テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

なくしたあなた

一覧ページ

「なくしたあなた」のメインビジュアル

なくしたあなた

9 - Late night walk

♥

642

2023年12月09日

シェアするシェアする
報告する

家を出て人気のない公園につくと、俺達二人は公園のベンチに腰を掛けた。

歩いている間も、彼は涙を拭っていた。

少し彼が落ち着くまで待とうと思い、空を見上げる。

nk

…おぉ

俺は思わず声がもれた。

今夜は満月で、良く晴れて星もちらほら見えていた。

nk

……ほら、今夜は月が綺麗に見えるよ

彼にそう呼びかけると、俯いていた彼も俺と同様に空を見上げた。

kn

うん……綺麗だね

彼は少し笑って、答えた。

nk

…少しは、落ち着いた?

彼はぎこちなく頷いた。

nk

……なにか…俺に話したいことがあるの?

彼は俺の言葉を聞いて口をぎゅっと結び、再び俯くと ぽつりぽつりと話し始めた。

kn

なかむは……

kn

シャークんが他のメンバーと話してて、嫉妬したことはない?

意外な質問に少し驚きながら、俺は答えた。

nk

うーん……ないことは、ない

彼はそれを聞いて少し考え、また口を開く。

kn

じゃあ……もし、シャークんが…

kn

なかむと仲良く話すなかむの友達に嫉妬するあまり、その人に手を上げてしまったら……なかむはどうする?

nk

nk

えっと……

またしても彼の質問に俺は驚いた。

それに、きんときの質問の意図がなかなか見えてこない。

彼が何を伝えたくてこれらの質問をしているのかを考えながら、 俺はゆっくり答えた。

nk

まずは……反省してもらうべきかな

nk

俺に好意を抱いているってことは嬉しいけど、それで周りの人を攻撃してしまうのは、間違ってるから

kn

……

nk

あとは……俺にも、反省する点がある

nk

そこまで彼を思い詰めてしまう前に、俺が何か出来ることはあったはずだから

kn

……許せる?

nk

ん~……まぁ、そうかな

nk

反省していたとしたら、だけど

nk

それに、もし周りのみんなが彼を許さなかったとしたら……

nk

俺だけでも、彼を信じて支えなきゃって思うかな

nk

……恋人として、ね

kn

……そっか

その後は、しばらく沈黙が続いた。

彼がまだ話したいことがありそうな素振りだったので、 俺は彼が再び口を開くのを待った。

数分が経つと、彼は覚悟を決めた表情で、俺の方へ顔を向ける。

kn

なかむ、あのね……

kn

これをどう思うかは、なかむ次第…なんだけど、

kn

俺は今、正直に言うね

……なんだろう、俺は知らなくていいことを知ろうとしている気がする。

そんな嫌な予感がした。

kn

……この、感覚消失の出来事は……

何故今ここで感覚消失の話が出てくるのかがわからず、 俺の頭が混乱していると__

kn

全部、俺がやったことなんだ

肌を刺すような風が俺達の周りに吹いた気がした。

何かの冗談だと思った。

でも彼の真剣で辛そうな表情が、嘘をついているようには到底思えなかった。

驚きと困惑のあまり、声も出なかった。

kn

これは……嘘じゃないよ

彼は悲しそうに続けた。

kn

みんなの感覚がなくなってしまったのは、俺がやったから

kn

……まぁ、他のみんなもなっちゃったのは予想外だったんだけど、

kn

それでもやったのが俺っていうのは、紛れもない事実だ

nk

………

kn

……これは俺のエゴなんだけど、

kn

やってしまった後から罪悪感と後悔がきて、おかしくなりそうだった

kn

だから、なかむに全部話してしまった

kn

……ごめん

きんときの先程の質問の意図がだんだんとわかってきてしまっていた。

俺の心境を問うていたように思えた彼の質問は、 すべて自分のことだったのだ。

彼の最近の仕草や振る舞いにも、合点がいくような 行動がちらほらと浮かんだ。

nk

(今日具合が悪くなったのは……そういうことなのかな)

nk

……きんとき

nk

色々聞きたいことがあるんだけど……

kn

うん

nk

これは、治るの?他のみんなも……

俺は自分の鼻を指して言った。

kn

もどるよ

kn

何らかの異変は残ることなく、以前と同じように機能する

nk

どうやってやったの?

kn

それは……あまり、知らない方がいいかも

少しモヤっとしたが、俺はこの質問の回答にはあまり重要性がないと感じ、 次の質問を続けた。

nk

どうしてこんなことをやったのかは……言える?

kn

……

kn

それは、

先程までの質問にはほぼ即答で答えられていた彼だったが、 ここで言葉を詰まらせた。

kn

さっき、なかむにも同じようなことを聞いたけど……

kn

いろんな人とでも楽しそうに話す"彼"に…モヤモヤが募ってしまったから、だと思う

きんときは"彼"と名前を言わなかったが、その"彼"が 誰なのかはすぐにわかった。

kn

しょうがないことはわかってたし、俺もみんなが嫌いなわけじゃない

kn

でも……どうしても我慢ができなくて、

kn

……あの時は、俺は正気じゃなかった

kn

こんなことをやろうと考えて、実行しちゃったんだから

そう言って彼は、苦しそうに少し笑った。

彼は、誰にも話せなかった。

話せなくて、ここまで思い詰めてしまった。

nk

……さっきの質問には「恋人として」って答えたけど

nk

俺はお前の「大切な友達」として、支えてやるべきだった

nk

…気付いてやれなくて、ごめんな

nk

苦しかったね

俺がそう言うと、彼は再び泣いた。

彼は声が枯れるまで泣き続けた。

俺は彼が落ち着くまで、彼の背中をさすっていた。

彼が落ち着くと、そろそろ家に戻ることにした。

kn

感覚は、今日の朝には戻るようにする

nk

うん、そうだね

nk

……このこと、みんなには言う?

kn

……

彼は悩んでいた。

それもそうだろう、言えば今まで通りの生活ができるとは言いきれない。

……彼らなら、そんなに咎めることもなさそうだとは思うが。

nk

じゃあ、きんときが言いたくなったときにみんなに話そう

nk

そのタイミングはきんときの好きなようにしていい

彼は迷いながらも頷いた。

本当はできるだけ早くみんなに言った方がいいのかもしれないが、 今のきんときには精神面で難しそうだと感じた。

nk

もし言うときとかはまた俺が話聞くし、サポートもする

nk

それにきっと、みんなきんときを追い出すような真似なんてしないから

nk

だから、一人で抱えこまないで

kn

……ありがとう…

彼はまた泣き出しそうな表情で言った。

kn

…ごめんね…

nk

ごめんは、みんなに話す時に言お?

彼は手の甲で涙を拭って、頷いた。

nk

帰ろっか

kn

うん…!

彼は幾分か、心のわだかまりが溶けたようなすっきりとした表情で笑った。

この作品はいかがでしたか?

642

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚