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いじめっ子
放課後、いきなり水をかけられた。
いじめっ子
女子は私をいじめるのが楽しいみたいだ。 男子たちはそれをいつも見て見ぬふりする。
濡れたままで一目散に家に帰った。
二階の自分の部屋に駆け上がり、ジャージに着替えてテレビをつける。 そこには私の推し、『のんたん』が映っていた。
雫
私の日課は、学校から帰ってすぐにのんたんのライブビデオを観ること。
のんたん
自己紹介は何度聞いても飽きない。
のんたん
雫
のんたん
雫
のんたんのフルネームを知らないなんて本当のファンとは言えない。
のんたん
このライブビデオを観るのは実に三十回目。 のんたんはいつだって笑顔を絶やさない。こんな天使が他にいるだろうか。
翌日の夜九時、私は塾帰りの路地裏でのんたんの歌を聴きながら歩いていた。
男
絶対について行ってはいけない人だ。
雫
男
男は私の腕を掴んで無理やり連れて行こうとした。
雫
涙目で訴えても聞いてくれない、もう無理だと思ったその時。
???
フードを目深にかぶった男性のような、女性?
男
男はフードの人を見るや否や私の腕から手を離し、 両手を上げて何事もないように振る舞った。
???
男
男性たちは路地裏を猫のように駆けていった。 フードの人は私に近づいてきて、 フードの下から少しだけ覗いている瞳をこちらに向けた。
???
声はわざと低く作っているような感じで、 背は私と同じくらいで少し小柄だ。 そしてこの瞳と雰囲気、私はこの人を知っている。
雫
思わず口にしてしまった私の言葉に、 フードの人は去ろうとしていた足をぴたっと止めた。
???
雫
???
雫
私たちは会話もないまま歩き続けた。 ひらけた道に出ると、そこには黒いバンが止まっていた。 フードの人が後部座席に乗り込むと、 手招きをして「乗れ」と私に合図を送ってきた。
そこから約二十分ほどで怪しげな豪邸にたどり着いた。 車を降りてそのままついていくと広いリビングに案内される。
フードの人はふかふかのソファーに腰掛けた。
???
のんたんとは全く違う姿なのに何故かのんたんだと思ってしまう。
雫
フードの人は深いため息をしてから部屋を出ていった。 ほったらかしにされること約二十分、 ドアを開けて部屋に入ってきたのは、 間違いなくいつも見ているのんたんだった。
雫
のんたん
のんたんはゆっくり私に歩み寄り、両手をぎゅっと握る
のんたん
いつも見ている笑顔だけど目が笑っていない。
雫
のんたん
雫
のんたん
雫
のんたん
一通り話し終えると、のんたんは時計を見た。
のんたん
私はお言葉に甘えて家まで送ってもらった。
翌日、先生が転校生を紹介すると言って、 教室に入ってきたのは制服姿ののんたんだった。 教室の外にはカメラが一台待機している。
のんたん
教室中がざわざわしている。
放課後、のんたんは私が帰ろうとする姿を見て真っ先に駆けつけてきた。
のんたん
私は周りを見た。
いじめっ子
ああ、嫌な声が聞こえる。
のんたん
私たちは外に出るまで一言も喋らなかった。
雫
のんたん
その言葉は私の胸に一直線に突き刺さった。
のんたん
希ちゃんは私を励まし、 次の仕事があると言ってすぐに行ってしまった。
塾の帰り、路地裏は避けてなるべく明るい道を通って帰っていた。 ふと後ろに気配を感じ、期待を膨らませて振り返った。 でもそこにいたのは希ちゃんではなかった。
いじめっ子
笑顔を浮かべ意味のわからない理屈で私を突き飛ばしてきた。 後ろは下りの階段、落ちかけた私の体を支えたのは、 フードを目深にかぶった希ちゃんだった。
希
耳元で囁く言葉に私は安心した。相手は希ちゃんだと気づいていないようだ。
希
希ちゃんは私を優しく階段に座らせた後、 逃げようとしていたいじめっ子を捕まえ、 うつ伏せの状態で手を後ろで拘束し、 いじめっ子を地面に押さえつけた。
いじめっ子
希
いじめっ子
希
希ちゃんは内緒にしてきた姿をついに晒してしまった。
雫
私の言葉に反応して希ちゃんは押さえつけるのをやめた。
いじめっ子
いじめっ子は逃げていった。
雫
希
希ちゃんは私を家まで送ると、とぼとぼと一人帰っていった。
あの騒動以来いじめはなくなった、 というかいじめっ子が急に転校したのだ。 おかげで学校では平和に過ごせている。
雫
のんたん
私には気になることが一つだけあった。
雫
希ちゃんは私の質問に一瞬固まったけど、柔らかい笑顔で答えた。
のんたん
私の推しは、今では最高の友達としてそばにいる。