桜が散る頃までに 最終話

しばらくすると、梨桜が空のコップをひとつ持って戻ってきた。

そう言いながら、梨桜は、さっきまで幾斗が立っていた場所まで歩いてきた。

そこには、桜の花びらが沢山落ちていた。

梨桜は、そこから桜の花びらを1枚取り、コップの中に入れた。

すると、コップの底に落ちた桜の花びらがシュワっと消え、水になった。

言われるままに、梨桜からコップを受け取り、水を飲み干した。

すると、俺の頭の中に映像が流れてきた。

そう言って梨桜はコップを差し出す。

俺は受け取り、飲み干す。

バタンッ

俺は、兄妹に囲まれながら、ふと窓を見た。

ちょうど、桜が散り始めたところか。

でも、俺はそれを見ていなかった。

窓辺に、梨桜がいたからだ。

梨桜が、桜の花を持って、こちらを見ている。

やがて、ふ、と笑うと、そのまま消えていった。

それから1年後。

だって、一瞬見えたから。

梨桜が桜の木の上に座っている所を。

･･･梨桜は隠れてるつもりなんだろうな。