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蘭side

考えを巡らせていると 横顔に注がれる視線に気がつく。

ちらりと見れば、息を潜め じっと様子を窺っている いむちゃんと目があった。

あれこれ言ったはいいが 私の反応が気になったのだろう。

桃瀬らん

...... いむちゃん、随分大人っぽいこと言うんだね、笑

紫龍ほとけ

でしょー?もう高校生だもんっ!

自慢げに胸を張る いむちゃんはやはり可愛いらしく 私は堪らず抱きしめる。

桃瀬らん

もうっ!いむちゃん、可愛いーっ!!(抱

紫龍ほとけ

んゎ、らんちゃんくすぐったいよぉ、笑

はしゃいだ声が部屋に 響く中ノックもなく ドアが開け放たれた。

そんなことが出来るのは たった1人しかいない。

紫龍いるま

何やってんだよ、人の部屋で ...

部屋の持ち主である威榴真が 呆れた顔で突っ立っていた。

紫龍ほとけ

お兄ちゃん、おかえりー!

いむちゃんに習い 私もひらひらと手を振る。

桃瀬らん

おかえりー。って、おっそーい!どこ行ってたの?

紫龍いるま

どこでもいいだろー

フローリングに座り込む 2人を器用に避け 威榴真は奥の机へと進んでいく。

その手には一駅離れた所にある 大型書店の袋が握られていた。

雑誌にしては小さく厚みもあるから また新しい参考書を 買ってきたのかもしれない。

桃瀬らん

(おばさん、威榴真も夏期講習
受けるみたいだって言ってたもんね)

まだ高1の私の弟が合宿に 参加すると豪語した翌日 自宅のリビングで母親同士が 盛り上がっているのを耳にした。

何故か私の前では そんな素振りを滅多に見せないのだが 威榴真もそれなりに 受験勉強に打ち込んでいるらしい。

紫龍いるま

折角の休日なのに、ウチに入り浸ってていいのか ~ ?

財布と紙袋を机の上に 置きながら威榴真が 揶揄うように尋ねてくる。

今更な質問に私は 「ん??」と首を傾げた。

桃瀬らん

だって威榴真は特別。それにいつものことじゃん?

紫龍いるま

...... あっそ、 ...

自分で聞いておいて 照れたのか威榴真が 口をもごもごとさせる。

心做しか横顔も赤く見えるが外から 帰ってきたばかり だからかもしれない。

下手に指摘するのも躊躇われて私は 曖昧に笑い返した。

紫龍いるま

... で、今日は何しに来たんだ?

くるりと振り返った 威榴真が仁王立ちで聞いてくる。

桃瀬らん

勉強教えてもらおうと思ってー、笑

へらっと笑う私に威榴真と いむちゃんが意外そうに声を揃えた。

紫龍いるま

ゲームじゃないんだ

紫龍ほとけ

ゲームじゃなかったっけ?

桃瀬らん

兄妹仲良いな!違うよっ!

それじゃあ、私がいつもゲームしか してないみたいじゃん!

抗議の言葉が喉元まで 出かかったが「うん」と しか返ってこないのではと 不安がよぎった。

よくよく思い返してみると 威榴真の部屋に入り浸っている時間の 半分は筆記用具ではなく コントローラーを握って いたような気もする。

桃瀬らん

(こうなったら、ブツを見せるしか ...... !)

私はすっかり存在を忘れ放置していた 英語のプリントを掲げ 証拠を突き付ける。

桃瀬らん

ほら、これ!1問しか解けてないでしょ?

紫龍いるま

自慢げに言うなって。ったく、俺は駆け込み寺かよ ...

苦笑しながら威榴真が 折り畳みのテーブルに手を伸ばす。

口ではなんだかんだ 言うもののどうやら 今日も教えてくれるようだ。

私が筆記用具を抱えると いむちゃんもスペースを 空けるために立ち上がった。

紫龍ほとけ

じゃ、お邪魔虫は退散するねっ!(ニヤッ

悪戯っぽい笑みを 浮かべるいむちゃんに 私は内心ひやりとする。

桃瀬らん

(わっ ... そんな言い方したら流石の威榴真も変に思うよね ... 、?)

おずおずと威榴真を 見やると予想を裏切り 満面の笑みが飛び込んできた。

紫龍いるま

お前も一緒にやるか?

紫龍ほとけ

...... お兄ちゃん、そんな調子じゃ一生苦労するよ

紫龍いるま

はぁ?なんの予言だよ?

お邪魔虫の意味が違うとは言えず 私は乾いた笑いを零すしかなかった。

きみ宛ての2文字 __ 。

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