5年後
国際ホール
パチパチパチ👏👏👏
司
…(お辞儀
テレビ局
ニュースキャスター
またしても最優秀賞、奇跡のピアニスト天馬司さん!
アナウンサー
今日はそんな天馬さんにお越しいただきました!
司
こんにちは。
アナウンサー
こんにちは〜!
ニュースキャスター
今回、話題になってるのはコンクールで弾いた自由曲ですよね!
アナウンサー
なんと、現在人気高上昇中の音楽家、青柳冬弥さんが作曲されたものなんですよね!
司
ええ。冬弥は高校からの後輩で。
司
今回の曲も、俺のためにとわざわざ書き下ろしてくれたんです。
ニュースキャスター
それで最優秀賞を取るなんて、流石ですね!
司
ははっ。まぁ…添えられた期待には、倍で応えたいじゃないですか。
アナウンサー
有言実行!考え方までカッコイイですね〜!
ニュースキャスター
この番組のOP曲も、天馬さんが作曲、演奏して下さったものなんですよね!
アナウンサー
本当にありがとうございます!
司
いえ。この番組に携わらせて頂いて、こちらこそ光栄でした。
ニュースキャスター
そう言って貰えると嬉しいですね〜!
アナウンサー
OP曲といえば、ED曲もあの有名なピアニストさんが演奏しているんですよ!
アナウンサー
噂によれば、天馬さんとは旧知の仲だとか!
司
ああ…類の事ですか。
ニュースキャスター
天馬さんとは別のコンクールで最優秀賞を受賞し、現在テレビ番組に引っ張りだこな神代類さんですよね!
アナウンサー
ですが、メディアには殆ど姿を表さず…ピアノ以外は謎に包まれている演奏者ですよね!
司
まぁ、アイツは昔から目立つのが好きでは無かったので…
司
俺はどちらかと言うと、表舞台に立ちたい方なんですけどね。
ニュースキャスター
たしかに!そんな感じしますね〜
アナウンサー
天馬さんから見て、神代さんとはどんな人なんですか?
司
そうですね…
司
ピアノに関しては、ああいう奴を天才と呼ぶんだなと…昔から思ってました。
ニュースキャスター
天馬さんがそこまで言う程の人物なんですね…!!
アナウンサー
プライベートでは関わったりするんですか?
司
はい。よく一緒に出掛けたり、たまに連弾したりもしますよ。
ニュースキャスター
連弾もするんですか!いつか聴いてみたいですね!
司
ははっ。それは類に聞かないと分かりませんね。
アナウンサー
またいつか楽しみにしてます〜!
アナウンサー
以上、天馬司さんの独占インタビューでした!
彰人
…
店員
あ、ピアニストの天馬司だ〜!
店員
今めっちゃ有名ですよね!
彰人
だな〜
店員
店長、天馬さんのCDいっぱい持ってますよね。店内BGMにもしてるし。
店員
好きなんですか?
彰人
…あぁ、あの人の演奏が1番好きだ。
店員
へぇ〜!!そうなんですね!
店員
店長がそこまで言うなら、俺ももっと聴いてみようかな〜
彰人
おー、いいんじゃね?
カランカラン
店員
あっ、いらっしゃいませー!
彰人
うげ、
司
彰人ー!じゃなくて、えっと、店長?
店員
えっ?!?!て、てて、天馬…?
彰人
ちょ、何すか。営業妨害っすか?
司
そんな訳なかろう。丁度近くに寄ったからな。会いに来ただけだ。
彰人
それを営業妨害って言うんだよ
司
いいや、れっきとした客だ。二名で。
彰人
二名って…
類
東雲くん、久しぶり〜
彰人
神代センパイ!
司
おい、俺の時と反応違くないか??
彰人
気の所為っすよw
店員
か、神代類まで……??!
彰人
あー、ちょっと案内してくるから、ここ頼むな。
店員
は、はい!!
彰人
はい。こちらの席どーぞ。
類
ふふ、ありがとう。
彰人
注文決まったらお呼びくださーい。
類
東雲くん、まさか自分のお店開いちゃうなんてね。
司
だな!それに彰人の料理の腕は中々だぞ。
類
ふふ、いいねぇ〜
類
(将来について悩んでた頃が懐かしいな。)
司
類は冬弥と最近どうだ?
類
え"っ?!
類
ど、どうって…まぁ、普通だよ。
司
ほう
司
冬弥も中々類に惚れ込んでるよな。…この間のインタビュー見たか?
類
…見たに決まってるじゃないか。
アナウンサー
青柳さんの曲はどれも幅広い世代から大人気ですよね!
ニュースキャスター
こんなにたくさん素敵な曲を作るコツ…みたいなものはありますか?
冬弥
そうですね…コツ…ではないですけど、
冬弥
俺の曲は、全て愛する人のために書いた曲なんです。
アナウンサー
え?!
アナウンサー
そ、それは恋人…とかですか?!
冬弥
ふふ、さぁ…?
ニュースキャスター
こ、これは怪しい反応ですね…!!!
アナウンサー
で、では、この不安のような、悲しいような音を上から覆いかぶせる情熱的な表現が有名な大ヒット曲も…?
冬弥
俺が学生時代、その人への告白のために書いた曲です。
ニュースキャスター
そうなんですか!?!?
アナウンサー
音楽で告白なんて…とても青柳さんらしいですね!
ニュースキャスター
成功したのか気になるところですが、今日のインタビューはここまでです!
アナウンサー
青柳さん、ありがとうございました〜!
司
…
類
…やめて、こっち見ないで
司
いや、冬弥から随分と熱烈なアプローチを受けたんだなぁ…と。
類
も、もう5年も前の話だよ!
司
ふーん?
司
そうだ。あの曲のCD、聴いたぞ。
類
あ、聴いたんだ。
司
あのピアノ、伴奏者はお前だな?
類
おや…よく分かったね。
類
多分気付いてるの君くらいだよ。
司
何年お前と冬弥の演奏を聴いてきたと思ってる。聴き分けくらいつく。
類
ふふ、流石だね。
司
しかし…何故お前が?冬弥に頼まれたのか?
類
んー…いや、僕がお願いしたかな。
司
ほう…?
類
ふふ、5年告白された時にね、「この曲はピアノが入って初めて完成なんです」って言われたんだ。
類
当時はよく分かってなかったんだけど…
類
もしかしたら、僕がピアノを弾いて完成させてくれ…って意味だったのかなって思ってさ。
司
うぉ…中々なロマンチストだな…
類
音楽家なんてそんなもんでしょ。
類
司くんも、金賞取って告白だっけ?
司
あぁ…しようと思ったが、花束持った彰人に先を越されたな。
類
おお〜、東雲くんも中々やるね。
司
まるで昨日の事のようだが…もう5年経ったんだよな。
類
そうだねぇ…
司
それにしても、まさかお前がピアニストになるなんて思ってなかったぞ。
類
僕もなる気は無かったさ。
類
だけど…改めて始めると、楽しくてねぇ…
司
俺は嬉しかったぞ!お前がもう一度ピアノを弾くと聞いて。
類
ふふ、それは光栄だね。
ピコンッ
司
む、メッセージか?
類
うん…あ、冬弥さんだ。
類
「今日の夜迎えに行きます」…
司
今どこにいるんだったか?
類
多分隣の県…かな?
類
迎えって家までかな?だったら帰らなくちゃ。
司
おお、そうだな。
司
ああ、代金は俺が負担する。またな
類
ええ?!流石に払うってば!
司
いいから、いいから。
類
もー!今度は絶対僕が出すからね!
類
じゃあ、またね司くん!
司
ああ。
類
(駅まで来てみたけど…)
類
(冬弥さんは…見当たらないな…)
類
(あれ、この駅じゃ無かったかな?!)
冬弥
る、類さんっ!!
類
わっ!?と、冬弥さん!
冬弥
す、すみません!!あの、待ち合わせの駅の場所を間違えてしまっていて…!!
冬弥
ほ、本当にごめんなさい…!!待たせましたよね…!!
類
いえいえ!…ふふっ、
類
全然いいですよ!そういうおっちょこちょいな所は変わってませんね。
冬弥
お、おっちょこちょい…
類
あっ、ごめんね。つい…ふふっ、
類
それにしても、急ですね。いきなり夜迎えに行くなんて…
冬弥
本当は、明日言うつもりだったんですけど…明日、予定が入ってしまったので、
類
?
類
何かあるならメッセージでも…
冬弥
いえ!これはダメなんです!直接、自分で言わないと…
類
(もしかして、海外に出張になったとかかな?)
冬弥
…フゥ、
冬弥
いつも優しくて真っ直ぐな貴方を愛しています。
冬弥
類さん、結婚して下さい。
類
……え?
類
え?!?!?!
冬弥
本当は、レストラン予約していたんですけど…こんなムードもない状態で、ごめんなさい、
冬弥
それでも…貴方を愛する気持ちは変わりません。
冬弥
生涯、貴方だけを愛し、幸せにすると誓います。
類
ポロ…
冬弥
?!
冬弥
え、あ、る、類さん?!そんなに嫌でしたか…!?
類
ちが、違うんです、嬉しくて…
類
ふふっ…僕なんかで良ければ、こちらこそ、お願いします…!
冬弥
!!
ギュッ
類
わっ?!と、冬弥さん?!
冬弥
絶対…幸せにします…!!
類
…ふふっ、楽しみにしてますね。
冬弥
実は明日…急遽、打ち合わせが入ってしまって…また、隣の県に行かないといけないんです、
冬弥
すみません…本当は一緒にいたいんですけど…
類
構いませんよ。
類
そりゃ、僕だってもっと一緒にいたいですけど…今日だって、会いに来てくれたから。
類
頑張ってきてくださいね。
冬弥
…はい!!
冬弥
あの、終わったらすぐ帰りますので!
類
ふふ、分かりました。
冬弥
絶対、絶対連絡します!その日の夜には帰りますから!
類
はいはい。
冬弥
じゃあ…また、明日。
類
ふふ、はい。また明日。
類
…
類
冬弥さん!
冬弥
!
冬弥
はい?
ギュッ
冬弥
!?
類
ごめんなさい…もう少しだけ、いいですか…?
冬弥
…もちろんです。
類
…今から言うことは独り言だから、気にしないでくださいね。
冬弥
はい。
類
…寂しいから、行かないで
冬弥
…!!
類
ふふっ、なんてね。引き止めてごめんなさい。
類
じゃあ、また明日…
冬弥
ま、待って下さい!
ギューッ
類
わっ!
冬弥
そんな…そんな事言われたら、行きたくなくなるじゃないですか、
類
え、えっと…独り言ですって、
冬弥
…明日、打ち合わせ中止にしてもらいます、
類
え?!それは行ってくださいよ!
類
ほ、ほら。今生の別れじゃあるまいし…さっきのは独り言ですし、
冬弥
……
類
冬弥さ〜ん…💧
冬弥
…分かりました、
冬弥
すごく…離れたくないですけど我慢します…
冬弥
じゃあ……また、明日。
類
ふふ、はい。また明日。
そのコンビニ店員に恋をする 〜完〜