テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
背景は、イメージです。
俺は幼い頃から戦場で育った。
とても過酷だったのを覚えている。
10歳から戦場へ行き、戦っていた。本当に、生と死を隣に置いていた。
そして8年後の18歳の時に、戦争は幕を閉じた。
そして今では世界も発展し、昔みたいにな唸り声も何も聞こえず、ただ笑い声や、愉快に走って追いかけっこをしている子供も当然のようにいる。
そして俺は昔から人の"心"というものが分からない。
中也
静かな時間が流れる。
かつて耳を塞ぎたくなるほど響いていた銃声も、怒号も、今はない。
代わりにあるのは、風に揺れる木の葉の音と、遠くで弾む子供たちの笑い声。
中也
自分だけが、世界から取り残されているような感覚。生き残ったはずなのに、“生き方”だけが分からない。
人はなぜ笑うのか。なぜ怒り、なぜ泣き、なぜ誰かを想うのか。
戦場では単純だった。
敵か、味方か。
生きるか、死ぬか。
そこに“心”を考える余地なんてなかった。
中也
救われたはずの世界で、救われていない自分がいる。
そんな矛盾に、答えは出ない。
中也
ー面接ー
太宰
中也
太宰
書類を片手に、太宰は中也をじっと見る。
年齢、経歴、空白の多さ。
“戦争終結まで従軍”という一文に、ほんの一瞬だけ視線が止まった。
太宰
中也
どう答えればいいのか分からない。
“普通”が分からないのだから。
太宰
中也
太宰
中也
言葉が、そこで詰まる。
中也
太宰
太宰はペンをくるりと回し、椅子にもたれた。
軽い笑みを浮かべているが、その目は冗談を許さない色をしている。
太宰
中也
太宰
少し楽しそうに、太宰は笑った。
太宰
中也
太宰
机の上に、別の書類が置かれる。
そこには、表向きの会社名とは違う、別の内容が書かれていた。
太宰
中也
太宰
太宰は立ち上がり、中也の前に立つ。
視線が、真正面からぶつかる。
太宰
中也
太宰
少しだけ、声が低くなる。
太宰
沈黙。
風の音が、窓を揺らす。
中也
太宰
中也
胸の奥で、何かが微かに動いた。
戦場以来、感じたことのない感覚。
中也
太宰
中也
太宰は一瞬だけ目を見開き、すぐに笑った。
太宰
そう言って、手を差し出す。
太宰
中也
太宰
握手を交わした瞬間、
中也はまだ知らない。
この出会いが、“心が分からない男”と“心を知りすぎている男”の…逃げ場のない関係の始まりだということを。
主
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!