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ドズルside
泣き崩れるおらふくんを見たあと。
しばらくおらふくんを落ち着かせようと必死に
話しかけたりしたけれど。
僕の口から出る優しい言葉とは裏腹に
頭の中ではとてつもなく嫌な予感がして。
僕は急いでおんりーの部屋へと向かった。
予想通り…
いや、間違ってて欲しかった”予想”
見事に当たってしまった。
部屋はもぬけの殻。
泣き崩れるおらふくん。
もう、完全に理解している。
でも、僕は諦めが悪い。
でも、こんな冷静な思考とは裏腹に
僕の顔は青ざめ、
息は上がり
目からはもう涙が滲んでいる。
何をそんなに焦っているのだろう?
急いで階段をおり、ドアを開け、閉めるのも
忘れて
ただただ走る。
これまで出したことの無いようなスピードで走る。
何をこんなに急いでいるのだろう?
おんりーの元へと急いでるのか?
頭ではもう結末はわかっているでしょう?
おんりーの元へと辿り着いて。
僕は只々立っている。
......つもりだった。
僕は膝から崩れ落ちて。
泣いて。
叫んでる...のか?
何故?
今更期待していたの?
とっくにわかっていたでしょ。
.........
.........
嗚呼、そうか
僕は受け入れたくなかったのか。
......
いや
”受け止めきれなかったんだ”
ずっと
そのままだった。
立ち上がって
やるべき事を淡々とこなそうとしたけれど。
体が動かなくて。
涙は止まってくれない。
声が枯れるまで...出なくなってしまうまで叫び続けて。
遠くからサイレンが聞こえる。
きっと僕の声で他の人が通報したんだろうな。
こんな時間...近所迷惑だな。
.........
おんりー
...
いや”おんりーだったモノ”
それを前にして
こんな事を考えている
自分が
ドズさん
気づいたら僕は家のリビングにいた。
前には何人もの警官がいて。
横をちらっと見ると
放心しているおらふくんが見えて。
警官が僕とおらふくんに何か
話しかけているようだったけど
何を言っているのか聞こえなかった。
窓からちらっと覗くブルーシートの端。
あんなに近いところにいるはずなのに。
何故か絶対に届かないと思えた。
もう
涙は枯れ
声も余り出なくなっていたけれど。
頭ではこんな事を考えて。
耳は何も聞こえないはずなのに。
目の前にいる警官に対して
口はなにか動いていた。
話しているのか
かすかすになった声。
潰れた喉。
自分の耳には届かないのに、何故か聴こえるような気がした。
何も感じない。
それは恐らくおらふくんも同じだろう。
思考はぐるぐる同じ事を反芻してるだけ。
でも口は淡々と動いてる。
そんな状態を繰り返してしばらく。
警官達は帰っていって。
暗いリビングにおらふくんと2人、
いつまでもずっといた。
そんな状態で。
そんな状態で...。
ずっと、ずーっと。
頭はもう余り働かなくなったけれど。
やっと 2人に連絡しよう、
そう思えたのは
3時間後だった。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
驚き、焦りそして受け入れられない。
そんな声が聴こえる。
ーーーー
あぁ、そうか
日常組の皆もいるんだっけ。
2人には帰ってから伝えるべきだったかな。
詳細を説明せず
その非情なまでに残酷なひとつの事実を
2人に突きつけたまま、
僕は電話を切った。
ーーー
しばらくして。
ぼんさんからのLINE。
詳細を求める文章。
でも、その文の中にも
僕たちを気遣う気持ちが垣間見えて。
そんな文に思わず僕は
枯れたはずの涙を
流していた。
頬をつたって流れていく水。
でも、僕の淡々とした
この固まってしまった思考や心は
とかせなかった。
あぁ、こんな自分がどうしようもなく嫌で。
僕はまた暗いリビングに沈み込むようにしていた。
ーーーー
ここで普段の僕なら
おらふくんの事や
ぼんさん、めんの事も気遣えただろう。
でも
今はそんな気力もないし
動こうとしても動かない
ーーー
ーーー
ーーー
ぐちゃって
”また”あの音がした気がした。
さっきまで朝だったはずなのに
外は暗かった。
いや、むしろ
朝日の片鱗が顔を覗かせている。
ぐちゃ。
どちゃ。
普段は聞かないような音。
普段は関わることのない音。
そう、
聞かないような...
でも
僕は短期間で
何回もこの音を聞くことになった。
ぼんやりとした頭の中。
理解しかけている部分と
理解したくない部分と
ふわふわして何も考えられない部分。
ーーー
体が動かせないな。
何をする気力もないし
考えようともしない。
もう外は朝日が昇っている。
嗚呼、とうとうなにも食事を取らないまま1日が経過したのか。
でもお腹は空かない。
あぁ、そういえば
今日は月曜日か...
ー初めて、
学校へ行きたくないと思った。
ーーーーー
そんな考えは
けたたましいサイレンでかき消された。
庭に広がる大きなブルーシート。
5人で住んでいた時はあんなに狭いと感じていた家が
だだっ広く感じられた。
ぐちゃっていう
肉が地面に打ち付けられる音。
びちゃって
肉塊が飛び散る音。
びしゃって
赤い花が咲き乱れる音。
僕はこの音を聞いてなお
動こうとは思わないし
慌てもしない。
きっと”あの時”から
僕はとっくに壊れてしまっていたんだろうな
またあの時みたいに僕の目の前に警官は立って
何か話しかけてくる。
ーやっぱり
なんて言ってるのか聞き取れないや。
ふと窓を見ると
運ばれていくおらふくんとぼんさんと目が合った。
それを見ても
僕はもう何も感じなくなっていた。