事務所の掃除は舎弟の務めだ。兄貴達が出勤してくる前に、掃除を済ませるのが常だ。
今日も例に漏れず、廊下の拭き掃除に取りかかった所で、兄貴分である小峠の兄貴が出勤してきた。
何時ものように、小峠の兄貴に挨拶をしようとした瞬間、俺の足はモップに引っ掛かり、躓いてしまった。
そして、前方にいた小峠の兄貴の胸に飛び込んでしまう。
宇佐美純平
俺は声にならない声をあげた。
小峠華太
俺は小峠の兄貴に対して、憧れ以上の気持ちを抱いている。 早く離れなければと頭では分かっていても、こんな偶然でもなければ、小峠の兄貴に抱きつく機会なんて、この先二度と訪れないかもしれないので、もう少しだけ、小峠の兄貴の感触を味わいたいという邪な考えが、俺の行動を鈍らせる。
宇佐美純平
抱きついた小峠の兄貴の体から漂う匂いに何か違和感を感じ、すんすんと鼻を鳴らし、小峠の兄貴の匂いを嗅ぐ。
小峠華太
宇佐美純平
小峠華太
宇佐美純平
宇佐美純平
小峠華太
宇佐美純平
つい勢い余って、本音を言ってしまった。しかも、同性から言われたら、キモがられる台詞を。俺が兄貴と同じ立場ならひいている。ひかれたらどうしようと思いながら、チラッと小峠の兄貴の顔色を窺う。
小峠華太
小峠華太
特に小峠の兄貴は気にする素振りもなく、反対に俺の心配をしてくれる。
宇佐美純平
頬から伝わる熱に、今、自分がどんな顔をしているのか、鏡をみなくとも容易に予想がつく。
小峠華太
それだけ言って、小峠の兄貴は去っていった。 小峠の兄貴の方が、仕事量も多くて大変なのに、舎弟の俺にも気遣ってくれる。そんな優しいとこが何より好きだと、俺はまた小峠の兄貴に惚れ直してしまう。
ただ、小峠の兄貴が通り過ぎた後に、ふわりと例の匂いが香った。
強烈な程の違和感ではないが、何時もの匂いと違っている。やはり、俺の気のせいではなかったようだ。そうなってくると、どうしても匂いの正体が気になりだす。小峠の兄貴の事となれば尚更だ。
宇佐美純平
しかし、小峠の兄貴から、今日匂ってきた香りにもどこか覚えがあった。自分の記憶を頼りに、思い出しにかかる。
宇佐美純平
例えるなら、重厚なラム酒っぽい匂い。
宇佐美純平
宇佐美純平
謎が一つ解明されたと同時に、今度はまた新たな謎が生まれた。そして、この日、一日考えたけど、 結局、答えは見つからなかった。
ただ後日、衝撃的な事情と共に、俺の失恋が確定する事になるのだが、この時の俺には、まだ知る由もなかった。
おわり
あとがき 目に見える物だけが、マーキングとは限らない。匂いも有効なマーキングの一つ。 実は、なぐかぶのマーキング話の書きかけがあるんだが、お蔵入りしそうなんで、今回のだかぶで使ってみたっていうのが理由。なぐかぶは、華太の髪から南雲と同じシャンプーの匂いがする事と、華太は御3家兄貴とも体の関係ある設定なんで、この話とは、まるっと内容も設定も違う。南雲ニキ初登場時に書き始めて、今まで放置してるんだよね(;´д`)いつかは完成させたいんやけど、まあ無理やな。 普段は、のだかぶ、わなかぶメインに書いてるけど、チャットノーベルで書くと、やっぱり、しっくりこんのんよな。終わりかたもぐだっとるしな。でも、反対になぐかぶは相性いいんよな。ただ単に、なぐかぶが短編向きなのかな(´・ω・`)?
おまけ
須永陽咲也
野田一
須永陽咲也
野田一
野田一
須永陽咲也
野田一
流石は策略家。 野田が労せずとも、華太が歩くだけで、華太から漂う匂いが、野田の物であると周りに知らしめるのだ。
おわり
コメント
2件
素敵なお話ありがとうございました💕