sakura
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sakura
sakura
桃くんが言っていた通り、約束の日は昨日の雨が嘘のように晴れていた
病院をなんとかこっそり抜け出した僕は、電車に乗り込んだ
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桃
桃
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僕は頭に走った鈍い痛みに気付かないふりをして1番後ろの車両へ向かった
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桃
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桃
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桃
黙ってしまった僕を心配したのか、桃くんは僕の顔を覗き込むようにして、目の前で手をひらひらと振った
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桃
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桃
桃
桃
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桃
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桃
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揺られること1時間弱
ようやく、目的の町に着いた
桃
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青
桃
青
桃
松葉杖をついた桃くんと並んで、改札を目指す
っていってもICカードや切符を処理する機械はなく、駅員さんに処理してもらうんだけど
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桃
桃くんからカードを受け取り、自分の分と一緒に駅員さんに渡す
駅員室のなかで処理してもらってから、改札を通った
桃
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桃
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桃
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桃
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桃
桃
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桃くんが指さした方向にじぃっと目を凝らす
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桃
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青
桃
湿気のせいでムシムシした空気の中、ラーメン屋さんを目指して海と平行に続く道を歩き始める
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桃
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追求すると、桃くんは顔を渋くした
桃
桃
これには笑いを堪えずにはいられなかった
お腹を抱えてゲラゲラと笑い始めた僕を置いて、桃くんは先に行ってしまう
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桃
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桃
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桃
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桃
青
桃くんの純粋な思いが痛い
桃くんの事を思って言うなら今だった
海外の両親が帰ってきて、転校が早まったんだ
荷造りとか忙しくなるから、学校には行けなくなるんだ
……言わなきゃいけなかったのに言えなかったのは、桃くんと過ごすこの時間が、楽しくてしょうがなかったから
言ったら、この楽しい雰囲気が壊れてしまうから
やっとたどり着いたラーメン屋さんは比較的新しがった
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桃
僕たちの他にお客さんはいなかったから、入ってすぐの席につき、向かいに座った桃くんとメニューを見る
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桃
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お冷をくれた店員さんにお礼を言ってからメニューを順に追っていくと、あまり見かけないラーメンが目につく
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桃
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机に身を乗り出した僕達は、お互いに顔を見合わせる
そして桃くんは、にやりと口角を上げた
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桃
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頼むかどうかはまた別の話。
僕の言葉を遮るように、桃くんが奥にいる店員さんを呼んだ
桃
注文を受けた店員さんから、元気な声が返ってくる
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慌てて注文変更しようとしても、候補すら決めていなかったため、変更のしようがない
その間にも、厨房では作り始めてしまっているようで、今から頼み直すなんてことはできなかった
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桃
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桃
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桃
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桃
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桃
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桃
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桃
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お母さんがフルーツタルトと交換してくれたけど、当時の僕の凹み具合は相当なものだった
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それがなかったら、もしかしたら今、大のコーヒー好きだったかもしれない
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桃
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桃
桃
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桃
桃
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桃
桃
桃
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桃
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青
青
桃
そのタイミングで運ばれてきた、大きさの違うふたつのラーメン
店員
目の前に置かれたどんぶりの中のスープには、しっかりとバターが浸かっている
対する桃くんの方は、もう少し大きなバター
桃
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桃
青
桃
ラーメン屋さんを出てから、海に向かった
砂浜には、雨の影響か海藻や流木なんかが沢山打ち上げられていたけど、波は案外穏やかだった
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桃
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しばらく無言で海を見つめていると、突然桃くんが顔をのぞきこんできた
桃
青
止めようと思っても、もう遅い
桃くんはずんずん海の方へ歩いていってしまった
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ふぅっと息をついて桃くんの後を追おうとした、その時だった
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視界がぼやけて、打ち寄せる波の音のほかに、甲高い音が聞こえる
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ぎゅっと目を閉じて、視界をリセットする
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桃
青
桃くんの呼び掛けにできる限り明るく応えた
転ばないように気をつけながら、桃くんの元へ歩みを進める
桃くんは、波が来ないギリギリのところで地面とにらめっこしていた
桃
青
桃
青
青
桃くんの髪が潮風になびくのをぼうっと見つめていると、不意に顔を上げた桃くんと視線が絡んだ
桃
ふっと微笑んで、桃くんが首を傾げる
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青
赤面している顔を隠すように、体を翻して砂浜に足跡をつけていく
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桃
青
背後で、桃くんが声を上げた
びっくりして振り返ると、桃くんが砂浜に倒れ込んでいた
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青
距離はさほど離れていなかったので慌てて駆け寄ると、桃くんはごろんと仰向けになって手を伸ばした
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青
桃くんの手を取って起こそうとしたら 逆に引っ張られた
青
あまりに突然の出来事に、声がでない
今僕は、砂浜の上に寝転ぶ桃くんの上にいて、抱きしめられてる
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桃
青
青
むうっとむくれてみるけど、伝わる体温が心地よくて直ぐに起き上がろうとは思えない
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桃
唐突の感謝の言葉に、桃くんは怪訝そうに問い返す
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青
桃
青
誰とも関わらずに生きていこうと決めた
感情に蓋をして、頑丈な鍵をかけた
その鍵を真っ向なら壊しにくる人が現れるなんて、思ってなかった
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青
青
言い終わる前に、世界が反転した
砂浜の熱を背に感じるけど、砂浜に手をついて僕を見下ろす桃くんに意識が集中している
青
状況を飲み込む前に、影になった桃くんの顔がゆっくりと近づいてきた
唇が触れる
そう思った瞬間、桃くんの目が切なく細められた
桃
咬み殺すように言った桃くんの唇が、僕のそれと重なった
青
桃
ゆっくりと、桃くんの熱が離れていく
放心状態で砂浜の上に寝転ぶ僕から退いて、桃くんはそっぽを向いた
桃
青
桃
左足を庇うようにして桃くんは立ち上がり、またずんずんと先を歩いていく
青
青
頭の中で論点がずれつつあることにも気づかず、桃くんを追いかけようと立ち上がって、ついた砂を払う
………つもりだった
青
頭につんざくような痛みが走り、僕はその場にうずくまる
青
さっきみたいに目を瞑っても、まぶたの裏の真っ暗でさえ歪んで見える
青
蚊の鳴くような声で呼ぶと、彼の背中か振り向いた
桃
青
痛みが一層ひどくなり、砂浜に膝をつく
桃
桃くんがもう一度僕の名前を呼んだタイミングで、全身の力が抜け、僕はついに砂に倒れ込んだ
ゆらゆら揺れる世界の中、もうダメかも……って、本気で思った
もうすぐ誕生日だったのになぁ…
誕生日に特別な思いはなかったはずだけど、桃くんと話した18歳の誕生日の話に見事に洗脳されちゃったみたい
僕はまだ17歳なのに、桃くんは18歳
そのたった1歳の差が、ものすごく大きく感じたんだ
手のひらに温もりを感じて、薄く目を開いた
桃
大好きな人の声が聞こえる
そこにいた桃くんは、酷くやつれているように見えた
伝わる桃くんのものらしき温もりは本物で、自分はまだ生きているんだと知る
青
酸素マスクをつけているせいでこもっている僕の声
次第に意識がはっきりしてきた
心配かけてごめんね。徹夜で映画見たのが悪かったのかな。貧血が酷くて、意識飛ばしちゃった
とっさに言い訳を用意して放とうとした僕を、桃くんの言葉が追い抜く
桃
青
目を見張って、ベット脇にいる桃くんを見る
これでもかってくらい、心臓が跳ねたのを感じた
桃
桃
青
失うことを怯えていた桃くんに、絶対知られたくなかった秘密を
桃
僕の右手を握る力が、ぎゅうっと強められる
桃
青
青
桃
青
桃
耐えかねたように涙の雫が一粒、桃くんの頬を滑り落ちた
青
桃くんが、泣いた
事故にあって苦しんでいたとき、男だから泣かないって言った
そんな桃くんが……泣いた
僕が与えてしまった痛みの大きさを思い知る
青
壊れたロボットみたいに、ただ謝り続ける僕
青
桃くんと過ごす日々の中で、僕はたくさんの嘘をついた
そんな自分勝手な嘘が、今こうして桃くんを苦しめている
その事実が、僕には耐え難かった
桃
青
桃
桃
ぽろぽろと涙を流したまま、同じように視界を滲ませている僕の頭を優しく撫でてくれた
全てを知って、それでも桃くんは肯定してくれた
青
桃くんが握ってくれてるのとは逆の手で、目元をごしごしと拭う
今まで何度も桃くんの前で涙を見せてきたから、最後くらいは笑っていたいと思った
桃
桃くんの顔がさらに歪む
さよならの前に桃くんのこんな姿を見られたことを嬉しくも思うけど、僕はやっぱり笑顔が好きだ
全部ぜんぶ愛おしくてたまらないのに、僕たちの進む道は分かれてる
青
僕の命が尽きる、その瞬間まで
物理的には無理でもいい。
ただ、気持ちをそばに感じたいんだ
桃
桃
青
こんな状況でも加速するなんて、恋心ってやつはすごい
桃
桃くんが涙をながしながらも、くしゃりと笑う
返事の代わりに頷くと、桃くんは顔を緩める
桃
青
桜が散って、空がうんと高い夏が訪れる
青葉はやがて赤く染まり、じきにどこか寂しさを感じさせる冬になる
その雪が溶けたと思えば、また枝先の蕾が芽吹く
そんな愛しい世界を、これからも生きていくキミのそばに
青
青
青
桃くんがくれたもの全てが、永遠に僕の心の中で生き続けるよ
青
桃
青
強がりじゃなく、心から桃くんの幸せを祈るよ
そして僕は、キミだけの天使になる
sakura
sakura
sakura
コメント
12件
更新ありがとうございます~.ᐟ 文章構成相変わらず最高です…😭🤍 ぬぁぁすごい感動しました次で最終回、、寂しいですが楽しみにしてます(ᐢ..ᐢ)♡
初コメと、フォロー失礼します! 砂浜のとこはキュンキュンしながら見てましたが、 病室のとこで泣きました(´;ω;`) 続き楽しみに待ってます!
初コメ失礼します。 続き楽しみに待ってます! 体調には気をつけて、がんばってください!