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雄一
雄一
雄一
やばい！！
雄一
助けてくれ！！
紗希子
どうしたの？
紗希子
夜遅いのに
雄一
部屋の呼び鈴が止まらないんだ！！
雄一
誰かがずっと
雄一
外から鳴らし続けてる
雄一
ドアのスコープから覗いても
雄一
誰の姿も見えねーし
雄一
意味わかんねー！
紗希子
ピンポンダッシュかな？
紗希子
こんな時間に悪質だね
雄一
でも、走って逃げてく音とかきこえないし
雄一
鳴ってから1秒も経たないうちにドア開けてんのに
雄一
誰の姿も見えない
紗希子
不思議だね！
紗希子
まるでおばけみたいw
雄一
笑い事じゃねーって
雄一
まじで怖ぇんだよ
紗希子
ねぇ
紗希子
実は
紗希子
雄一に言わなければならないことがあるんだ
雄一
なんだよ
雄一
こんなタイミングで
雄一
ますます怖ぇーよ
紗希子
実は
紗希子
実は……
紗希子
雄一
なんだよ！
雄一
さっさとしろよ！
雄一
こっちは、もう頭おかしくなりそうなんだよ！
紗希子
ごめんね！w
紗希子
ピンポンしてたの、実は私でした！w
紗希子
どう？びっくりした？w
雄一
は？
雄一
なんだよ！おまえかよ！
雄一
びっくりするに決まってんじゃん！
雄一
脅かしやがって！
紗希子
雄一ビビりすぎw
雄一
一人暮らしのやつにそんなくだらねーことすんなよ
雄一
まじで死ぬかと思った
紗希子
そう？
雄一
でも
雄一
さっき、ドアの前に誰もいなかったが？
紗希子
わたし、いたよ？
雄一
なんでだ？
雄一
ドアスコープ壊れてんのか？
紗希子
もう一回ちゃんと見てよ
雄一
雄一
雄一
今、見たけど
雄一
やっぱりいないよな？
雄一
おまえ、ずっとドアの前にいるんだよな？
紗希子
もちろん
紗希子
いるよ
雄一
じゃあ、なんで見えないんだ？
雄一
まさか、おまえ
雄一
幽霊になっちゃった…
雄一
とか？笑
紗希子
さあ？
紗希子
雄一
紗希子
どう思う？
雄一
怖いこと言うなって笑
紗希子
あはは
紗希子
でも、まあ
紗希子
幽霊の話は置いといてさ
紗希子
こんな話、聞いたことない？
雄一
どんな話？
紗希子
人間ってさ
紗希子
普段、自分が見たくないものを
紗希子
視界に入れないように、脳が無意識に働いているんだって
紗希子
私たちに見えているこの世界って
紗希子
見たくないものを、あらかじめ脳が半分くらい除去してくれたあとの世界なんだって
雄一
へぇ
雄一
人間の身体って、よく出来てるんだな
紗希子
もしかしてさ
紗希子
雄一に私のことが見えないのは
紗希子
私のこと、見たくないからなんじゃない？
紗希子
無意識に私を排除している
雄一
そんなわけないだろ
雄一
紗希子は、ずっと俺の彼女なんだし
雄一
いつでも顔を見たいに決まってるだろ
紗希子
紗希子
ほんとうに？
雄一
当たり前だろ
紗希子
その言葉
紗希子
すごく、うれしい
紗希子
紗希子
でもさ
紗希子
先週
紗希子
雄一、私の部屋に来てくれたよね
紗希子
私、あの日
紗希子
これ以上浮気しないでって
紗希子
思い切って雄一にお願いしたのに
紗希子
話している途中で
紗希子
全くわたしの顔、見てくれなくなったよね
雄一
わりぃ
雄一
飲み会帰りだったし
雄一
よく覚えてない
紗希子
そうだよね
紗希子
雄一、すごく酔ってた
紗希子
すごく酔ってたからだよね？
紗希子
紗希子
紗希子
雄一が私を殴ったのは
紗希子
痛くて
紗希子
悲しくて
紗希子
それでも
紗希子
雄一は殴るのやめてくれなくて
紗希子
しかも
紗希子
私が部屋に飾ったばかりの
紗希子
睡蓮のガラスの花瓶で
紗希子
私の顔が潰れるまで殴り続けて
紗希子
睡蓮が散っちゃったときには
紗希子
雄一には私のこと
紗希子
全く見えてないみたいだった
紗希子
でもさ
紗希子
そうだよね
紗希子
自分が殴って潰した相手の顔なんて
紗希子
見たくなんてないよね
紗希子
視界からも
紗希子
あるいは記憶さえも
紗希子
取り除きたくなるよね
紗希子
だから
紗希子
こうして会いに来たの
紗希子
あの日からずっと
紗希子
見えてなかったみたいだから
紗希子
でも
紗希子
そろそろ、思い出してきたでしょ？
紗希子
そろそろ、私のこと、見えるようになってきたでしょ？
紗希子
それでも
紗希子
もしも
紗希子
もしもだけど
紗希子
まだ、わたしのことが見えないなら
紗希子
みえるようになるまで
紗希子
ここでまつから
紗希子
まってるから
紗希子
紗希子
ずっと
紗希子
ずっと
紗希子
ずっと
紗希子
ずっと
紗希子
紗希子
紗希子
ここで
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
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