さくら
ねぇ、曇って楽しそうだよね
突然彼女が言った。
涼真
え?w
涼真
何どうしたの?w
さくら
ふと思ったんだよね
さくら
曇って風のままにふわふわと流れていって、何も考えなくて楽しそうだなって
涼真
……病んでるのか?
俺は不意に彼女が心配になった
さくら
ふふ、病んではないよ
彼女は笑って答えた。
さくら
私ね、死んだら雲になりたいの
さくら
死んだらきっと燃やされて、煙になって、空へ舞って……
さくら
塵が積もって土に帰って
さくら
土の水分から雲になる
さくら
それが夢なんだ
涼真
そうか
涼真
素敵な夢だな
俺にはそれしか言えなかった
まさかあんなことになろうとは知らずに
涼真
先生っ!!
涼真
さくらは……さくらは…?!
先生
……
先生は静かに首を振った
涼真
そんなっ……
さくらは急に倒れ病院に運ばれた
先生の話によると運ばれてきた時には既に息を引き取っていたそうだ
涼真
どうしてっ……どうして……
さくらは癌だった。
若いのに。
あの時俺に雲の話をしたのはきっと自分の死期を悟っていたからだろう
気づいてやれなかった自分が憎らしくてたまらなかった
よく、空を見ると思い出す
涼真
さくら……
彼女の言った夢を。
私ね、死んだら雲になりたいの
空を見上げては雲を探す。
雲を見つけては、手を合わせる
そんな日々が日課になっていた。
きっとあの雲のどこかに、さくらがいるはずだから