狐白
狐白
狐白
気が付いたら、俺は知らない場所に立っていた
いや、厳密には「知っている場所」…のはずだが
その様子はどこか異様に見えた
・・・・・・幻想郷"
俺はその名を思い出した
ここは、かつて俺がいた場所だ
蓮斗
そう呟き、俺は周囲を見回す
初めに目に入ったのは、苔むした祠だった
かつて俺が建てた祠だ
少し触ったくらいで崩れてしまいそうなそれを見上げながら、俺は小さく息を吐く
蓮斗
それが特段悲しいわけではない
ただそういうものなのだと理解する
蓮斗
それでも、博麗神社はまだあるはずだ
俺がかつて、幻想郷の要として築いた神社
その役目が今も尚、続いているなら
この土地の秩序もまだ健在のはずだ
蓮斗
俺は祠を背に歩き出す
博麗神社の道筋を、体が覚えている
覚えていないと困る 幻想郷の中心にあるそれは、自分自身と切り離せないものだから
どれくらい歩いただろうか
ようやく視界の先に、鳥居が見えて来た
その朱色はやけに鮮やかだった、だが
俺は何かが違うと感じる その色に深みがない
見た目こそ整っているが、どこか軽薄で 俺の知っている鳥居とは別物だ
蓮斗
鳥居をくぐり、石段を登る
やけに静かだ 風の音も鳥の鳴き声も、全て遠く感じる
やがて、神社の境内が見えて来た
そこには人影が一つあった
巫女装束を身に纏い、縁側で茶を啜る女
ぼんやりと空を見上げているその姿を目にした瞬間、 俺は足を止めた
蓮斗
そう呟いた声は、自分でも驚くほど小さかった
彼女は俺の存在に気付いたのか、ゆっくりと顔を上げる
その目は気だるげで、少しの緊張感もない
霊夢
俺を見つめながら、彼女はそう尋ねた
警戒をしているということはなく、ただ興味本位といった調子だ
俺は彼女の問いに答える
蓮斗
無論、これは俺の偽りの名だ
博麗の者としての自分を明かす必要はない
今はただ、目の前の巫女がどんな者か見極められればいい
霊夢
彼女は名を繰り返し、気だるげに言葉を続ける
その軽い口調に苛立つことなく、俺は淡々と目的を告げた
蓮斗
蓮斗
俺の言葉に、彼女の表情が一瞬変わる、が
すぐに肩を竦め
霊夢
彼女の気楽な態度は変わらない、俺はただ 冷たく彼女の目を見据えたまま、言葉を続ける
蓮斗
蓮斗
霊夢
彼女は湯呑を手にしたまま、俺をじっと見つめる
その目に警戒心はない ただ興味というより退屈を紛らわせたいような無関心さがあった
霊夢
霊夢
彼女はそう言うと、湯呑を置き、縁側に足を崩して座り直した その姿勢が、余計に無防備に見える
蓮斗
蓮斗
蓮斗
俺の言葉に、彼女はあくびを一つ漏らす
それから、目元を擦りながら言った
霊夢
俺はその言葉を小さく繰り返す
彼女は肩を竦め
霊夢
その軽々しい態度に、俺の中で何かが冷たくなっていくのを感じた
『この女は、本当に博麗の巫女なのか?』
『かつて俺がその座にいた時、均衡を保つことが どれほどの重責であったか知っているのか?』
蓮斗
蓮斗
霊夢
彼女は僅かに顔に笑みを浮かべる
その笑みには挑発的なものすら感じられる
霊夢
霊夢
蓮斗
俺は思わず言葉を呑んだ
その考えは、俺が知る博麗の巫女の在り方とは正反対だった
博麗は妖怪と人間の橋渡し役ではあるが、 それは決して慣れ合いを意味しない
双方の均衡を冷徹に保つ…それが巫女の役目だった
蓮斗
俺の視線が神社の朽ちた柱や剝がれかけた屋根を見据える
彼女はその視線を追い、肩を竦めた
霊夢
霊夢
霊夢
蓮斗
蓮斗
蓮斗
俺がそう言うと、彼女が口を開ける
霊夢
霊夢
霊夢
彼女の声は相変わらず軽い だが、その言葉の奥には、確かな自信が感じられた
彼女は今のやり方で、幻想郷を維持しているのだと信じている
蓮斗
蓮斗
俺の問いに、彼女は目を細めた
そして、再び湯呑を持ち上げる
霊夢
霊夢
その一言に、俺は目を閉じた
これ以上何を言っても無駄だと思ったからだ
この巫女は、自分の怠惰を正当化することに慣れている
そして、それを支える幻想郷の住人がいる限り 彼女は変わらない
蓮斗
蓮斗
俺はそう言い残し、神社を後にする
彼女の声が背後からする
霊夢
霊夢
霊夢
その言葉に振り返ることなく、俺は足を進めた
『どこにも行かない?ならば いずれその場所が崩れたときに気付くことになるだろう』
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