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春の風がカーテンをふわりと揺らした。
安野梨歌はノートに走らせていたシャーペンの手を止め、
開け放たれた窓の外をなんとなく眺めた。
桜の花びらが、校庭をゆっくりと舞っている。
川東江麻
隣の席の川東江麻が、小声で言った。
スマホの画面を指で滑らせながら、少し楽しそうに笑う。
安野梨歌
梨歌が首をかしげると、江麻はにやりと笑った。
川東江麻
川東江麻
安野梨歌
そう言いながらも、梨歌はちょっとだけ胸がざわついた。
“新しい子”という言葉に、なぜか少しだけ緊張する。
チャイムが鳴り、先生が入ってくる。
そのあと、静かな声が教室に響いた。
永塚和歌菜
永塚和歌菜
顔を上げた梨歌の視線の先にいたのは、
長い髪を耳にかけながら一礼する、少し冷たい印象の女の子だった。
けれど、その瞳の奥はどこか澄んでいて、梨歌は思わず息をのんだ。
先生
先生
川東江麻
江麻が元気に手を振る。
和歌菜は小さくうなずいた。
──その瞬間から、3人の日々がゆっくりと動き出した。
まだ誰も、それがどんな形に変わっていくかを知らないまま。