クリスマス。
それは、恋人達にとっては相手を1番に想う日であり、
俺にとっては、
「彼女」との出会いの日だった。
3年前、俺と彼女はクリスマスに出会い、
彼女の命は1年前、クリスマスに儚く散った。
良くも悪くも、どうしても忘れられない日だ。
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そう強く願ったとき、
白銀に輝く世界は暗転した。
────くん、
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信じられない光景だった。
目の前にいるのは、一年前に亡くなったはずの彼女で、
頬をつねってみるも、幸か不幸か、
夢というわけでもなさそうだ。
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etさんは、昔からこうだった。
自分の事よりいつも周りの人間の事を優先して、
いつの間にか損ばかりしている、そんな正義感のかたまりみたいな人。
etさんの第一印象は、
“要領が悪い人”
掃除当番なんて、ほどほどにサボればいいものを、
押し付けられた掃除当番でさえ、一生懸命文句一つ言わずにやっていた。
人にも自分にも厳しい彼女は、クラスメイト達からは疎まれていたけれど、
俺は、彼女の近くにいたかった。
近くにいないと、壊れてしまいそうな気がしたから。
いつのまにかいなくなってしまいそうだから。
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ギュッ
et
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えとさんは、繋いだ手をコートの中に突っ込んだ。
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そう言った彼女の笑顔は、
まぶしくて、優しくて、
可愛くて、愛おしくて。
思わず繋いだ手に力が入る。
「どこにも行かないで」
「ずっと俺のそばにいて」
そう言いたかったけど、なぜか、言えなかった。
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もし、これが夢ならば、
現実では伝えられなかった全てをせめて、夢の中では伝えさせてほしい。
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俺は記憶の糸を手繰っていく。
この後、俺達はどこに行ったのか、全然思い出せない。
だけど、
やり残した事があるかのような不快感が腹の底でくすぶっていた。
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そうだ、ここは─────。
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これが夢だとしても、
2年前のクリスマスに渡せなかった「これ」を、
夢の中だけでも伝えたい。
hr
結婚してください。
et
etさんは、ぽろぽろと涙を零し、
泣き笑いのような表情で言った。
はい…っ。
神様。
どうか、今この瞬間をなかったことにしないでください。
お願いします。
どうか、今だけは。
このまま、一緒にいさせてください。
目が覚めたら、そこは元通りで、
繋いでいた手も、
隣にいたはずのetさんも、
全てがなくなって、ただ、冷たい世界が広がっていた。
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そう言ってうつむいたとき、
左手の何かがキラッと光った。
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そこにはまっていたのは、
さっきまでは付けていなかった、
本来ならずっと箪笥の奥に眠っていた、
etさんとの婚約指輪だった。
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見上げた空には、一筋の流れ星が光って、
はらりはらりと雪が降っていた。
彼女を失ったあとのクリスマスは、 憂鬱で、苦しくて、悲しくて。
だけど、
これはきっと、サンタから俺への「クリスマスプレゼント」だ。
俺は、夜空を見上げて小さく呟いた。
「───愛してる。」