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第1話 - あ

2023年05月19日

#恋愛

結城真矢

アイ

レン！助けて！

レン

えっ？アイ？

アイ

追われてるの！早く！

アイ

子どもが誘拐されそうだから、匿って欲しいの！

レン

何だって言うんだ？今は夜中の2時だよ！

レン

それに、10年以上連絡をとってなかったのに

レン

急に匿ってくれなんて、何事だよ？

アイ

ずっと連絡をとっていなくて、ごめんなさい

アイ

急だっていうのは、分かってるの。

アイ

でも、頼れるのは、あなただけなの！

レン

でも、ずっと連絡をとっていなかった僕を

レン

どうして頼ってきたの？高校以来だよね？

アイ

ハルナは私とあなたの子供なの！

レン

何だって？

レン

そんな、馬鹿なことって･･･

アイ

今は説明している時間がないの！

レン

本当に誘拐犯に追われているのか？

アイ

本当よ！

アイ

２週間もハルナを連れて、あちこちを点々と移動してるの

アイ

もう私、どうしていいのか･･･

アイ

お願い、私たちを救うと思って！

ハルナ

お父さん、助けて！

ハルナ

悪い人たちに追われてるの！

アイ

今、どこに住んでるの？

レン

住んでるところは、高校から変わらないよ･･･

アイ

今から行くから、私たちを匿って！

レン

ちょっと、待ってくれよ

レン

僕は両親と同居してるんだよ

レン

急に僕の家に来られたら、両親への説明に困るよ

アイ

じゃあ、私たちはどうすればいいの？

アイ

ハルナはあなたの子供なのに･･･

アイ

誘拐されても、いいというの？

レン

まさか、そんなわけないじゃないか！

レン

しばらく、ビジネスホテルに潜伏してるというのは、どうかな？

アイ

でも、私は現金をほとんど持っていないの

レン

分かった。少しの間だったら、面倒みれるよ

アイ

ありがとう、感謝してるわ

～翌日～

レン

急に連絡して、ごめん

レン

高校の時にアイと付き合ってたレンだけど、覚えてる？

ナツキ

ああ、覚えてるわよ

ナツキ

アイが少しの間だけ付き合ってた彼氏ね？

レン

そうなんだ

レン

今でもアイと付き合いあるの？

ナツキ

ええ、今でも友達よ

レン

良かった。知りたいことがあって、連絡させてもらったんだ

レン

アイから誘拐犯に追われていると言われて

レン

今、アイと娘のハルカを匿ってるんだ

ナツキ

えー！誘拐？そんなの聞いてないわ！

レン

それで、本当に誘拐犯は存在してるんだろうか？

ナツキ

犯人が存在しないとしたら、どうなるの？

レン

例えば、自作自演とか？

ナツキ

まさかー。いくらなんでも、そんなことするかしら？

レン

「誘拐犯がいるなら、何故アイも逃げ回っているのかな？」

ナツキ

まったく分からないわ

ナツキ

アイの考えてることって、いつも私の想像の斜め上のへんにあるのよ

ナツキ

ところで、どうしてアイはあなたに匿われてるの？

レン

アイが娘は僕の子供だと言ってるんだよ

ナツキ

元の旦那さんの子供じゃ、なかったのかな？

レン

アイは僕の子供だと言い張ってるけど･･･

レン

僕は、違うんじゃないかと思うんだ

ナツキ

そうなんだ？

レン

大体、僕たちが別れたのはアイの浮気のせいだよ

レン

高2の夏休みから交際して、クリスマスに他の男との浮気現場に

レン

遭遇したから、別れたんだ

ナツキ

そうだったんだー。アイもひどいことするわね

ナツキ

でも、アイは相変わらず男癖が悪いよ

ナツキ

旦那と別れた原因は、アイの数々の浮気のせいよ

ナツキ

浮気相手が妻帯者で、慰謝料を請求されている上に

ナツキ

別れた旦那にも払わなければならないそうだわ

レン

えー、びっくりしたよ。そんなことになってたのか･･･

レン

アイに僕のことがずっと好きだったと言われたけど、どうも嘘っぽいよね

ナツキ

アイはそんなこと言ってるんだ…

ナツキ

友達だけど、怖い子よね

レン

僕から連絡があったてことを、アイには黙っててもらえない？

ナツキ

分かったわ

～翌日～

レン

聞きたいことがあるんだけどさー

レン

君は本当に誘拐犯に追われてるのかな？

レン

正直に答えてよ！

アイ

もちろん、本当だからあなたに匿ってもらってるんじゃない？

アイ

それに、ハルナはあなたの子供よ

アイ

このことは嘘じゃないわ！信じてよ！

アイ

ずっと、あなたのことを好きだったの

レン

それって、本当のこと？

レン

僕たちが付き合ってたのは高校２年の時の半年間で

レン

13年前なんだ。子供は10歳なんだろ？

レン

どう考えても、僕の子供だというのには無理があるんじゃないの？

アイ

ひどいわ！あなたの子供だって、言ってるのに！

アイ

ねぇ、私たちもう一度やり直せないかしら？

レン

えっ？なに言ってるんだよ

レン

僕には今付き合ってる彼女がいるんだから！

アイ

そんなの、別れたらいいじゃない！

アイ

私たちには子供だっているんだから！

レン

ちょっと、待ってくれよ

レン

これじゃ、話にならないね

レン

また、改めるよ

～翌日～

アイ

ねぇー、助けてよ

ナツキ

どうしたの？

アイ

不倫の慰謝料総額1000万円だって、弁護士に言われたの

アイ

どうしたらいいと思う？

ナツキ

そうねぇ、まずは働かないと返せないよ

アイ

今、誘拐犯に追われてるって言って、

アイ

元彼に匿ってもらってるの

ナツキ

本当に誘拐犯に追われているの？

アイ

いいえ。離婚した夫への慰謝料滞納しちゃってるから

アイ

逃げてるの

ナツキ

どうして、ハルナちゃんを連れて逃げてるの？

アイ

夫から親権を奪い取ろうと思って

アイ

考えてるところなの

ナツキ

まさか、とんでもないことを考えてるんじゃないよね？

アイ

元夫から、どうやったらお金を引き出せるのか

アイ

案をねってるのよ

アイ

慰謝料の支払いもあるし、私はお金を払いたくないのよね

ナツキ

だからと言って、誘拐犯をやってしまったら

ナツキ

犯罪じゃない？

ナツキ

そんなこと、止めなよ！

アイ

でも、まともに働いても1000万円は支払えないでしょ？

ナツキ

しばらく、待ってよ

ナツキ

いい考えが浮かぶかもしれないし･･･

アイ

分かったわ。長くは待てないけど

～翌日～

ナツキ

大変よ！

レン

どうかしたの？

ナツキ

あなたが考えていたとおりなの

ナツキ

アイが自作自演で誘拐犯をしようとしてるの！

レン

やっぱり、そうじゃないかと思ってたんだよ

レン

ハルナちゃんが誘拐犯に追われているのは分かるけど

レン

アイも一緒に逃げてるなんて言うから

レン

おかしいと思ってたんだ

ナツキ

どうするの？

ナツキ

このままじゃ、本当に自作自演の誘拐をしそうだわ！

レン

分かったよ。僕にも考えがあるんだ

レン

アイと接触を図って、アイがとんでもないことをしないように

レン

見張っていてはくれないだろうか？

ナツキ

分かったわ

レン

それから、アイがおかしなことをしようとしたら

レン

僕に逐一知らせてくれないだろうか？

ナツキ

あなたは大変なことになったわね

ナツキ

10数年も前に半年しか付き合っていないのに

ナツキ

そこまでしなきゃいけなくなるなんて･･･

ナツキ

人が良すぎるのも、考えものだわ

レン

仕方ないよ。乗りかかった船だと思うことにするよ

ナツキ

騙されないように、気を付けてね

レン

上手くいくことを祈っているよ

ナツキ

必要なものがあれば、言ってね

レン

君も変なことに加担しないようにね

ナツキ

そんなの当然よ！

～翌日～

レン

君、僕のことを騙しただろ？

レン

ハルナちゃんが僕の子供だって言って！

レン

まあ、付き合った時期とハルナちゃんの年齢に誤差があるから

レン

本気にはしてなかったけど･･･

アイ

どうして、そんなことを言うの？

アイ

ハルナはあなたの子供よ

アイ

もう、いいよ、そんな嘘、あり得ないんだから！

レン

噂を聞いたんだけど、君は随分借金があるそうだね

レン

君の相手は妻帯者が３人いたんだって？

レン

元旦那の慰謝料も足したら、1000万円だって聞いたよ

アイ

誰に聞いたの？そんなの嘘だわ！

レン

噂で聞いたって、言ったよね？

アイ

そんな嘘、信じないでよ！

アイ

あなたを愛してるの！私たち結婚して

アイ

もう一度やり直そう

レン

僕には好きな相手がいるんだから、無理だよ！

レン

それに君のことは、もうこれっぽっちも好きじゃないんだ

アイ

それじゃ、私たちどうすればいいの？

アイ

誘拐犯に追われ続けるなんて、無理があるわ

アイ

あなたに拒まれたら、もうどこへも行く所なんてないんだから！

レン

よく言うよね

レン

アイが誘拐犯だったんだな？

アイ

へっ？

レン

学校帰りのハルナちゃんをさらって、ずっと逃げ回ってるそうだね？

アイ

親権者は元旦那さんだそうじゃないか？

レン

どうして、そんなことをしたんだい？

アイ

ちょっとした、気の迷いなの

アイ

子どもがいれば養育費が手に入ると思ったから･･･

レン

だからって、誘拐は犯罪じゃないか？

アイ

分かってるけど、お金が欲しかったの

レン

そういえば、相当お金に困ってるんだってね

レン

でも、自業自得じゃないかな？

レン

すべては、君が浮気性だからじゃないか

アイ

そんなふうに言わないでよ！

レン

ハルナの実父は誰なんだ？

レン

僕の子供だなんて言ってるくらいだから、元旦那さんの子供

レン

じゃないんだろ？

アイ

バーで知り合った行きずりの男性で、名前も知らないの

レン

元旦那さんは、そのことを知ってるの？

アイ

知ってるわ。DNA鑑定をした結果、不一致だったの

アイ

だけどハルナのことを考えて、引き取る決意をしたと言っていたわ

レン

いい旦那さんじゃないか

～３日後～

アイ

どうして、私のことを警察に通報したの？

レン

子供を誘拐してるんだから、罪を償ってもらおうと思ってね

アイ

何のためにあなたに匿ってもらったか、分からないじゃない！

レン

確かに僕が警察に通報したけど、逮捕するかどうかは

レン

警察が決めることだからね

アイ

びっくりしたわ。ハルナを連れて公園をウロついているところに

アイ

警察が来て、連れ去られたんだから

レン

ハルナちゃんは無事、お父さんのところに戻されたそうだね

レン

君は未成年者誘拐罪で逮捕されたけど、仕方ないよね

レン

君の両親が身元引受人になってくれたよ

レン

執行猶予がつくみたいだけど･･･

アイ

頼る相手を間違えてしまったみたいね

レン

君はしばらく、塀の中で反省したほうがいいよ

アイ

大きなお世話よ！

レン

君は本当にまったく反省してないみたいだね

～一カ月後～

アイ

ちょっと相談があるの

レン

もう、塀から出たの？

アイ

止めてよ！とっくに釈放されたわよ！

レン

とこで、相談って？

アイ

慰謝料の1000万円を支払うために、朝から晩まで働いてるの

レン

仕方ないよね。そればっかりは･･･

アイ

葬儀場のご遺体搬送や新聞配達をして、稼いでるんだけど

アイ

まったくゴールが見えないのよね

レン

まだ返済を始めたばかりじゃないか？

アイ

私、返済ばかりの生活が嫌になってきたの

レン

君はまったく反省していないんだね

レン

塀の中で反省できたんだと思ったんだけど？

アイ

反省だなんて、私はそんなにひどいことをした？

アイ

私のほうが、みんなに騙されてきたんだから！

レン

しばらく、頭を冷やして冷静に考えてみたら？

レン

今まで自分がしてきたことをね

アイ

ひどい･･･

レン

僕に連絡してきても、どうすることもできないよ

アイ

助けてくれてもいいのに･･･

～後日談～

レン

アイはご遺体搬送中、急にキレてバックレた

レン

仕事はその時点でクビになったそうだ

レン

スーパーでパンを大量に万引きし

レン

別件逮捕され、再び塀の中へ

レン

噂によると、アイは軽犯罪を繰り返し

レン

塀から出ては入りと、無限ループに陥っているそうだ

レン

慰謝料もろくに返済できていないだろう

レン

僕はと言うと、以前から交際していた女性と社内結婚して

レン

幸せにくらしている

レン

夢はマイホームに住むことだ。あともうちょっとで、手が届きそうだ

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結城真矢

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