コメント
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蘭side
赤暇なつ
気まずい空気ごと夏都が 話題を入れ替えた。
私の隣に並ぶ美琴の作品を眺めながら 「細かい描き込みだな」と 感想をもらす。
威榴真と澄絺もそれにならい 再び準備室には独特の緊張感が 漂いはじめた。
桃瀬らん
私もまた騒ぎ立てたかった 訳ではなかったから威榴真に 反論する気はなかった。
けれど言葉には出来ない何かが 引っかかって仕方がない。
しかも嫌な予感が呼び水に なったのか番狂わせが 続いてしまった。
先程の私への好評価が 嘘のように澄絺の美琴の作品に 対するコメントは辛辣だった。
春緑すち
まるで遠慮のない澄絺の発言に 夏都と威榴真がぎょっとなる。
赤暇なつ
紫龍いるま
2人の評価も虚しく 澄絺の方からは痛烈な言葉が零れた。
春緑すち
そうかと思えば恋醒の作品には 澄絺は殆ど無言だった。
どの作品を見てもただ一言 「いいね」と呟き あとはひたすら見入っている。
予想外の展開に終わりが きたことに安堵しつつ私も 黙って作品と向かい合う。
桃瀬らん
桃瀬らん
そして大方の予想通り澄絺は恋醒に 絵の制作を依頼したのだった。
当の恋醒は興奮状態がとけたのか 人見知りモード全開になっていた。
私の背中に隠れるようにして 遠慮がちに澄絺に声をかける。
雨乃こさめ
雨乃こさめ
雨乃こさめ
春緑すち
春緑すち
詳しい内容は省かれていたけど澄絺の 言わんとするところは伝わってきた。
桃瀬らん
幼い頃秘密基地をつくって 遊んでいた時のような 笑顔がそこにある。
大人に近づくほど感覚を 共有しあえる仲間との 出会いは貴重だ。
だからこそ創作活動の中で 同じような感覚を持つ恋醒の 存在が心底嬉しいのだろう。
桃瀬らん
話が合うからと毎日のように 一緒に帰っている美琴は 澄絺にとってどんな存在なのか。
私は今すぐにでも問い質したい 気持ちに駆られたが親友の淡い 気持ちを思えば躊躇われる。
そうでなくとも部外者が口を 挟んで良いことではない。
桃瀬らん
そっと隣の様子を窺うと 美琴は普段通りの穏やかな 笑みを讃えていた。
だが、彼女の手は、足は、 微かに震えている。
桃瀬らん
桜黄みこと
なんと声をかければいいかも 分からないのに気がつくと 名前を呼んでいた。
美琴は弾かれたように私を 見やりそれからパッと両手を 後ろに隠してしまった。
桜黄みこと
桃瀬らん
そう言って微笑まれてしまったら 私から何か言うことはできない。
見なかったふりをして 代わりに心の中でめいっぱい叫ぶ。
桃瀬らん