テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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LINE１３２７

第1話 - あ

2023年11月16日

#スカッと

タナカトシキ

ユウ

いつまでだらけてんだよ

ユウ

俺が仕事で汗水流してる間も、そうやってゴロゴロしてんのか？

ユウ

マジでいいご身分だな

ユウ

食器洗うのは俺がやれってか？ふざけんなよ

ユウ

なんで仕事の上に家事までやらなきゃいけないんだ

コトミ

悪いとは思ってるよ

コトミ

でも、つわりがしんどくて動けないのよ

コトミ

そんな中、家事も精いっぱいやってるじゃない。毎日食事作って、掃除も洗濯もしてるわ

ユウ

ほー？精一杯？これが？

ユウ

食事に冷凍食品と総菜が入ってたじゃないか。掃除も埃が残ってるし

ユウ

こんなんで家事やってるだなんて威張れるんだから、

ユウ

やっぱりいい御身分じゃないか

コトミ

具合が悪い私には、これが精いっぱいなのよ

ユウ

はいはい、またその言い訳

ユウ

女はいいですねー

ユウ

女は子供を産むから偉い！気遣え！って威張ってれば、ゴロゴロしてても許されるんだからよ

ユウ

外で稼いでる俺は偉くないんですねー

コトミ

別にそんなこと言ってないじゃない！

ユウ

いーや、間違いなくそう思って甘えてるはずだ。だからそんな風に開き直ってるんだ

ユウ

そんなお前を躾け直すために、お袋と同居を決めた

コトミ

えっ！

ユウ

喜べｗ家事の負担がちょっとは減るぞ！

ユウ

その代わり、お前はお袋を見習って、お袋に躾け直してもらえ。お袋の家事は昔から完璧だからな！

コトミ

嘘でしょ…私、お互い気遣うから同居はしたくないって結婚前に言ったじゃない！

コトミ

それなのに、こんなことを相談もなしに勝手に決めるなんて…

ユウ

悪く思うなよ

ユウ

家事も満足にできないお前が悪いんだからな。先に俺を裏切ったのはお前の方だ

ユウ

お袋も、『そんな嫁は徹底的に嫁いびりしてやる』って息巻いてるぞｗ

コトミ

そんな…悪夢だわ…

～翌日～

トモコ

コトミさん、ユウから話は聞いてるかしら

トモコ

私、そっちに住むことになったからね

トモコ

これから嫁いびりに来てやるから、覚悟しなさいｗ

コトミ

えっ！これからですか！？

コトミ

すみません、今散らかってて、掃除してるんですけど、もう少し待っていただけますか？

トモコ

まぁっ掃除！？

トモコ

ダメよ！そんなの私がやるわ！

コトミ

え？

トモコ

役立たずの嫁は、じっと寝て休んでなさい！

トモコ

あなたに子供を産む以上のことは期待してないからねｗ

コトミ

でも…

トモコ

ほらほら、掃除をやめて大人しくしなさい。これは姑命令だよ

トモコ

散らかってる方が、嫁いびりのし甲斐があるからねｗ

トモコ

私の手で家が綺麗になっていくのを、指をくわえて見てなさいｗ

～一ヶ月後～

ユウ

一時はどうなることかと思ったが、意外とお袋と上手くやってるじゃねぇか

ユウ

だけど、まだまだお袋の躾が足りないようだな

ユウ

なんだよ今日のメシ

ユウ

また冷凍食品が入ってるじゃないか

ユウ

掃除だって、また部屋の隅に埃があったぞ。手抜きしやがって。このことも、お袋にチクるからな

ユウ

たっぷりいびられてこいよ

コトミ

望むところよ！

コトミ

お義母さんの嫁いびり、サイコ～！

ユウ

へ？

ユウ

嫁いびりが最高って…お前、頭おかしくなったのか？もしくは俺を挑発してるのか？

コトミ

そんなことないわよ～

コトミ

掃除も料理も殆どお義母さんがやってくれて、連日夫の実家の味というものを見せてくれて、

コトミ

役立たずの嫁は無理せずゴロゴロしてますｗ

コトミ

布団まで敷いてくださるし、時々一緒にお茶もしてくれる

コトミ

こんな嫁いびりなら毎日だって受けたいよね～ｗ

コトミ

あの時は悪夢だと思ったけど、お義母さんを同居させてくれてありがとうｗ

ユウ

はぁ！？お前、全部お袋に家事を押し付けてたのかよ！

ユウ

最低だな！！

コトミ

いいえ、これはお義母さん命令よ

コトミ

私は役立たずのダメ嫁だから、家事なんてしても

コトミ

かえって迷惑になるんだってｗ

コトミ

だから、ぜーんぶ強引にお義母さんがやっちゃうのよ

コトミ

ダメ嫁には元気な子供を産むしか期待してないから、

コトミ

無理せずゴロゴロしてなさい、というのがお義母さんの言葉なの

コトミ

『嫁は姑を立ててなさい、せっかく敷いた布団を無駄にするんじゃないよ』って

ユウ

え？じゃあここんところの家事は、

ユウ

全部お袋がやってたってことか…？

コトミ

そういうこと

コトミ

家事を完璧にこなせるお義母さんだもの

コトミ

私の家事との違いは一目瞭然でしょｗ

ユウ

いや、全然違いに気付かなかったんだけど…

コトミ

あらそう？

コトミ

お義母さんの家事は私と違って完璧なはずなのに、おかしいなー

コトミ

もしかして、私の家事もお義母さんと遜色ないくらい完璧ってこと？

コトミ

嬉しいな～！

ユウ

嘘だろ…

ユウ

じゃあこの、冷凍食品が入ってる食事も、

ユウ

お袋の作ったやつだって言うのか…？

コトミ

そうよ

ユウ

お、お前がお袋に手抜きを教え込んだんだな！

ユウ

お袋は冷凍食品や惣菜なんて使わなかった！

ユウ

お前が上手いこと言って教えたとしか思えない！

ユウ

お袋の味を汚しやがって。お前のせいだ！

コトミ

はぁ？私はそんなことしてないわよ

コトミ

そうそう、このLINEお義母さんも見てるから

ユウ

え？

コトミ

お義母さんがあなたと話したがってるから、応えてあげたら？

～ユウとトモコのLINE～

トモコ

私の家事はお気に召さなかったのかしら？手抜きで悪かったわねぇ

ユウ

いや、その…

トモコ

コトミさんが私を言いくるめたから、手抜き料理になったんだって？

トモコ

私は嫁に言いくるめられるほどボケちゃいないよ

トモコ

舐めるんじゃない！

ユウ

だ、だってお袋、冷凍食品や惣菜なんか一切使ってなかったじゃないか！

ユウ

いつだって手作りで、おいしい料理を作ってくれて…

トモコ

何言ってるんだい。普通に使ってたよ

ユウ

へ？

トモコ

今日使ったのは、お前を育てていたころに頼っていたのとまったく同じメーカーの冷凍食品だよ

トモコ

そして、お前はそれをおいしい、おいしいと言って食べていた

ユウ

嘘だろ…

トモコ

掃除だってそうだよ

トモコ

ヤンチャ盛りの子供がいるのに、細かい埃まで気にしてられるかい

トモコ

散らかったままということもよくあったよ

ユウ

そんな…

トモコ

私なりにコトミさんに代わって、

トモコ

全力で家事をしたつもりだよ

トモコ

それが手抜き家事、とねぇ

トモコ

しかもコトミさんの普段の家事と区別がつかなかったそうじゃないか

トモコ

これはつまり、コトミさんの普段の家事も

トモコ

そう悪くないってことじゃないのかい？

ユウ

そ、それは…

トモコ

まぁ、子供の頃の記憶が美化されたんだろうねぇ

トモコ

だけど、コトミさんは何より今、妊娠してるんだ

トモコ

私が来るまで重いお腹を抱えて、つわりに苦しみながら、精一杯家事をしてたんだよ

トモコ

それも、お前が少しでも満足するように、

トモコ

お前が文句を言わないように、お前の為にこなしてたんだ

トモコ

それに感謝するどころか、手抜きだと言って詰るとか、

トモコ

私はお前が情けないよ、このダメ息子！

ユウ

ひぃっ

トモコ

いいかい？お前を妊娠していたころは、

トモコ

あの仕事人間な父さんでさえ、出来る限り家事を手伝ってくれたし、

トモコ

私の家事に文句をつけたこともなかったよ

トモコ

勿論、私も父さんの稼ぎなどに文句を言ったことはなかった

トモコ

相手に任せた以上は、文句を言わないのが筋じゃないのかい

ユウ

で、でもコトミは専業主婦なんだ！

ユウ

俺が養ってやってる以上、従って当然じゃないか！

トモコ

じゃああんたは、コトミさんが仕事をやめて

トモコ

専業主婦になった理由を知らないわけじゃないよね？

トモコ

あんただって、賛成してたはずじゃないか

トモコ

他でもない、あんたの子供を産んで育てるためなんだから！

トモコ

つわりや体調不良の苦しみに休みなく耐えながら、子供をお腹の中で十月十日も育てて産む

トモコ

それが、母親に全面的に任されたことなんだよ！

トモコ

それ以上の何を望むんだい！

ユウ

だ、だから偉いって言うのかよ！

トモコ

あぁ、偉いよ！

トモコ

大体ね、子供が生まれたら今の調子で手抜きだ何だと言ってられなくなるんだよ

トモコ

子供はすぐに散らかすし、家事の邪魔はするし、じっとしていないし、

トモコ

手の込んだ料理よりレトルト食品の方が喜ぶ始末だ

トモコ

そんな時にお前みたいな『産んだ覚えのない長男』の言うことなんて、

トモコ

耳を傾けていられないんだよ

トモコ

それに、子育ては二人の仕事でもある

トモコ

嫁に甘えて文句付けてるお前に、

トモコ

父親になる覚悟はあるのかい！？

ユウ

子育ては嫁の仕事だろ！

ユウ

だって専業主婦なんだから…

トモコ

何言ってるんだい！あんたの子でもあるんだよ！

トモコ

専業主婦の奥さんの方がより多く家事育児を担うのは仕方ない

トモコ

それでも、父親であるあんたの仕事でもあるんだよ！

トモコ

まったく、あんたの方を躾け直さなきゃいけないようだね

トモコ

治す気がないようなら、私はコトミさんに離婚を勧めるわ

ユウ

り、離婚！？

トモコ

えぇ。できるだけコトミさんが有利な条件で離婚できるように、優秀な弁護士も紹介するわ

トモコ

今のお前は、コトミさんの心労の原因にしかならないようだからね

ユウ

そんな、お袋は俺の母親だろ！

トモコ

母親だからこそ、息子の不始末の責任を取らなきゃいけないんだよ！

トモコ

それに、大事な孫にも悪影響だ

ユウ

わ、わかった！これからはコトミの家事に文句は言わない！

ユウ

家事だってできるだけやるし、コトミの体調も気遣う！

ユウ

だから、離婚なんてさせないでくれ！！頼む！！

トモコ

よろしい。あとでコトミさんにそう言って謝りなさい

ユウ

はい…

トモコ

正直言って、嫁いびりしてやると言ってみた私にユウが喜ぶのを見てから、

トモコ

お前には心底失望していたよ

トモコ

だから、私が家事をやってコトミさんの負担をなくしてやることにしたんだ

ユウ

お袋、最初から嫁いびりする気なんかなかったのかよ…

トモコ

まぁ、コトミさんがどんな人なのかはちゃんと同居して見ておくつもりだったけどね

トモコ

そして私が見た限り、やっぱり問題があるのはお前だけだったよ

トモコ

むしろコトミさんはお前にはできすぎたお嫁さんだよ

ユウ

俺の味方みたいなこと言ったのは…

トモコ

その方が、よりお前の本性を知れると思ったからね

トモコ

お前が私に言った、離婚のときにコトミさんが有利になるような言葉も、

トモコ

たっぷり証拠として取っておいたよ

ユウ

嘘だろもう勘弁してください…

トモコ

もうしばらくは同居して、お前を叩き直すからね

トモコ

それから、このLINEの内容コトミさんには内緒にしてちょうだい

ユウ

え、なんで…

トモコ

照れくさいからよ！

トモコ

私素直じゃないから、普段コトミさんには憎まれ口ばかり叩いちゃってるし…とにかく頼むわよ！

～後日談～

コトミ

お義母さんはこう言っていますが、

コトミ

私は後ろから、LINEの内容をしっかり見てしまっていました（笑）

コトミ

その後、夫は私に土下座で謝ってくれました

コトミ

今では私とお義母さんの指導の下、少しずつ家事を率先してやってくれるようになり、

コトミ

私の体調も気遣ってくれるようになりました

コトミ

お義母さんは

コトミ

『ダメ嫁とダメ息子が心配だから、子育ての様子を見るまではこの家を離れられないわ』

コトミ

と言ってくれています

コトミ

『ここまでしてやったんだから、孫の顔くらい早く見る権利があるはずよ』とも…

コトミ

私としては、もうずーっと同居してもらいたいし、

コトミ

お義母さんにもそう伝えているんですけどね（笑）

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タナカトシキ

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