ナレーション
普段は絶対に言わなかった言葉。
あの日だけ、彼の声は震えていた。
泣いていた友達に声を掛ける余裕はあの時の僕にはなかった。
僕はなぜ友達が泣いているのか当時は理解できなかった。
みんな同じ苦しみの中にいたからだ。
だから、僕は友達の言葉が、胸の奥に引っかかった。
そのときは深く考えなかった。
誰だって疲れることはあるし、
自分が踏み込むべきではない気がして、
ただ曖昧に笑って流してしまった。
その数日後だった。
彼は突然、遠くへ行ってしまった。
その直後から、僕は大きな罪悪感と喪失感を抱いた。
あの時に声を掛けていたら。
もっと自分に余裕があったら。
そうやって自分を責め続けた。
ただ“もう元には戻らない”という事実だけが、
静かに、冷たく、そこに残った。
そして気づいたのだ。
友達は、僕と同じ“呪い”に苦しんでいたのだ。
氷鏡国に生まれた子どもたちが抱える、
胸の奥を凍らせるような重さ。
努力し続けなければ価値がないと囁く、
あの冷たい声。
