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獣たちと契約せし日
2話:主は震え、獣は吠える
狐耳の男の言葉と同時に、遺跡の闇がざわめいた。
低い唸り声。
崩れた柱の影から、瓦礫の隙間から、赤い目がいくつも覗く。
???
低く鋭い声。
虎の耳を持つ男が、一歩目に出た。
魔獣が一斉に跳ぶ。
???
振り返りもせずに言い放ち、トラの男は地を蹴った。
剣が閃く
血が飛び、魔獣が崩れる。
速い。迷いがない。
横では、狐耳の男が指先をわずかに動かしていた。
???
その声と同時に、魔獣同士がぶつかり合う。
視界を狂わされたのか、牙を向ける先を誤っている。
呆然とその場に立ち尽くしていると足元に淡い光が広がった。
垂れた兎耳の青年が、両手を組んで静かに何かを詠唱している。
???
半透明の守護結界が、俺を包む。
外では戦いが激化していく。
虎の男の剣が閃き、
狐耳の男の魔術が歪みを生み、
兎耳の青年の繊細な魔力弾が正確に魔獣を打ち抜く
――熊の耳を持つ大柄な男は。
???
崩れた石柱にあぐらをかき、頬杖をついて眺めているだけだった。
まるで退屈な見世物でも見ているかのように。
雨宮 真琴(アマミヤ マコト)
足が震える。
後ずさりすると、瓦礫に引っかかり、結界の中で尻もちをつく。
何もできない。
ただ守られているだけ。
魔獣の数が増える。
虎の男の呼吸がわずかに荒くなる。
狐耳の男の幻覚をすり抜けた一体が、こちらへ向かってくる。
結界に牙が食い込む。
結界に一つのひびが入る。
もう一撃。
亀裂が走る。
???
砕けた。
結界が破られ、魔獣が跳ぶ。
視界いっぱいに牙。
終わる――
ズン。
地面が沈んだ。
視界が影に覆われる。
目の前に立っていたのは、
巨大な茶色い熊だった。
荒々しい毛並み。
冷たい理性を宿した瞳。
その周囲を、深緑の光が揺らめく。
さらに外側を包むように、淡いオーロラのような魔力が流れていた。
圧。
それだけで空気が震える。
熊が低く唸る。
前脚が振り下ろされた。
轟音。
衝撃波が遺跡の地面を割り、魔物の群れをまとめて吹き飛ばす。
静寂。
残っている魔獣は、もういない。
深緑の光が霧散する。
巨大な熊の姿が歪み、縮み、
そこに立っていたのは、さきほどまであぐらをかいていた大柄な熊の男だった。
???
そう呟き、再び瓦礫に腰を下ろす。
虎の男が剣を払う。
狐耳の男が小さく笑った。
???
夕暮れはほとんど夜に変わっている。
沈黙のあと、狐耳の男が軽く手を打った。
???
その声は滑らかだ。
???
???
自分から名乗る。
レン・フォクシア
レン・フォクシア
レン・フォクシア
レン・フォクシア
薄く笑う
レン・フォクシア
虎の男が続く。
レオ・ティグリス
レオ・ティグリス
レンが視線を大柄な男へ向ける。
レン・フォクシア
ノア・ベアルド
たった一言。
レオが補足する
レオ・ティグリス
レオ・ティグリス
兎耳の青年が小さく息を吸う。
ユイ・ラビエル
ユイ・ラビエル
ユイ・ラビエル
最後に、視線が俺に集まる。
喉が渇く。
雨宮 真琴(アマミヤ マコト)
一瞬の静寂。
レオが周囲を警戒する。
レオ・ティグリス
夜が完全に落ちる。
俺はまだ、震えが止まらない。
誰よりも無力なまま。
――それでも、俺たちは同じ場所に立っていた。