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4件
すっごく好きですっっ!!本当にありがとうございます!!😭
今日の楽屋の空気は、どこかいつもと違っていた。
滉斗
ソファに座りながら、元貴に小さく声をかける。
元貴
滉斗
視線の先には、メイク中の涼ちゃんの姿があった。表情はいつもと変わらず穏やかだけど、どこかぼんやりしている。
元貴が少し眉をひそめた。
元貴
滉斗
俺も同じことを感じていた。だけど、何が原因なのかは分からない。
滉斗
そんな考えが頭をよぎる。
元貴
元貴が軽く手を叩いて、空気を切り替えた。俺もそれに頷く。
そのとき涼ちゃんが鏡の前で小さく呟いたのが聞こえてきた。
涼架
滉斗
驚いて声をかけると、涼ちゃんはハッとしたように振り向き、笑った。
涼架
その言葉に違和感を覚えながらも、本番前ということもあり、それ以上は何も言えなかった。
ライブは熱気に包まれ、大歓声が響いていた。
俺もキーボードの前に立ち、演奏に集中しようとする。けれど、ふと目に入った光景に胸が痛んだ。
元貴と若井がステージの中央で楽しそうにアイコンタクトを交わし演奏を盛り上げている。 その姿が、まるで別世界のように思えた。
涼架
そして、それを突きつけるようにファンの声が耳に入る。
ファン
ファン
ファン
笑いながら交わされる言葉が、胸に突き刺さる。
涼架
手元の鍵盤がぼやけて見えた。自分の指が震えているのが分かる。
それでも、演奏を止めることはできない。
涼架
そんな考えが、頭から離れなかった。
ライブが終わり、メンバーは片付けが終わった人から楽屋へ戻る。
俺も楽屋に戻ろうとすると、
マネージャー
マネージャーの低い声が、背筋を凍らせる。
このマネージャーは数ヶ月前に来た人で、何故か俺にストーカー紛いなことや酷いと無理やり襲おうとしてくるからわざと会わないようにしていた。
涼架
俺は、抵抗できずにスタッフ控え室に連れ込まれた。
扉が閉まるとマネージャーは近づいてきて、俺の腕を掴んだ。
涼架
マネージャー
涼架
無理に笑おうとするが、傷がある方の腕を強く握られ顔を歪める。
マネージャー
涼架
マネージャーの手が腰に触れようとした瞬間、ノックの音が響いた。
滉斗
若井の声だった。
涼架
一瞬、呼吸が止まった。
マネージャーも動きを止め、舌打ちする。
マネージャー
腕を乱暴に離され、俺は急いでドアを開けた。
涼架
滉斗
若井はじっと顔を見つめる。その目がまるで何かを見透かしているようで少し焦る。
涼架
そう言って笑うと、若井はしばらく黙ったあと、
滉斗
とだけ呟いた。
夜、自室のベッドに座り、スマホを見つめていた。
ネットには、ライブの感想が溢れている。
「やっぱりもとぱ最高〜!!!」
「キーボード要らなくね?w」
「本当、もう辞めてくれよw」
「キーボードもサポートメンバーで成り立つやん」
「いい加減察して欲しい、2人もそう思ってそう」
その言葉が、ぐるぐると頭の中を回る。
涼架
気づけば、手は引き出しの中にしまっていたカッターを握っていた。
シャツの袖をまくると、赤い線がいくつも刻まれている腕が現れる。
涼架
そう思いながら、刃をゆっくりと滑らせる。 皮膚が裂け、血が滲む。
赤い涙は沢山流れるのに、涙は流れなかった。
翌日
楽屋に入ると、元貴がすぐに声をかけてきた。
元貴
涼架
笑って誤魔化すが、元貴はじっと涼架の腕を見つめる。
元貴
その言葉に、心臓が跳ねる。
涼架
涼架
元貴
元貴の声色が変わる。
涼架
元貴
抵抗しようとするが、元貴が素早く手を掴み袖を引き上げた。
元貴
無数の傷が刻まれた腕がさらけ出され、楽屋が静まり返る。
元貴の手が震えているのが分かった。
そしてしばらくの沈黙のあと元貴が低く呟いた。
元貴
俺は、何も言えなかった。