弐話目「妻としての」
千暁
小袖の紫色に染められた和と洋の入り交じった様な ドレスの裾を握ってくるくるまわる
髪は珍しく丁寧に結い上げており 絹よりも美しい髪を結うのは女中も苦戦しただろう
今日はより、千暁の人離れした 容姿がよく映える姿だ
千暁
千暁が指を指して示すのは 大体女の掌と同じ程度の大きさ程度の紫色の布が貼られた箱
そう聞いた千暁に対し、女中は少し呆れた表情をする
女中
千暁
千暁
女中
女中
女中
千暁
説明しよう
女中の言う合戦とは有力な華族の集いのこと
情報、人脈、信頼、実力 その全てが完璧に揃っていなければすぐにでも蹴落とされてしまい 返り咲く事はほぼ不可能
そんな世界で生き残るためには こう言った社交界である集まりに参加するのは 必要不可欠なのである
一般よりそれなりに裕福ではあるがそれでも 庶民出身の千暁は こういった知識は無いに等しい
なのでこう女中が意気込むのも頷けるのだ
女中
女中
千暁
千暁
女中
千暁
千暁
千暁
鏡で色々な角度から自分を見ながら 呟く
千暁
女中
女中
千暁
女中
女中
少し声を密め口角を上げながら 千暁一人程度ならば隠れられるスペースを指さす
千暁
千暁が隠れたのを確認した後 女中は立ち上がって 襖を勢いよく開く
すると、聞き耳を立てていたであろう 千暁の夫である華扇が開けられた衝撃で倒れこんできた
華扇
女中
女中
女中
華扇
華扇
女中
女中
千暁
女中の声に反応して千暁がひょこりと出てくる
すると、華扇が稲妻に撃たれたような表情になった
華扇
華扇
華扇
千暁
千暁
女中
千暁
女中
女中
華扇
女中
華扇
夫婦揃って女中には勝てないのである
千暁
女中
千暁
女中の一声ですぐに大人しくなり 口を少し噤む
広い洋館の様な建物は千暁にとってはあまり馴染みがなく 目をキラキラさせながら辺りを見る
因みに華扇は他の人達に呼ばれて千暁と女中とは別行動中。 ちなみに離れる時は歯を 食いしばり悔し涙を流していたそうな
千暁
千暁
彩楓
女中
彩楓
千暁
千暁
彩楓
彩楓
千暁
千暁と仲良さげに話すこの少女の名前は 紅 彩楓
縫製を生業にしている叔母の手伝いをしており、 お転婆な性格とは裏腹に和歌などが得意な
千暁と仲良くなるべくしてなったというべきな女の子だ
女中
千暁
女中
女中
女中
千暁
女中
女中
女中は千暁の後ろの方に回りこみ、 千暁に行く方向を伝えながら着いて歩く
キョロキョロと辺りを見ると 千暁は少し表情を明るくしてある人物の方に向かう
しかし女中が軽く咳払いをした為 ゆったりとした動きに速度を落として ドレスの裾を掴みお辞儀をする
千暁
千暁
千暁
女中
天鞠
天鞠
千暁の挨拶に反応したのは齢10を少し越えたばかりの愛らしい少女
先程名前が出た様に この子の名は朝月天鞠
蝶よ花よと育てられた 名家の生粋のお嬢様
しかし偶に千暁に誘われて一緒に脱走するというお転婆ぶり
総財産的には一条よりも上だが 千暁を「お姉ちゃん」と慕っており
千暁も可愛がっている為仲も良いようだ
???
天鞠
天鞠
天鞠
天鞠
数秒の沈黙の後 天鞠が軽く吹き出した
そしてそれにつられてなのか 千暁もケラケラと笑いだした
千暁
千暁
天鞠
女中
???
千暁
女中とほか一名の冷ややかな目線に気付いた様で 千暁の背筋が一瞬で伸びる
千暁
暁杜
そんな風に何処か冷たい口調で言う男は 有栖川 暁杜
天鞠の幼少期の頃からの護衛で 千暁とは天鞠を連れ出した時に会った程度の顔見知り
千暁からの評価は 「機嫌が悪い時の零慈兄ちゃんを少し冷静にさせたみたい」 とのことだ
暁杜
天鞠
千暁
女中
千暁
千暁
女中
女中
千暁
慣れない靴を履いているせいでか 少し靴擦れしている足を少し擦る
千暁
女中
千暁
女中
女中がそう答えると千暁は少し頬を膨らませて 拗ねた子供の様な表情をする
すると、千暁の視界の端に 綺麗に着飾った令嬢が入ってきた
千暁
令嬢達
千暁
千暁
女中
女中
千暁
千暁
女中
千暁
一気に険しい表情になり令嬢を睨みつけるで見る女中を宥めながら 令嬢に軽く目をやる
千暁
千暁
千暁
ドレスの裾を掴んで 立ち尽くしながら辺りを見回す
人の波に押しやられ 始めて見る西洋のものに目を惹かれ
気が付いたらポツンと一人になってしまった
きっと今頃、 女中が冷や汗を垂らしながら探しているだろうと千暁は妄想する
千暁
千暁
時はもう遅い。この女は 先程千暁を見ていた令嬢の一人だった為 千暁は軽く後悔している
令嬢
千暁
令嬢
千暁
令嬢
千暁
令嬢
険しい表情で令嬢は睨みをきかせ ぽそりと呟く
千暁
千暁
千暁
千暁
千暁
千暁
流石は兄達と両親、近所の人など 多くの人から蝶よ花よ天女よと愛されて育った娘
常人には持ちえないとんでもない自己肯定感と鋼の心を持っている
千暁
千暁
令嬢達
千暁
千暁
千暁
頭の中で一つ一つ絡んだ糸を解く様に 状況を整理していく
そうすればいつか答えはでる。 そんな父からの教えを実践しながら千暁は考える
千暁
令嬢
千暁
令嬢
令嬢
千暁
そう、令嬢が単調な声で千暁の黄色い目を見つめながら告げる
千暁の頭の中には疑問符が漂い 変な汗が流れる
令嬢
令嬢
千暁
令嬢
真剣な表情で千暁が令嬢に言うと 令嬢は少し驚いた表情で声を漏らす
千暁
令嬢
千暁
令嬢
令嬢
千暁
千暁
千暁
令嬢
千暁
令嬢
千暁
千暁
令嬢
「やめろやめろ、華扇泣くぞ。」 などと言う人も居ない状況下
千暁の中に疑問が芽生えた
ある意味千暁が迷子になったから 良かったのだと思える
令嬢
千暁
千暁
令嬢
千暁
千暁
令嬢
「ならねぇよ阿呆」と、誰かツッコんでくれ
そんな誰かの願いも届く筈が無く 千暁は令嬢の手を引き会場から脱走する
団結した時の女は恐い恐い...
女中に怒られるのを覚悟しているのか否や...
次回 参話目「息子さんを私に下さい!」 投稿日…未定
おまけ
令嬢と千暁を探している頃の女中さん
女中
女中
女中
モブ
女中