この距離で、そのままで

須智は早起きを継続している

三度の飯より睡眠優先の須智がここまで変わるなんて

正直驚いた

顔色は良くなっているし、何か良いことでもあったんかな

上機嫌の理由が可愛らしい

須智は壁に背を預けて寝息をたてはじめた

相変わらず寝付きがいいなw

春の陽に照らされ、須智の深緑の髪が輝く

整った顔、長いまつ毛、さらさらな髪、俺よりも筋肉質な体

あの頃から変わったところも変わらないところも、全部が好き

須智が傍にいるから俺は恋心を捨てられないし、捨てずにいる

本当は

中学の時は、吹っ切れてたんだよ

でももう一度お前に会ったらダメだった

夏都の肩に須智の頭が乗る

須智の髪に手を伸ばす

少しぎこちない手つきで頭を撫でた

少しづつ、眠くなる

目を閉じて、落ちゆく意識に身を任せた

幼少期

地面に絵を描いてる

初めて会った時、変な子だなーと思った

木の棒を渡す

初めは須智もなっちゃん呼びだったっけ

須智はひとりで絵を描いてる変なやつだったけど須智と居ると何故か落ち着いた

小学生になると周りが異性を気にしだした

幼稚園の頃も恋人いますみたいなやつはいたけど、それとはまた違う感じ

俺は全く興味がわかなかった

女の子は確かに可愛いけど『好き』なんて思わなかった

須智が暇ちゃん呼びになったのは2年生に入ってから

なっちゃんの苗字って『ひま』とも読めるんだね！

じゃあ暇ちゃんだ！

そんなノリでつけられたあだ名

他とは違う呼び方で呼んでみたいとか思ってたのかもしれない

俺は須智が呼ぶ『暇ちゃん』が好きだった

須智が心配してくれて心が暖かくなる

いつも何かあるとすぐに気づいてくれる

そんなお前にどきどきしてた

あの子、男なのに男が好きらしいぜ

えー、キモっ

廊下で別クラスの前を通り過ぎた時そんな声が聞こえた

キモいって言われたのは俺じゃないのに胸が苦しくなった

そっか

俺と同じだから、自分事に感じてるんだ

俺は……須智が好きだから

俺ってキモいんか……w

男が男になんて、

好きになっちゃダメだったよな

俺、須智にキモいって言われちゃうのかな

嫌だ嫌だ嫌だ

嫌われたくないよ

もう、隣にいちゃいけない

高校入学式

暇ちゃん……？

もう忘れることが出来たと思ってた

懐かしい呼び方に驚いて、声の方を見てしまった

あーあ、目が合っちゃった

すぐに視線は外したけどもう無理だよね

声変わりした低い声、高くなった身長

顔立ちもあの頃より大人びている

……再会するんならこんなかっこよくならないで欲しかったな

また心臓が跳ねた

荷物を投げる

俺は須智と居れれば、何も望まない

でも

ごめんな、俺はまだ恋をやめられない

画質悪くてごめん（アナログだよ） ⬇