだ

霊子さん

星が綺麗ね

星?星なんて見えないけど...

霊子さん

え...?

霊子さん

...そっか。

霊子さんには、見えるんだね

霊子さん

...怖がらないの?

どうして?

霊子さん

だって幽霊だし...

霊子さんは平気だよ

見た目だって、セーラー服だから怖くないし

霊子さん

そっか

霊子さん

ありがとう

っ...!?

(笑った...こうして見ると、霊子さんって美人なんだよなぁ)

霊子さん

透くんはほんとに...優しいのね

...優しくないよ

霊子さんには優しく見えるの?

霊子さん

うん

霊子さん

とっても

そっかぁ...

霊子さんの見える世界を、見てみたいと思った俺だった。

霊子さんは行くところがないそうなので、とりあえずしばらく俺の家に居候させることにした。

たとえ幽霊だとしても、女の子を外に放り出すのには、少し抵抗があった。

とはいえ、視えるのは俺だけなので家族には秘密だ。

霊子さんおはよ

霊子さん

おはよう透くん

霊子さん

まあ私は寝てないのだけど

あはは

幽霊は寝なくても平気なの?

霊子さん

そうみたい

霊子さん

私もよくわからないけど

霊子さん

幽霊って便利よね

たしかに

俺は学校に行くけど

霊子さんはどうする?

霊子さん

学校...か

霊子さん

じゃあ透くんについてこっかな

え!?

(霊子さんに俺のだらしない学校生活を見られるのか...)

がんばらねば

霊子さん

?なにかいった?

!?ううんなにも

(大変な一日になりそうだ...)

おはようございまーす

体育教師

........

体育教師

...いってよし

はい

はぁ〜...よかった。霊子さんはやっぱり俺にしか視えないんだね

霊子さん

今のは一体...?

ああ!うちの学校は毎朝あの体育教師が生徒を校門チェックするんだ。

違反とかをしていなければ通れる

霊子さん

へぇ〜!

霊子さん

不思議な制度ね

あはは。あれをめんどくさいと思ってる人は沢山いるよ

霊子さん

たしかに

霊子さん

私だったら嫌だな。ふふっ

俺もだよ

拓也

おおい透!何ひとりでブツブツいってんだよっ

おわっ!?拓也か

いきなり押すなよな

(霊子さんびっくりして隠れちゃったじゃないか...)

拓也

ごめんごめん。

拓也

そうだ!お前聞いたか?昨日お前ん家の近くで自殺した人がいたんだよ

自殺?物騒だな。

確かに警察がいたようないなかったような...

拓也

なんだよ。お前からならなんか聞けっかなーとか思ってたのに

拓也

まいっか!お前今日合コンつきあえよ

あ〜ごめん今日はちょっと...

(霊子さんもいるし...)

拓也

なんだよぉ〜ノリ悪いな。人数足りねえんだよ〜

拓也

おねがいっ!

ごめん!今日はほんとに...

じゃなっ!

拓也

あっ!ちょっとまてって!

拓也

...んだよ。今日のあいつなんかそわそわしてんな...

拓也

まさか...彼女じゃないだろうな!おい!まて〜!

体育教師

........

ふう〜なんとか逃げられた。

霊子さん

そろそろ喋っても大丈夫?

あ、ごめんごめん。びっくりしたよな

あいつはああ見えてすごく良い奴なんだ

霊子さん

透くんがそういうなら、そうなのね

あはは...まあけっこう問題起こすけどな

霊子さん

それくらい青春よ、青春

そうだな

そうだ。自殺の子ってどのくらいの歳の人だったんだろ...

霊子さん

........

そういえば霊子さんはなんで死んじゃったの?

見る限りは俺と同い年くらいだけど...

霊子さん

........

霊子さん?

霊子さん

........あ...ごめんなさい

(あっ...なんで死んだのかなんて失礼だったな...)

ごめん。やっぱり忘れて

霊子さん

...あ...うん

チャイムが鳴った。

担任

おーい席つけー

授業が始まると、霊子さんはどこかへふらっと飛んでいってしまった。

はぁ...霊子さんもどってこないな

かなり傷つけてしまった...

どうしよう...

透、ため息なんてどうした?

湊!いや...ちょっとな

もしかして女か?

お前まで拓也みたいなこというなよ...

俺をあいつと一緒にするな

あはは...

まあ女っていえば女性なんだけど...

別に彼女とかじゃないんだ

知り合いの女性で...ちょっと失礼な発言をしちゃったんだ

それで傷つけてしまったかなって...

そうか

まあちゃんと謝ればいいんじゃないか

その人からはなにもアクションがないんだろ?

うん...

じゃあきっと自分を落ち着かせてるんだろ

ちゃんと謝ればわかってくれるさ

お前は優しいやつだからな

...う

さんきゅ...

お前ってほんとにわかりやす...

言うな。わかってる

........

結局霊子さんは、掃除の時間まで戻ってこなかった。

霊子さんごめん...ごめん

はぁ...いくらひとりで練習してたって、本人がこなければなぁ...

霊子さん

あの...

ほんとに俺ってデリカシーがないんだよな...

霊子さん

透くん...

はぁ...このまま戻ってこなかったらどうしよう...

霊子さん

透くん!

はっ!

霊子さん!?

いつからいたの!?

霊子さん

えと...ついさっき

びっくりしたぁ...

じゃなくて!霊子さん、傷つけてごめん!

霊子さん

あ...いや、戻ってこなかったのは怒ってたからじゃないのよ

え?

霊子さん

ちょっと校内を見学してただけで...気にさせてごめんね

な...なぁんだぁ...よかったぁ...

霊子さん

ほんとに透くんって優しいのね

ううん。優しくないよ...デリカシーないし...

霊子さん

いいのよ。気にしてないんだから

霊子さん

私...私ね

霊子さん

自殺したの。昨日よ。

........

........え?

なんだか時間が止まった気がした。

霊子さん

人を殺したの。

霊子さん

同じクラスで、とっても愛していた

霊子さん

透くんみたいに優しい人だったの

........

霊子さん

でも...その人は何人かと付き合ってたみたいで

霊子さん

その中に、私の親友もいたの

霊子さん

親友とは仲はこじれなかったけど

霊子さん

かなり傷ついていたわ

霊子さん

彼女はとても心をボロボロにして

霊子さん

死んでしまった。

霊子さん

一番信頼を置いていた、明るくて可愛い子だった

霊子さん

私は彼に訴えた。あなたのせいよ、と

霊子さん

でも彼は、騙される方が悪い。勝手に死んだのはあっちだと言い放った。

霊子さん

私はその時なにかがぷつんときれた

霊子さん

気がつけば、彼を殺していた。

霊子さん

警察は私が犯人だとは気づかなかった

霊子さん

でも私は毎晩彼の悪夢を見るようになって

霊子さん

そのうち警察も気付いてしまうとおもった。

霊子さん

昨日、ついにボロボロになって

霊子さん

マンションから飛び降りた

霊子さん

でも成仏できなかったのね

霊子さん

幽霊になってた

霊子さん

不思議なことに、一日の中で視える人に何人か会った。

霊子さん

ここは昔妖怪が現れるとこで有名だったから、名残があったのかもね

霊子さん

私は彼を愛していたから、ずっと捕らわれている。

霊子さん

愛していた...とっても

霊子さん

........

霊子さんは俯いて涙を流した。

俺にはこの話は重すぎて、とても耐えられずに泣いた。

霊子さんの本当の名前は...なに?

霊子さん

........私は

霊子さん

幸...。

幸さんか...いい名前だね

霊子さん

........うん

霊子さん

幸せな........名前よね

霊子さん

透くん...私...

幸さん、俺は幸さんが好きだよ

........え?

一目惚れ...かな?

今の話を聞いて、もっと好きになった

どれだけ傷ついても、真っ直ぐに愛し続ける幸さんを、守ってあげたいとおもった

幸さんは、優しい人だから

透くん...

........ありがとう

幸さん...身体が...

え...?

光って...消えていく...

........どうして...かな

透くんに...愛されたから...?

え...?

私は彼を愛していた。
だから彼に愛されたかった

でも愛される前に殺してしまったから

誰かに........愛されたかったのかもしれない...

幸さん...

ねえ透くん

もしもう一度生まれ変わったら...

また告白してくれない?

え...?

........わかった。約束する

ありがとう...

さよなら...

幸さんは、哀しそうな、でもとても綺麗な笑顔で消えていった。

幸さんが成仏してから一週間が経った

幸さんは...『貴方と同じで優しかった』っていってた...

幸さんが殺してしまった人と俺を...重ねていたのかもな...

........

...あ

星...

........あの時幸さんにも...

こんな星が見えていたのかな...

........

俺は柔らかい表情で、しばらく星空を眺めていた。

そこにいるであろう人を、想いながら

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