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響いた声が誰かの世界を止めたのなら、 僕はやっとこの喉を愛せる気がした。 僕は歌が嫌いだった。 少なくとも昔は。 小学校の音楽の時間。 歌を歌えば「女の子みたいな声」と笑われる。 中学にいってもそれは変わらなかった。 「声が高い男は無理」 「声でかくない?必死じゃん笑」 「なんかぶりっ子みたい」 知らない誰かに笑われて。 傷つくのはもう慣れた。 でもそれを必死に隠して笑っていた自分自身が。 1番。この世で大っ嫌いだった。 なのに。 どうして僕は今。 歌っているんだろ。
SUBIN
そう言ってくれたのは最初に出会ったすびんだった。 練習生になったばかりのころ。 練習室の隅でイヤホンを片耳に挿して鼻歌を歌っていた時。 急に話しかけられた。
TOA
SUBIN
この人、正直にすぐ言う人なんだなと。 変な人だと思った。 でもちょっと嬉しかった。 自分の声が大嫌いなのに。それでも歌いたいと思った理由は、 多分その日から少しずつ変わっていった。 すびんとハモった日。 そんうひょんとレコーディングブースで音程を合わせた時。 じぬひょんに褒められて泣きそうになった時。 誰かと声が重なって誰かの声の中に自分がいて。 それが音楽になる瞬間が最高に心地よくて。 いつの間にか、僕はこの喉で誰かのそばにいるようになっていた。 デビュー曲の仮歌を歌った日。プロデューサーが言った。 この高音がなきゃ、空間が閉じるね。とあの声は余白を作る声だよ。 余白。 誰かに必要とされてる声と言われたことよりも。 その言葉が妙に暖かく響いた。 自分が嫌いだったこの喉が、 誰かの中では静かな余白になっていたんだな。 ライブのステージに立つ前。 未だに手は震える。 MCを振られると緊張で上手く言葉が出てこない。 でも歌う瞬間だけは僕の中で全部が止まる。 真っ暗なステージ。照明が落ちた瞬間。 イントロが流れて、観客の歓声が薄れて言って。 一音目のボーカルが会場にゆっくりと流れる。 その一瞬だけ、ぼくはちゃんと「そこにいる」と思える。 ありがとう。 公演が終わったあと、ファンからの手紙に書かれていたその一言。 君の声で泣けたと書かれていた。 泣きそうになったのはむしろ僕の方。 この声で誰かの世界が少しでも泊まるなら。 僕の余白が誰かの中で音楽になっているなら。 もう少し歌ってみようと思う。
今書いてて思ったんですけどこのアイドルたち練習室の隅に住みがちですね。 すみっコぐらしかな