その晩はずっと彼の腕の中にいた。
幸せなひと時だった。
波華
波華
波華
竜胆
波華
ふと、昨晩の彼を思い出す。
私の名前を何度も呼んでいた。
いつもとは違う、雄の目付きだった。
そんなところも愛おしかった。
彼の寝顔をなぞる。
顔にかかっていた髪の毛をそっと避け、頬に触れた。
暖かい。
波華
竜胆
竜胆
竜胆
波華
波華
竜胆
竜胆
竜胆
波華
竜胆
波華
幸せだった。
心の底から、叫びたかった。
私は幸せだ、と。
季節は10月に周り、肌寒くなった。
残りはあと1か月と少し。
そんな今日は、彼女の誕生日だった。
竜胆
波華
波華
竜胆
波華
波華
竜胆
竜胆
波華
竜胆
竜胆
波華
波華
竜胆
竜胆
竜胆
波華
そうやってはしゃぐ君の横顔が綺麗だった。
しかし、敢えて告げないことを選んだ。
もうすぐこの世から消えるのだ。
少しずつ準備をしていこう、と思った。
心も体も。
竜胆
波華
竜胆
波華
竜胆
波華
竜胆
竜胆
竜胆
波華
竜胆
波華
彼は早足で部屋を出ていった。
彼のことだから、きっとまた何か用意してくれているのだろう。
何にせよ、その気持ちだけでも十分お腹がいっぱいだった。
今日は10月17日。
残りはあと44日。
近頃、彼はほっとしたように笑う。
その笑顔を見る度、私はどきりとする。
竜胆
竜胆
波華
波華
波華
竜胆
波華
波華
竜胆
竜胆
波華
波華
波華
竜胆
波華
波華
''カシャ''
シャッター音が鳴り響いた。
その翌日だった。
とある商店街で買い物をしていた。
竜胆
波華
俺は、体の向きを変えて彼女の顔を覗き込んだ。
その時だった。
偶然見てしまったのだ。
10mほど先にいる黒い男がナイフを握っていた。
その男は、大股でこちらに向かってくる。
竜胆
竜胆
竜胆
波華
波華
俺は彼女の手を引いて走った。
しかし、そう走らない内に彼女が立ち止まった。
波華
波華
竜胆
慌てて後ろを振り向くと、男はすぐそこまで迫っていた。
竜胆
波華
竜胆
竜胆
俺は男に向かって走った。
そして、
一蹴りした。
幸い、男はすぐに倒れ込んだ。
男の手からナイフが音を立てて落ちる。
人々が立ち止まって騒ぎ立てる。
彼女を見ると、耳に当てたスマホを持つ手が震えていた。
あの後、すぐに警察が駆けつけて男は逮捕された。
稲見の手下だったという。
俺達は、あの海岸に来た。
彼女は依然、黙っている。
何かをぐっと思い閉ざしている。
竜胆
竜胆
波華
波華
波華
波華
波華
竜胆
波華
波華
波華
竜胆
そう言って、彼女の細い肩を抱き寄せた。
彼女もそっと手を回す。
波華
波華
竜胆
竜胆
その時だ。
心臓が嫌な音を立てて鳴った。
ほとんど確信に近いものを得ていた。
竜胆
竜胆
彼女から離れ、左腕を見た。
そこには、刻まれていたはずの時間がなかった。
腕時計が、なくなっていた。
あぁ、そうか。
俺は、彼女を守ると誓ったんだ。
きっと、守りきれたんだ。
いや、実際はそうでは無いかもしれないが。
やるべきことを果たしたんだ。
俺はその瞬間、どんな笑みを浮かべたのだろうか。
彼女が何かを察したような顔を向けた。
波華
竜胆
竜胆
竜胆
波華
竜胆
波華
波華
波華
竜胆
竜胆
波華
波華
波華
そう言って彼女は涙を流し、俺に抱きついた。
それは、その細い体では考えられないほどの力だった。
竜胆
竜胆
波華
竜胆
波華
竜胆
竜胆
竜胆
波華
波華
波華
竜胆
竜胆
波華
竜胆
竜胆
そして、最後の海を重ねて最後のキスをした。
夕日が沈みかかっていた。
竜胆
波華
竜胆
竜胆
竜胆
波華
竜胆
竜胆
竜胆
波華
竜胆
竜胆
竜胆
波華
波華
波華
波華
波華
波華
竜胆
その瞬間、体がすぅっと軽くなったような気がした。
ついにその時が来たのか。
最後に呟いた。
竜胆
最後、彼女がどんな顔をしていたのかは分からなかった。
潮の音が聞こえ、無に帰した。
彼は日没と一緒に消えた。
確かにそこにあった温もりが一瞬にして無くなった。
酷い虚無感と喪失感が一気として私を支配する。
''バイバイ''
彼は最後、そう言った。
違う、そうじゃない。
私の追憶の中で彼は生き続ける。
私は、星が輝き初める海岸で独り泣いた。
波華
波華
波華
波華
波華
私が彼を忘れたら、、忘れてしまったら、他に誰が彼を語ってくれるものだろうか。
神様、どうか私の記憶だけは残してください。
これが私に示せる、精一杯の彼への感謝です。
心の中で何度も何度も祈った。
心無しか、まだ肌に、砂浜に彼の温もりが残っている気がした。
ー数年後ー
私は新人刑事として働いていた。
あの海岸は整備された。
しかし、不思議と人足が少ないのだ。
10月の半ば、この時期になると何故かここへ来たくなる。
何故だろうか。
そして、アイビーの花束が無性に欲しくなる。
いつか、誰だっただろうか、教えてくれたのは。
アイビーの花言葉は、''死んでも離れない''だ、と。
波華
波華
この時期になると、鼓動の早まりと虚しさが収まらないのだ。
何かを失ったような、無くしたような気持ちに襲われる。
しかし、同時に愛おしい気持ちにも包まれる。
ふと、水平線に目を向けると、そこには沈みかけた夕日が居た。
波華
潮風にあたりながら、髪をなびかせた。
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
コメント
7件
夢小説で初めて泣きました!最高です!
好 き す ぎ た … 主 さ ん 語 彙 力 あ り す ぎ な い ! ? っ て 思 っ た と こ ば っ か で 参 考 に な り ま し た … ち な み に ア イ ビ ー の 花 言 葉 も う 1 つ は 『永遠の愛』だ っ た 気 が🤭