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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

 その晩はずっと彼の腕の中にいた。

幸せなひと時だった。

波華

ん、、、

波華

りんちゃーん、、

波華

おはよ

竜胆

すぅーすぅー

波華

ふふっ

ふと、昨晩の彼を思い出す。

私の名前を何度も呼んでいた。

いつもとは違う、雄の目付きだった。

そんなところも愛おしかった。

彼の寝顔をなぞる。

顔にかかっていた髪の毛をそっと避け、頬に触れた。

暖かい。

波華

大好き、、

竜胆

、、、

竜胆

ふふっ

竜胆

おはよ

波華

、、へ?!

波華

起きてた、、の、、?!

竜胆

うん

竜胆

何も着てない波華が貴重すぎて、、

竜胆

ずっと見てたかった

波華

ちょっと、、!///

竜胆

俺も大好きだよ

波華

、、、、///

幸せだった。

心の底から、叫びたかった。

私は幸せだ、と。

 季節は10月に周り、肌寒くなった。

残りはあと1か月と少し。

そんな今日は、彼女の誕生日だった。

竜胆

紅葉綺麗だね〜!

波華

ね〜

波華

春は桜が綺麗なんだよ〜

竜胆

そっか、、

波華

あ、、、

波華

ごめん😅

竜胆

大丈夫

竜胆

それより、、

波華

ん?

竜胆

ハッピーバースデー!!

竜胆

17?

波華

うん!ありがと!

波華

覚えててくれたんだね^^

竜胆

そりゃあ

竜胆

よし、

竜胆

ケーキ買いに行こ!

波華

お、行こ行こ!

そうやってはしゃぐ君の横顔が綺麗だった。

しかし、敢えて告げないことを選んだ。

もうすぐこの世から消えるのだ。

少しずつ準備をしていこう、と思った。

心も体も。

 

竜胆

、、、

波華

、、、

竜胆

ふぅ〜

波華

食べたね、、

竜胆

めっちゃ食べた、、

波華

2人分には大きかったね、あのケーキ

竜胆

そうだね笑

竜胆

さて、、と、

竜胆

波華、ちょっとここで立って待ってて

波華

え?あ、、うん

竜胆

振り向いていいよ、って言うまで振り向いちゃダメだよ

波華

わかった、、

彼は早足で部屋を出ていった。

彼のことだから、きっとまた何か用意してくれているのだろう。

何にせよ、その気持ちだけでも十分お腹がいっぱいだった。

今日は10月17日。

残りはあと44日。

近頃、彼はほっとしたように笑う。

その笑顔を見る度、私はどきりとする。

竜胆

おまたせ!

竜胆

こっち向いて?

波華

クルッ

波華

え?!

波華

花束、、、?!

竜胆

そぉ!

波華

綺麗、、!

波華

ありがと!!

竜胆

綺麗でしょ

竜胆

アイビーって花なんだ

波華

へぇ、、、

波華

可愛い、、

波華

ねぇ、一緒に写真撮ろうよ!

竜胆

お、いーね

波華

はーい

波華

いくよ、はいチーズ!

''カシャ''

シャッター音が鳴り響いた。

その翌日だった。

とある商店街で買い物をしていた。

竜胆

あとは、どこ行く?

波華

どーしよっかな、、

俺は、体の向きを変えて彼女の顔を覗き込んだ。

その時だった。

偶然見てしまったのだ。

10mほど先にいる黒い男がナイフを握っていた。

その男は、大股でこちらに向かってくる。

竜胆

、、、?!

竜胆

波華、、

竜胆

ちょっと走ろ、、

波華

え、、?

波華

なんでっ、、て、、

俺は彼女の手を引いて走った。

しかし、そう走らない内に彼女が立ち止まった。

波華

ねぇ、りんちゃん!

波華

なに?どうしたの?

竜胆

、、、、

慌てて後ろを振り向くと、男はすぐそこまで迫っていた。

竜胆

警察に電話して、、、!

波華

なん、、

竜胆

いいから、、!

竜胆

ここに居て。

俺は男に向かって走った。

そして、

一蹴りした。

幸い、男はすぐに倒れ込んだ。

男の手からナイフが音を立てて落ちる。

人々が立ち止まって騒ぎ立てる。

彼女を見ると、耳に当てたスマホを持つ手が震えていた。

あの後、すぐに警察が駆けつけて男は逮捕された。

稲見の手下だったという。

俺達は、あの海岸に来た。

彼女は依然、黙っている。

何かをぐっと思い閉ざしている。

竜胆

怖かったよね、、

竜胆

ごめん

波華

大丈夫、、、

波華

ただ驚いただけだから、、

波華

まだ終わってなかったなんて、、

波華

思いもしなかった。

波華

怖かった、、、

竜胆

っ、、、

波華

りんちゃんが向かっていった時、

波華

また大切な人を失いそうで

波華

怖かった、、、

竜胆

ごめんね、、、

そう言って、彼女の細い肩を抱き寄せた。

彼女もそっと手を回す。

波華

、、、

波華

愛してる、、、、

竜胆

うん、、

竜胆

俺も愛してるよ、、

その時だ。

心臓が嫌な音を立てて鳴った。

ほとんど確信に近いものを得ていた。

竜胆

っ、ごめん、

竜胆

ちょっと、、

彼女から離れ、左腕を見た。

そこには、刻まれていたはずの時間がなかった。

腕時計が、なくなっていた。

あぁ、そうか。

 俺は、彼女を守ると誓ったんだ。

きっと、守りきれたんだ。

 いや、実際はそうでは無いかもしれないが。

やるべきことを果たしたんだ。

俺はその瞬間、どんな笑みを浮かべたのだろうか。

彼女が何かを察したような顔を向けた。

波華

どうかした、、、?

竜胆

、、、

竜胆

腕時計が、、

竜胆

無くなったんだ、、

波華

、、え、、、??、

竜胆

消えるんだ、もう ´`*

波華

なんで、どうして、、

波華

急に、、

波華

そんなの、、ないよ、、

竜胆

仕方ないよ、、

竜胆

いつかはこうなる運命だったんだ

波華

でも、、

波華

ねぇやだ

波華

いかないでっ、、!!

そう言って彼女は涙を流し、俺に抱きついた。

それは、その細い体では考えられないほどの力だった。

竜胆

波華、、

竜胆

聞いて、、、?

波華

、、うん、、

竜胆

昨日あげたアイビーの花言葉、知ってる、、、?

波華

、、わからない、、

竜胆

アイビーの花言葉は

竜胆

''死んでも離れない''

竜胆

なんだって。

波華

りんちゃ、、ぅぅ''っ、、

波華

や''だ

波華

そんな、、こと、、言わないで

竜胆

ほら、涙拭いて。

竜胆

ちゃんと顔見せて、、?

波華

ぅ''っぐっ、、

竜胆

笑って、、?

竜胆

大好きだよ、、、

そして、最後の海を重ねて最後のキスをした。

夕日が沈みかかっていた。

竜胆

あのね、、

波華

、、う、、ん、、

竜胆

波華と居られて、俺は幸せだったよ。

竜胆

だから、今度は

竜胆

俺の事なんか忘れて、君が幸せになってね

波華

りんちゃんが居ない幸せなんて考えられないよ、、

竜胆

そんなことないよ´`*

竜胆

今まででありがとう

竜胆

本当にありがとう

波華

やめて、、

竜胆

、、

竜胆

大好きだよ

竜胆

世界で1番大好き。

波華

ぅぅぁああ''ぁ、、

波華

わた、、し、、も、、

波華

大好き、、

波華

あり、、が、、とう、、

波華

私も、、幸せだった、、よ、

波華

大好き。何よりも。

竜胆

うん、、

その瞬間、体がすぅっと軽くなったような気がした。

ついにその時が来たのか。

最後に呟いた。

竜胆

ばいばい、、

最後、彼女がどんな顔をしていたのかは分からなかった。

潮の音が聞こえ、無に帰した。

彼は日没と一緒に消えた。

確かにそこにあった温もりが一瞬にして無くなった。

酷い虚無感と喪失感が一気として私を支配する。

''バイバイ''

彼は最後、そう言った。

違う、そうじゃない。

私の追憶の中で彼は生き続ける。

私は、星が輝き初める海岸で独り泣いた。

波華

ぅう''ぁぁああぁ''

波華

ぁぁ''ぅう''

波華

忘れない、、

波華

絶対に忘れない、、

波華

誓う、、、

私が彼を忘れたら、、忘れてしまったら、他に誰が彼を語ってくれるものだろうか。

神様、どうか私の記憶だけは残してください。

これが私に示せる、精一杯の彼への感謝です。

心の中で何度も何度も祈った。

心無しか、まだ肌に、砂浜に彼の温もりが残っている気がした。

ー数年後ー

私は新人刑事として働いていた。

あの海岸は整備された。

しかし、不思議と人足が少ないのだ。

10月の半ば、この時期になると何故かここへ来たくなる。

何故だろうか。

そして、アイビーの花束が無性に欲しくなる。

いつか、誰だっただろうか、教えてくれたのは。

アイビーの花言葉は、''死んでも離れない''だ、と。

波華

誰だっけ、、

波華

不思議、、、

この時期になると、鼓動の早まりと虚しさが収まらないのだ。

何かを失ったような、無くしたような気持ちに襲われる。

 しかし、同時に愛おしい気持ちにも包まれる。

ふと、水平線に目を向けると、そこには沈みかけた夕日が居た。

波華

綺麗、、、

潮風にあたりながら、髪をなびかせた。

、、、、、、

完結、、、です、、

まずは、

最後まで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます!!

感謝でいっぱいです。

最終話、長くなってしまって申し訳ないです🥲🥲

いやー、、、

ついに完結ですよ、、、

今回は本当にやりきった感がすごいです。

手を込めて込めまくってたので、、

正直、終わっちゃうのがすごく寂しいです🥲🥲

私もこのお話に愛着が湧いてしまって笑

本当に寂しいです

波華、、さらばじゃ

ってことで、

本当に最後までお付き合いしてくださって、ありがとうございます!

次のお話はいつ書くかとか、全然決まってないんですが、

頑張りますね!

ありがとうございました〜!!

この作品はいかがでしたか?

1,009

コメント

7

ユーザー

夢小説で初めて泣きました!最高です!

ユーザー

好 き す ぎ た … 主 さ ん 語 彙 力 あ り す ぎ な い ! ? っ て 思 っ た と こ ば っ か で 参 考 に な り ま し た … ち な み に ア イ ビ ー の 花 言 葉 も う 1 つ は 『永遠の愛』だ っ た 気 が🤭

ユーザー
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