アナウンス
アナウンスが流れ、周囲の人々がそれぞれ動き出す。 国王に挨拶しに行く者、料理を嗜む者、参加者同士で会話する者と様々だ。
シャーク
念のため位置を把握しながら、目立たぬよう周りに合わせて参加者に紛れる。 人込みでよく見えないが、今回は誰が来ているのだろうか。
シャーク
緊張で早まる鼓動を抑えながら、姿勢だけは崩さぬように主人公とは逆方向へ歩みを進めた。
ちらりと時計を覗けば丁度パーティーが始まってから30分とちょっと。 意外にもシャークに話しかけに来る貴族は多く、対応しているうちに主人公が一人になる時間になってしまった。
シャーク
主人公レイとその母親はこの辺りの地域では珍しい黒髪だから、人混みだろうがすぐに見つけることが出来る。 見つけることは出来たのだが、何故か人気のない部屋の角っこであの五人ではない、別の誰か二人に囲まれていた。
シャーク
シャーク
関わっても良い事は無い。 むしろ俺のフラグが進んでしまう可能性がある。 そんな事分かっている。 分かっているがどうしても気になってしまい、少し急ぎ足で主人公の元へ向かった。
モブ
モブ
モブ
ゲラゲラと下品な笑い声を上げて、主人公と恐らくホンニチをバカにしている同年代の貴族のガキ二人。 仲裁に入りたいと思うものの、過去に自分がやったことを思い出してしまい今更助けたって、と足が止まってしまう。
モブ
モブ
主人公(テンマ・レイ)
シャーク
ぎゅっと手を握りしめ目を瞑って俯く主人公。 もしかしたら俺がちょっかいを掛けなかったせいでモブが追加されてしまったのかもしれない。この後の好感度イベントのために。
モブ
反抗してこないからイライラしてんのか調子に乗ってんのかは知らないが、一人が主人公に掴みかかってこぶしを振り上げる。
シャーク
そのこぶしが主人公の腹に当たる寸前、ぎりぎりでガシッと一人の腕をつかむ。
モブ
モブ
そう言われてしまえば何も言い返せない。 確かに、俺だってこれぐらい……いやこれ以上のことをやっていた。 でも。
「シャーク様は変わられました。」
シャーク
ぎちぎちと腕を握りつぶす勢いで絞めて脅せばチッと舌打ちをし、俺の腕を振り払って去っていく二人。
シャーク
仮にもこの国の王子なのに、こんなにも下に見られてるのはきっと俺のせい。 誰かがやってるから、そんな気持ちを皆もっているから王子だろうが何だろうがこんな仕打ちが出来るのだ。
主人公(テンマ・レイ)
シャーク
さっきの馬鹿どもと、昔の俺…いや俺が憑依する前のシャークにイラついて口調が荒くなる。
主人公(テンマ・レイ)
震える手と声、目からは未だ涙が零れ落ちていて、今にも膝から崩れ落ちそうだ。 なんでわざわざ、俺に話しかけてんだこの王子。どこまでお人好しなんだよ……まあ、恋愛ゲーってそんなもんか?
シャーク
?
ハンカチでも渡そうかと考えていたその時、後ろからかなりの声量の怒声が飛んできた。 ハッと気づいた時にはもう遅い。
シャーク
?
普段より何倍も低いトーンで、明らかに怒っているのが伝わってくる。 怖い、怖い、こわい。 思考が恐怖に乗っ取られそうになるのをなんとか阻止して、声のする方に振り向いた。 そこに立っていたのは片目が隠れた茶髪に水色目の貴族…Nakamuだ。 最悪、40%引くとかツイてなさすぎる。
シャーク
レイは普段とは違う様子のNakamuに怯えて、いっそう震えている。 レイからの援軍は期待できないし、しちゃいけない。俺は、おれ、は。
Nakamu
言葉に一切の温度が無い。 物語が好きな彼は、喋るのも好きだ。 だからセリフが人一倍多くて……どのキャラよりも言葉のナイフが鋭い。
こんなの、助けた俺がバカみたいじゃんか。 どんな理由があったって、コイツが…シャークが過去に何をしてたって"俺"には関係ないのに。 困っているなら助けてあげたいだろ。俺だって人間なんだから。 くそ、くそ、くそくそくそ
シャーク
Nakamu
涙が目から落ちる前に、全速力でその場を逃げ出した。
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