夕方のオレンジ色の空に
灰色の雲がかかりはじめた頃
付き合ってもうすぐ1年になる
彼氏に振られた。
綺麗な空が見える屋上は
私の大切な場所。
そして、この場所が今日
私の唯一の嫌いな場所となった。
ふと、空を見ると
綺麗なオレンジ色だった空は
完全に灰色に染まっていた。
"別れよう"
私は、彼のその言葉に
息を呑んで
帰りの駅まで足を動かした。
帰りの電車に乗り
また、窓越しに空を見ると
今度はパラパラと
小雨が降ってきていた。
『ゴォー』と風が吹いたのが電車越しでも分かった。
窓の外には風に乗って
揺られているものが見えた。
でも、霞んでいてみえなかった。
気がついたら近くの駅に降りて
走り出していた。
傘もささずに雨に濡れた私は
人気のないところまでひたすら走った。
電車から見えたものはきっと
この桜だったのだろうと思った。
まだ、2月だと言うのに
無駄に綺麗に咲き誇った桜が
私を不快にさせた。
綺麗な桜が散って霞んで小雨が降る
この場所で
雨音と踊ってやろうと思った。
どうせ、踊るんならと
眼鏡と髪ゴムを外した。
そして、『眼鏡』と『髪』という単語に反応した私は
彼のことを思い出した。
彼のことが好きだった。
だから、嫌われないように
告白してきた当初と同じように
彼と時を過してきた。
桜のように軽やかにステップを刻んでいた私の身体は
熱くなって
自分の顔が映る水溜まりに
足を勢いづけて下ろした。
パシャン!!
雨水が音を鳴らす。
水溜まりの水が少し減っていて
水溜まりに映る自分の顔は
波紋になっていて歪んでいた。
彼のことを思い出しても
キリがないと思い
また、気がついたら
軽やかに雨音と踊っていた
ゴォー
さっきまでにない大きな風が吹き
無駄に綺麗に咲き誇った桜は
またもや、綺麗に散っていった。
桜の季節じゃないというのに
春だと知らせてくる桜の花びらを追っていた僕は
桜と雨と霞の3つの中で
華麗に軽やかに
広がっては消える波紋のように
舞う彼女を僕は見つけた。
僕は身体が熱くなって
照れるように彼女に話しかけた。
彼女は僕の声に気づくと
踊りをやめた。
長い袖が捲られていて
髪には飾りだと思うように
綺麗に桜の花びらがついて
彼女の顎には雨が下垂れていて
と、少し曇った顔でいう。
いつもは口にしない言葉がスラスラと
素直に出てきて戸惑ったが
みるみる彼女の顔が明るくなって言ったので辞めなかった。
口を急に開いて
出した言葉は
クールな顔に合わない不思議な言葉で
可愛らしい声をしていた。
コメント
16件
とても素敵な作品ですね…!✨ 雨音と踊りたかっただけ って……センスありすぎませんか?!! もう神です! 投稿ありがとうございました!🙌
とてもステキ✨ 冬コン結果発表したから 見てみてね(><)