冬樹
ただいま戻りました
悠楼
冬樹、またやったな
冬樹
…バレましたか
悠楼
人間の世界へ行くな。お前が耐えられるとは思えん
冬樹
そうですね。気をつけます
悠楼
暴走は抑えられているのか?
冬樹
はい。あの滝の水があればなんとか
悠楼
そうか
冬樹
それにしても、悠衣様は一体何者なんでしょうかねぇ
悠楼
それを探るのがお前の仕事だろう
冬樹
相変わらず扱いが雑なようで…
悠楼
お前も慣れただろう、もう10年以上一緒にいる
冬樹
そうですね
悠楼
(冬樹と出会ったのは俺が10の時だったか)
冬樹
悠楼様のお仕えとなります。冬樹です
悠楼
そうか
あの時は、ただの人だと思っていた
だが、違うということを冬樹から伝えに来た
冬樹
悠楼様。私は、邪弧への執着心があります
悠楼
…そうか
冬樹
驚かないんですか?
悠楼
祓いたいということだろ?
冬樹
あ、そっちではなく…
悠楼
邪弧喰か
冬樹
はい
かつて、俺たちの種族は人間が出す邪弧を好んでいた。好んでいたゆえに人間を奴隷にし、無理矢理邪弧を奪い取っていた
今ではその血も薄くなり、祓うという考えが濃くなったが、今でも稀にいるらしい
悠楼
昔の血が、強くなっているのか
冬樹
はい
冬樹
申し訳ありません
悠楼
暴走するのか?
冬樹
はい。食べれない期間が続いたり目の前に大量にあったりすると
悠楼
では、暴走しないように結界を張ろう
冬樹
え?
悠楼
俺が定期的に祓わず持ってくる
悠楼
それで暴走はしないだろ
冬樹
追い出したりしないんですね
悠楼
お前は、俺の仕えなんだろ
冬樹
お心お優しい方に恵まれて、この冬樹幸せのほかもありません
悠楼
悠衣の邪弧が目の前にあったとき、暴走しなかったんだな
冬樹
あの方の邪弧は、私が食べていいような代物ではございません
悠楼
どういう事だ?
冬樹
邪弧にもレベルがあります
冬樹
悠衣様の邪弧のレベルは最上級でした
悠楼
それなのに、悠衣は自我を保っていたのか?
冬樹
えぇ、そこが私も気になっていました
冬樹
普通、最上級の邪弧をまとった人間は自我を忘れ、自暴自棄になります
冬樹
ですが、悠衣様には自分でつけたような傷がひとつもありませんでした
悠楼
…気になるな
冬樹
えぇ。とても
悠楼
…冬樹
冬樹
ダメですよ。悠楼様
悠楼
だが
冬樹
いくら悠楼様のご思案であっても、それだけは危険すぎます
悠楼
…チッ
冬樹
では、ご思案する余裕があるようなのでこの仕事を終わらせてください
悠楼
…さてと、見廻りに行くか
冬樹
悠楼様?
悠衣
…
悠衣
(別れる時、冬樹がなんか言ってたんだよな)
悠衣
(ただの別れの挨拶?いや、そんな風には思えない)
悠衣
(だったら…)
兄
おい
悠衣
勝手に部屋入らないでよ
兄
お前勝手に俺の部屋入っただろ
悠衣
あんたの服が混じってたから置いといただけ
兄
じゃあドアの前に置いとけ。はいんな
悠衣
だったらアンタだって私の部屋ノックもしないで入るな
兄
あ?俺は兄だからいいんだよ
悠衣
じゃあ私も妹だし、入る権利あるくない?
兄
妹は妹らしく黙ってろ
悠衣
はぁ?意味わかんない
兄
マジでお前ってバカだよな。兄妹ってのが信じられねぇわ
悠衣
ぅ…っ(何この悪臭)
悠衣
(もしかして、コイツから…!?)
兄
あー、あーまじウザイ
兄
ホント、死んでくんねぇかな
悠衣
ちょっと、深呼吸して落ち着きなよ
兄
は?まじで黙れよ
悠衣
(どうしよ、このままだと邪弧がどんどん増えてく)
悠衣
(でも、増えたらこいつは死ぬんだよね)
悠衣
…それなら、放っといても
悠衣
(いやいやいや、コイツは性格がクソでも家族だ)
悠衣
(どうにかしないと)
兄
マジでお前のせいで俺まで悪く言われるしさー
悠衣
これ以上アンタが不満ばっか言ってたら、アンタ死ぬよ
兄
は?厨二病キショ
悠衣
本当だから
兄
ウッザ〜
兄
私なんでも知ってますよみたいな目?まじウザイ
悠衣
ッ(腐ったナッツみたいな匂いだ)
兄
お前さっきから何してんの?
兄
人の話も聞けないクズなわけ?
悠衣
ッ…消えろ!
パァンッ