スパイと訳あり姫

僕は初兎 スパイとして、本国から異国まで来た そこでいむくんがさらわれたってところまでは覚えてるんだけど… 僕、どうしてこんな牢屋みたいなところにいるんや？

そう思いながらふととなりを見ると、 そこには目を閉じているいむくんがいた …眠ってるだけやよな？

手を伸ばそうとすると、カチャカチャという音がした うわぁ…手枷でつながれてるんやけど… 本当に、どういう状況なんや？

今階段を下りてきたこいつは… 僕を城の外で誘拐した犯人や！ ここにいむくんもいるってことは、彼も誘拐したってことやんな

unconsciousって…「無意識」って意味の英語だったよなぁ？ なんでわざわざ英語で言うん？

バンッ！！

いきなり地下牢のドアが開いた そこから出てきたのは…ないふっ？

合成された生き物？ …どういうことや？？ 今の言い方からすると、いむくんが合成されたみたいだけど…？

混乱してわけがわからない

T-25？いむくんのことか…？ そういえば、犯人もそんな認識番号みたいなので呼ばれてたな…

まろちゃんの言葉に目を見開く 大切な弟とちゃうんか…⁉

「部外者」 その言葉に、「僕はこのことに関わったらいけない」みたいな雰囲気を感じる …僕はその秘密、知ってもいい …というか、知りたい でも、二人の真剣な目を見てると…どうにも言い出せんわ…

そう言って、やつが僕の手枷を外す チラッといむくんをふり返る 彼は目を閉じたまま動かない …無意識なだけだよな…？生きててや、いむくん…！

ー異国の城ー

急に何を言い出すねん！ たしかに好きやけど、今言うことちゃうやろ…

とうとう来たか… 聞きたい気持ちはあるけれど、少しこわい、っていうのもある …でも、どんな秘密があったとしても僕はいむくんが好きなんやから

プルルルッ…プルルルル…

こっちから報告することはあっても、本国からは連絡しないって言ってたのに …よっぽどのことが起こったんか？

あ、初兎ちゃん⁉急いでDice病院まで来てほしい！

そこって本国の病院よな なんでわざわざ本国に行かんといけないん？ …それに、りうちゃんの声がすごくあせってる 周りの声もうるさくて、緊急事態みたいや

…お父様が、倒れた…！

急な心臓発作だって…危篤だって！

自分の為なら他が犠牲になっても構わない自己中心的なお父様 …それでも、僕らを育ててくれたのは彼だ 幼少期の頃の、すごく優しかったお父様を僕は覚えている 国のために変わったんだって知っている ――死なないでほしい！！

ありがと…緊急事態のときにごめんね

そう言ってくれてありがと。じゃあね、なるべく急いでくれるとありがたい

ピッ

いむくんがさらわれたときに…タイミング悪いよな…

すごく強くOKって言ってくれた …なんか、まろちゃんって親のことになると熱いよな まぁ、ありがたいんだけど

ー初兎が去ったー

ーDice病院ー

僕がドアを開けると、すごく立派な病室が目に入った まぁ、この国を治めてる人なんだから当たり前なんだけど

たぶん、りうちゃんも悠くんも、根っこの部分ではお父様のこと 好きなんだ、って思う …だからこそ、絶対に助かってほしい…！

癌…！

仕事はできない、か… いや、それでも、生きてくれるだけいいんや！

アニキとお医者さんが去った