蘭side
考えを巡らせていると 横顔に注がれる視線に気がつく。
ちらりと見れば、息を潜め じっと様子を窺っている いむちゃんと目があった。
あれこれ言ったはいいが 私の反応が気になったのだろう。
桃瀬らん
紫龍ほとけ
自慢げに胸を張る いむちゃんはやはり可愛いらしく 私は堪らず抱きしめる。
桃瀬らん
紫龍ほとけ
はしゃいだ声が部屋に 響く中ノックもなく ドアが開け放たれた。
そんなことが出来るのは たった1人しかいない。
紫龍いるま
部屋の持ち主である威榴真が 呆れた顔で突っ立っていた。
紫龍ほとけ
いむちゃんに習い 私もひらひらと手を振る。
桃瀬らん
紫龍いるま
フローリングに座り込む 2人を器用に避け 威榴真は奥の机へと進んでいく。
その手には一駅離れた所にある 大型書店の袋が握られていた。
雑誌にしては小さく厚みもあるから また新しい参考書を 買ってきたのかもしれない。
桃瀬らん
まだ高1の私の弟が合宿に 参加すると豪語した翌日 自宅のリビングで母親同士が 盛り上がっているのを耳にした。
何故か私の前では そんな素振りを滅多に見せないのだが 威榴真もそれなりに 受験勉強に打ち込んでいるらしい。
紫龍いるま
財布と紙袋を机の上に 置きながら威榴真が 揶揄うように尋ねてくる。
今更な質問に私は 「ん??」と首を傾げた。
桃瀬らん
紫龍いるま
自分で聞いておいて 照れたのか威榴真が 口をもごもごとさせる。
心做しか横顔も赤く見えるが外から 帰ってきたばかり だからかもしれない。
下手に指摘するのも躊躇われて私は 曖昧に笑い返した。
紫龍いるま
くるりと振り返った 威榴真が仁王立ちで聞いてくる。
桃瀬らん
へらっと笑う私に威榴真と いむちゃんが意外そうに声を揃えた。
紫龍いるま
紫龍ほとけ
桃瀬らん
それじゃあ、私がいつもゲームしか してないみたいじゃん!
抗議の言葉が喉元まで 出かかったが「うん」と しか返ってこないのではと 不安がよぎった。
よくよく思い返してみると 威榴真の部屋に入り浸っている時間の 半分は筆記用具ではなく コントローラーを握って いたような気もする。
桃瀬らん
私はすっかり存在を忘れ放置していた 英語のプリントを掲げ 証拠を突き付ける。
桃瀬らん
紫龍いるま
苦笑しながら威榴真が 折り畳みのテーブルに手を伸ばす。
口ではなんだかんだ 言うもののどうやら 今日も教えてくれるようだ。
私が筆記用具を抱えると いむちゃんもスペースを 空けるために立ち上がった。
紫龍ほとけ
悪戯っぽい笑みを 浮かべるいむちゃんに 私は内心ひやりとする。
桃瀬らん
おずおずと威榴真を 見やると予想を裏切り 満面の笑みが飛び込んできた。
紫龍いるま
紫龍ほとけ
紫龍いるま
お邪魔虫の意味が違うとは言えず 私は乾いた笑いを零すしかなかった。
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