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ツバサ
五年も子供産めないような不妊女とはもうやってられない
ツバサ
離婚してくれ
ソラ
え？ちょっと待ってよ
ソラ
私はずっと不妊治療に通い続けてたけど、
ソラ
ツバサは何も協力してくれないじゃない
ツバサ
嘘つけよ。お前、不妊治療サボってんじゃねぇか
ソラ
だって、私の体には何も問題ないって言われてるし、
ソラ
あなたが協力してくれないのに何もできないでしょ
ソラ
お医者さんにも、旦那様も来るようにって言われたし
ツバサ
お前、まさか問題あるのは俺の体だって言いたいのか？
ソラ
それしか考えられないわ
ソラ
だって、不妊の原因は半分が男性なのよ
ツバサ
そんなの嘘だ！だって、石女って言葉はあるけど石男って言葉はないだろ
ツバサ
つまり、不妊の原因のほとんどは女だってことだ
ソラ
昔はそう思われてたわよ。でも、今は医学の発展で男性不妊の存在が知られてきたじゃない！
ツバサ
俺の体に問題があるわけないだろ！
ツバサ
俺は小学校の頃からずっと皆勤賞の超健康体なんだぞ！
ソラ
関係ないじゃない！
ツバサ
それにだ、俺の体に問題がないという動かぬ証拠がある
ソラ
動かぬ証拠？検査でもしたの？
ツバサ
彼女が妊娠したんだ
ソラ
は？
ツバサ
おっと、責めてくれるなよ。男なら誰だってキャバで遊ぶんだから
ソラ
キャバ！？
ツバサ
あぁ。アゲハちゃんとはキャバで運命の出会いを果たして、お互い本気になったんだ
ツバサ
付き合ってるうちに、彼女は俺の子を妊娠した
ソラ
ちょっと！避妊しなかったの！？
ツバサ
だって、アゲハちゃんが避妊しなくていいって言ってくれたし、
ツバサ
俺も子供ができるかどうか試したかったんだ
ソラ
最低…
ツバサ
こんなに早く子供ができるなんて、やっぱりお前の体に問題があったんだなｗ
ツバサ
まったく、俺の五年間を返してほしいぜ
ソラ
…キャバねぇ…それ、本当にあなたの子供なの？
ソラ
あなた単純な性格だからねぇ。色恋営業で他の客とも寝てるんじゃないの？
ツバサ
なんだと！？お前、キャバ嬢だからって差別したら許さないぞ！
ツバサ
嫉妬したからって疑うなんて最低だ！
ツバサ
アゲハちゃんは俺だけを愛してくれていて、俺以外とはしてないって言うんだ
ツバサ
俺の子じゃないわけないだろうが！！
ソラ
はぁ…
ツバサ
というわけで、不妊女はさっさと出て行ってくれ
ツバサ
俺は責任を取るために、彼女と結婚するんだ
ツバサ
アゲハちゃんは若くて綺麗なんだ。不妊ババアとはわけが違う
ソラ
あっそう、わかったわ
ソラ
でも慰謝料は払ってね。わかってるとは思うけど、あんた達のやったことは不倫よ
ツバサ
アゲハちゃんはキャバ嬢として稼ぎまくってるんだ
ツバサ
二人分の慰謝料くらい、余裕で払ってやるさｗｗ
～数年後～
ツバサ
おーっ、久しぶりに会ったなｗｗ
ソラ
やっぱりさっきすれ違ったの、あんた達一家だったのね
ソラ
随分と幸せそうなことで
ツバサ
そうだろそうだろーｗｗ
ツバサ
見たか？俺の子供達！すっごく可愛いだろ！理想的な一姫二太郎なんだ
ツバサ
しかも俺はタワマン住まい！優雅な暮らしをしてるんだぜ！
ツバサ
いやー毎日幸せだｗｗお前と一緒にいたら味わえなかったなーｗｗ
ソラ
私の方も再婚して可愛い子供ができたわよ
ソラ
お互い幸せで良かったわね
ツバサ
あー、お前が連れてたガキもいたな
ツバサ
でもどうせ再婚相手の連れ子かなんかだろｗｗお前産めないもんなｗ
ツバサ
虚しくならないのかねー、他人のガキなんか育ててｗ
ソラ
いいえ、この子達は私が産んだ実子よ
ツバサ
へ？
ツバサ
実子…？そんなわけないだろ？だってお前、不妊じゃないか！
ソラ
それがそんなわけあるのよねー
ソラ
再婚してからわずか一年で息子を産んで、その一年後に娘を産んだ
ソラ
そっちと同じ一男一女よ
ソラ
つまり、私の体にはお医者様の診断通り、何も問題はなかったってことになるわね
ツバサ
えーと…
ツバサ
じゃあ、なんで俺のとこも順調に子供が生まれたんだ？
ソラ
知らないわよ。奥さんはあなただけを愛してくれていて、あなたとしかしてないんでしょ
ソラ
だったら、あなたの子でしかありえない。そう言ってたじゃない
ツバサ
それが…実はアゲハは、俺以外とも枕営業をしてるっぽいんだ…
ツバサ
調べるのが怖くて確証は持てないけど…
ソラ
今更ながら疑惑が産まれちゃったわけね
ツバサ
なぁ、どうしたらいい？この子達がもし、俺の子じゃなかったら、俺…
ソラ
知らないわよ。私には関係ないわ
ソラ
それじゃ、お幸せにね
～数週間後～
ツバサ
ソラ、今いいか？俺病院で検査してきたんだ
ツバサ
そしたら、俺は男性不妊で、子供ができない体だったって…
ソラ
そう
ツバサ
それでも、一縷の望みをかけて、子供達のＤＮＡ鑑定をしたんだ
ツバサ
結果…どっちも俺の子じゃなかった
ツバサ
アゲハに問い詰めたら、白状しやがったよ
ツバサ
二人の子供の父親は違って、どっちも俺の子じゃなくて、
ツバサ
枕営業した他の客の子供だけど、正確な父親はわからないらしい
ツバサ
そして、三人目の子供を妊娠したと…その子も俺の子として産む予定だったと…
ツバサ
俺と結婚したのは、上手い具合に騙されてくれたかららしい
ツバサ
でも今好きなのは俺だけなんだってさ…はは、信じられるわけないよな…
ソラ
そう。稼ぎまくってたのは、枕営業しまくってたからだったのかもね
ツバサ
なぁ、俺どうしたらいい！？俺ずっと騙されてきたんだ！他人の子を育てさせられてきたんだ！！
ツバサ
これからもずっとこのまま、他人の子育てなきゃならないのか！？
ソラ
知らないわよ。バツ２になるけど、離婚でもなんでもすればいいじゃない
ツバサ
それが…俺、アゲハが稼いでるのをいいことに、
ツバサ
仕事を辞めて専業主夫になったんだ
ツバサ
キャバ嬢と不倫してお前を捨てたことが広まって以来、職場にいづらくなっていたしな
ツバサ
その方が子供達の為にもいいって、アゲハも賛成してくれた
ツバサ
それなのに離婚なんてことになったら、今更働けないよ！
ソラ
あらら
ツバサ
それに、離婚しても養育費の支払いはしなくちゃならないらしい
ツバサ
子供の誕生を知ってから一年以内に嫡出否認の訴えをしないと、
ツバサ
後から托卵がわかっても父子関係が認められてしまう
ツバサ
離婚して収入源がなくなった上に養育費を払わないといけないなんて、損じゃないか！！
ツバサ
それに…俺自身、子供達を愛してしまったんだ
ツバサ
実の父親じゃない俺を…子供を作れない俺を、
ツバサ
無邪気に『パパ』と呼んで慕ってくれてるんだ
ツバサ
そんな子達と離れるなんてできないよ…！
ソラ
あらそう
ソラ
じゃあ頑張るしかないわね。子供達の『パパ』としてこれからも専業主夫してれば？
ソラ
血の繋がりはともかく、子供達にとっての『パパ』はあなたしかいないんだから
ツバサ
で、でも三人目の子供の『パパ』にもならなきゃいけないのか！？
ツバサ
俺、専業主夫として優雅な暮らしはさせてもらってるよ
ツバサ
今更この生活水準からは抜け出せない
ツバサ
でもこの生活の裏側には、アゲハが枕営業で稼いだ金と、
ツバサ
誰だかわからない子供達の父親がいるんだと思うと、苦しくなる
ツバサ
これからもアゲハは枕営業をしまくって、
ツバサ
他の男の子供を次々産んで、その度に俺が育てなきゃいけないと思うと…！
ソラ
そうなったら、アゲハさんはこの少子化の世の中に実に貢献してくれてるわねｗ
ツバサ
笑い事じゃない！！他人事みたいに言いやがって！
ソラ
だって他人事だもの。それを私に言ってどうしようっていうの？
ソラ
私も自分の子の育児で忙しいのよ。あんた達のことなんてどうでもいいの
ツバサ
お前がもっと強く、俺に不妊治療するように勧めてくれたら、
ツバサ
今頃こんな事にはなってなかったんだ！
ソラ
あのねぇ、人のせいにしないでちょうだい
ソラ
俺は健康体なんだ、俺の体に悪い所があるわけない、
ソラ
そんなこと言って病院に行くのを拒んだのも、
ソラ
本当にあなたの子なのか疑う私に、
ソラ
嫉妬して疑うなんて最低だ、俺の子に決まってるって言い張ったのもあなたじゃない！
ツバサ
そうだけど…
ソラ
今の人生はあなたが選んだ結果よ
ソラ
それじゃあ、子育て頑張ってね
ツバサ
こんなことになるんなら、何も知りたくなかったよ…
～一年後～
ツバサ
なぁ…助けてくれよ
ツバサ
アゲハの奴、過剰な枕営業が問題視されて、
ツバサ
客の妻たちから集団で訴えられて、慰謝料を搾り取られたんだ
ツバサ
それだけじゃない
ツバサ
店もアゲハ絡みで起きるトラブルを問題視して、アゲハをクビにしやがったんだ
ツバサ
曲がりなりにも裕福だった俺達は、タワマンも追い出されて、今や一文無しだ
ツバサ
三人も子供がいるのに、これからどうすりゃいいんだよ…
ソラ
三人って、結局三人目の子のパパにもなったの？
ツバサ
あぁ。育ててると可愛いもんだな…
ツバサ
でも、それどころじゃない
ツバサ
今一番必要なのは金なんだ
ツバサ
なぁ、お前の旦那稼いでるのか？
ソラ
稼いでるわよ。私も在宅ワークでそこそこ稼いでるしね
ツバサ
だったら生活に余裕もあるだろ！なぁ頼むよ！！
ツバサ
元妻のよしみで、俺に金を貸してくれ！！
ソラ
お断りよ
ツバサ
即答！？
ソラ
自分達で働いて稼げばいいじゃない
ソラ
まさか、この期に及んで専業主夫生活にこだわってんの？
ツバサ
そういうわけじゃない！
ツバサ
ただ、長らく専業主夫だったし、この歳で再就職ってなかなか決まらないんだ…
ツバサ
それに、贅沢な暮らしが長かったから、俺もアゲハも
ツバサ
こんなことになっても生活水準を下げるのが難しくて、
ツバサ
そのせいで自分たちの首を絞めてるし、喧嘩にもなってる
ツバサ
子供達も慣れない貧乏暮らしに泣いてるしな…
ソラ
あのねぇ、前にも言ったけど、
ソラ
こっちはあなた達が不幸になろうが幸せになろうが、どうでもいいの
ソラ
だって他人事だもの
ソラ
捨てた元妻に頼らないでちょうだい
ツバサ
うるさい！お前の今の幸せも、もとはといえば俺が離婚してやったからだぞ！
ツバサ
少しは恩を感じて助けてくれたっていいじゃないか！
ソラ
結果的に今幸せだろうが、なんで不倫して私を不妊女呼ばわりして捨てた
ソラ
元夫を助けなきゃいけないのよ！
ソラ
私はあなたを助ける気はありません。それでは
ツバサ
おい、見捨てないでくれよ！話を聞いてくれ！！
～後日談～
ソラ
その後、私は工事現場で働くツバサを見かけました
ソラ
ツバサは日雇いの仕事で食い繋ぎ、アゲハさんも風俗で働いているそうです
ソラ
これ以上子供が増えないように、今度こそ避妊に気をつけながら
ソラ
彼女の稼ぎ方なら、キャバより風俗の方が確かに向いてるかもしれません
ソラ
ツバサは『俺は肉体労働が向いていたのかもしれない』
ソラ
『体を動かしてると楽だ。何も考えなくて済む』と言っていました
ソラ
アゲハさんとの夫婦仲は冷え切っており、
ソラ
離婚しようとしたこともあるそうですが、
ソラ
その度に子供達が泣いて引き留めるので、
ソラ
結局ズルズルと婚姻生活を続けてしまっているのだとか
ソラ
気の毒だとは思いますが、私にはどうすることもできないことです
ソラ
これまでなんだかんだで話し相手をしてきてしまった自分にも
ソラ
問題があるかもしれないと、ツバサのLINEをブロックし、
ソラ
自分の今の家族を大事にすることにしました
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
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