テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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LINE１４３３

第1話 - あ

2023年12月21日

#スカッと

タナカトシキ

ヨウコ

久しぶり。あんた、この街に戻ってきたんですって？

ヨウコ

どうして、真っ先に私に言ってこなかったの？

ミカゲ

あっ、久しぶり

ヨウコ

久しぶりじゃないわよ！

ヨウコ

あんたは、うちのお手伝いさんの子なんだから

ヨウコ

主従関係はしっかりしておきなさいよ！

ミカゲ

そんな昔の話を持ち出して、20年も前の話でしょ？

ヨウコ

主従関係は今でも続いてるの！

ヨウコ

学生だった頃、私の持ち物をずいぶんあんたに

ヨウコ

くれてやってたじゃない

ヨウコ

その恩義をまったく感じていないの？

ミカゲ

また、そんな昔の話をしだして･･･

ミカゲ

えぇ。感謝してるわ。あなたのおさがりだったけど･･･

ヨウコ

学校でも、構ってあげたじゃない？

ミカゲ

いじめていたの、間違いじゃないの？

ミカゲ

本当に子供って、残酷よね

ミカゲ

今でも忘れられないわ･･･

ヨウコ

貧乏人っていうのは根っから貧乏人というものよ

ヨウコ

貧乏な人生という蟻地獄から、這い上がれないようになってるのよ

ミカゲ

何が言いたいの？意味不明なのよ

ヨウコ

貧乏人は、一生貧乏人だってこと

ミカゲ

そう、勝手にそう思ってたら？

ヨウコ

お手伝いさんの子なのに、生意気ね！

ミカゲ

それで、何？

ミカゲ

嫌味を言うために連絡してきたの？

ヨウコ

街の皆は、あんたのことをセレブだって言ってるけど

ヨウコ

誤解を解いておかなきゃと思って

ヨウコ

あんたが勘違いしないように、釘を刺すつもりで連絡したのよ

ミカゲ

私は別に、自分がセレブだなんて思ってないよ･･･

ヨウコ

当たり前でしょ！最下層の住人のくせに！

ヨウコ

あんたが昔どういった生活をしていたのか知ったら

ヨウコ

誰もあんたをセレブだとか言って、持ち上げたりしないわ

ヨウコ

あんたも、勘違いはしないほうがいいわよ！

ミカゲ

はいはい

～一週間後～

ヨウコ

あんたの旦那に会ったわよ

ミカゲ

えっ？

ヨウコ

あんたの家に入っていくのを見てたの

ミカゲ

私の家の前で？それって、ストーカーじゃない？

ヨウコ

だっ、誰があんたのストーカーなんてするもんですか！

ミカゲ

それに、ただ見ていただけじゃ、会ったとは言わないわよ

ヨウコ

なによ！何だっていいじゃない！ミカゲのくせに！

ヨウコ

それに、これからお近づきになるのよ

ミカゲ

何言ってるのよ！どうして私の旦那に近づく必要があるの？

ヨウコ

だって、あんたみたいに貧乏な女には、もったいないくらい

ヨウコ

格好がいい人じゃない？

ヨウコ

気に入ったから、私にちょうだいよ！

ミカゲ

さっきから、おかしなことを言ってくるわね

ヨウコ

私に紹介しなさいよ

ミカゲ

そんなこと、するわけないでしょ！

ヨウコ

まぁ、紹介してくれなくても

ヨウコ

あんたなんかよりずっと、私は魅力的だから

ヨウコ

ほっといても、向こうからやってくるわ

ミカゲ

あんた、頭がどうかしてるんじゃないの？

ミカゲ

旦那があんたなんか、相手にするわけないじゃない！

ヨウコ

それは、どうかしらね？

ヨウコ

それじゃ、また、連絡するわ

ミカゲ

そんなの、必要ないわ！

～一カ月後～

トモコ

あなた、近所の人たちの間で、有名人になってるわよ

ミカゲ

どうして？

トモコ

あなた、何十年かぶりに街に帰ってきたでしょ？

トモコ

街に帰ってきただけでも、注目を集めてるのよ

トモコ

この街は狭いから、噂はあっという間に広がるのよ

トモコ

家は豪邸だし、あなたはセレブって言われてるわよ

ミカゲ

セレブ？そんなことないわよ

トモコ

ところで、あなたの旦那さん大丈夫なの？

ミカゲ

私の旦那がどうしたの？

トモコ

ヨウコと腕を組んで街を歩いていたり

トモコ

居酒屋で目撃されたりしてるわよ

トモコ

ママ友から聞いた話なんだけど

トモコ

あなたが御曹司と結婚して玉の輿にのったのを

トモコ

ヨウコが嫉妬してるんだって

ミカゲ

この前、ヨウコが私の旦那に近づいてやるって

ミカゲ

言ってたのは、本気だったようね

トモコ

ヨウコがそんなことを？

ミカゲ

私のことで、何て噂をされてるの？

トモコ

それが、噂はヨウコが流してるらしくてね

トモコ

あなたが昔、どれだけ貧乏で惨めだったかを

トモコ

あちこちで話してるみたいなの

ミカゲ

どんなふうに？

トモコ

それが、あなたの学生時代にまでさかのぼっての話で

トモコ

あなたのお母さんが、ヨウコの家のお手伝いさんだったことや

トモコ

服やカバン、何から何までヨウコのおさがりだったって話や

トモコ

話しかけても、いつもおどおどしていて

トモコ

話をしていても、つまらなかったとか、成績が悪かったとか

ミカゲ

そんなくだらない話でも、噂になるの？

トモコ

それが、周りの人達は信用しなかったけど

トモコ

あなたの旦那さんは話を信じて

トモコ

すっかりヨウコと意気投合してるのよ

トモコ

二人をホテル街で見かけたっていう話もあるの

ミカゲ

そんな！旦那がヨウコと不倫をしてるっていうの？

トモコ

どこまでも黒に近い情報みたいよ

トモコ

あなたは、その話が本当のことか、そうでないのかを

トモコ

しっかり見極めた方がいいと思うよ

トモコ

私も協力するし

ミカゲ

そう言ってもらえると、ありがたいわ

トモコ

もし、本当に不倫してたらどうするの？

ミカゲ

もちろん離婚するわ。しっかり慰謝料をふんだくってやるわ！

～半月後～

ミカゲ

ねぇ、私の友達があなたが不倫してるって言うけど、本当？

ユウジ

不倫？そんなことはしてないよ

ミカゲ

私、見たのよ

ミカゲ

あなたがヨウコとホテルに入って行くところ

ユウジ

嘘だろ！お前がいるのに、浮気なんかするわけないだろ？

ミカゲ

今から写真を張り付けて送るけど

ミカゲ

それを見ても、知らないって言えるかしら？

ユウジ

何だよ？この写真、合成写真か何かか？

ミカゲ

この写真を見ても、しらばっくれるつもり？

ユウジ

浮気なんてこれまで一度もしたことがないよ

ミカゲ

あなたがこんなに面の皮が厚いなんて、知らなかったわ

ミカゲ

この写真は、私が撮った写真なの

ミカゲ

あなたが知らないって言っても、無理な話なの

ユウジ

なんだよ！俺が浮気をしてるとしたら、お前が全部悪いんだよ

ミカゲ

何のことよ？

ユウジ

10年経っても子供はできないし

ユウジ

お前は名前の通り根暗な女だし

ユウジ

一緒に暮らしていても、退屈なんだよ

ミカゲ

私のこと、そんな風に思ってたの？

ユウジ

ああ、そうさ。

ミカゲ

じゃあ、私との結婚は間違いだって言うの？

ユウジ

今、そうだって話してるじゃないか

ユウジ

それに、ヨウコさんと話していたら

ユウジ

陽気で話も上手いし、一緒にいると楽しくて

ユウジ

あっという間に、時間が過ぎてるんだよ

ミカゲ

そんな･･･

ミカゲ

ヨウコは性格はいいように言えば、陽気だけど

ミカゲ

子供の頃は、私をいびって楽しんでたのよ

ミカゲ

そんなヨウコのことを褒めるだなんて･･･

ユウジ

その話は聞いたよ。お前はヨウコさんのところの

ユウジ

お手伝いさんの子なんだって？

ユウジ

それだったら、仕方ないじゃないか？

ミカゲ

仕方ないですって？

ユウジ

ヨウコさんはお前に洋服やカバンをあげたりして

ユウジ

構ってやってたって聞いてるよ

ユウジ

ちょっといびられるぐらいは、仕方ないかな？

ミカゲ

何ですって？

ユウジ

子供だって、ストレスが溜まることがあるからね

ミカゲ

待ってよ、私が悪いって言うの？

ユウジ

あっ、ちょっと忙しくなってきたから

ユウジ

また、話は改めるよ

ミカゲ

ちょっと！

ユウジ

明日から一週間出張なんだ

ユウジ

忙しいから、話は帰ってからにしてよ

ミカゲ

そんな･･･

～半月後～

ユウジ

悪いね。なかなか時間がとれなかったけど

ユウジ

やっと、時間がとれたよ

ユウジ

俺の不倫の話だっけ？

ミカゲ

そうよ。あなた、不倫を続けていて

ミカゲ

同じ生活を続けられると思ってるの？

ユウジ

それは、お前次第だよ

ミカゲ

どういうことよ？おかしなこと言うわね？

ユウジ

俺は別に今のままでいいんだよ

ミカゲ

そんなわけないじゃない！

ユウジ

お前はつまらない女だけど、空気みたいに存在感がないからな

ミカゲ

ヨウコとは別れないつもりね？

ユウジ

それがさぁ、ヨウコに子供ができたんだって

ユウジ

俺の子だっていうから、認知だけはさせてくれよ

ミカゲ

そんなの無理に決まってるでしょ！

ミカゲ

あなたとは、離婚するわ！

ユウジ

へ？

ユウジ

お前は専業主婦じゃないか？

ユウジ

家も、財産も、職歴もないじゃないか？

ユウジ

それなのに、随分と強気だな？

ミカゲ

家の頭金は、私の両親が出してくれたでしょ！

ミカゲ

出て行くのは、あなたなんだから！

ユウジ

家は俺のだろ！

ユウジ

お前は家にお金を入れてないんだから

ユウジ

頭金以外は、俺の稼いだ金じゃないか！

ミカゲ

いいわ。このことは、弁護士と相談するわ

ミカゲ

あなたは私を専業主婦だといいながら

ミカゲ

よくも会社でただ働きさせてくれたわね！

ユウジ

いいじゃないか。一日数時間のバイトなんだから

ミカゲ

仕事も辞めさせてもらうわよ！

ユウジ

強がりばかり言って、家から出て行ったら

ユウジ

お前の帰る場所はないぞ

ミカゲ

あなたと話してたら、頭がどうかしそうだわ！

～数カ月後～

ユウジ

ミカゲ、帰ってきてくれよ

ユウジ

俺、知らなかったんだよ。お前が物づくりの天才だって

ユウジ

お前が出て行ってから、会社が傾いてきたんだ

ミカゲ

私のこと、アルバイトだって言ってたのに

ミカゲ

随分な変わりようね

ユウジ

ヨウコの奴、お前がやってた仕事は大したことないから

ユウジ

自分が同じことをするって言ってたけど

ユウジ

あいつこそ、何もできない奴だったんだ

ユウジ

家事はできないし、服を売るだけしか能がなかったんだ

ユウジ

あいつが構っているのは、自分の外見だけだったんだよ

ミカゲ

だからって、あなたの子供を妊娠してるんでしょ？

ミカゲ

もう、結婚したの？

ユウジ

結婚は子供が産まれてからってことにしてたから

ユウジ

まだ、籍は入ってないんだ！

ユウジ

俺はヨウコにいいように、騙されたんだ！

ユウジ

お願いだ！戻ってきてくれよ！

ミカゲ

戻れっこないでしょ？

ミカゲ

私たち離婚したんだから

ユウジ

そんなこと言わないで

ユウジ

お前が帰ってきたら、家事でも何でもするから

ユウジ

頼むよ！

ミカゲ

ヨウコはどうするのよ？

ユウジ

あいつとは、結婚しないさ！

ミカゲ

あんたのことクズだとは思ってたけど

ミカゲ

想像以上のクズね！

ユウジ

仕方ないじゃないか！

ユウジ

家はお前のものだし、貯金もない

ユウジ

このままじゃ、会社は倒産だ！

ユウジ

俺の手元には、何も残っていないんだよ

ミカゲ

そんなの、自業自得じゃないの

ユウジ

そんなこと言わないで、俺を助けてくれよ

ミカゲ

ところで、慰謝料はまだ払ってもらってないけど

ミカゲ

ちゃんと、支払いだけはしてよね

ミカゲ

ヨウコにも慰謝料を請求してるんだけど･･･

ユウジ

今の俺には300万円なんて金額、とてもじゃないけど

ユウジ

払えそうにないよ

ユウジ

ごめんなさい。不倫なんかして

ユウジ

俺が悪かったよ

ユウジ

ヨウコも謝ってたよ

ミカゲ

今更謝ってくれても、仕方ないだけだわ

ユウジ

再婚できないなら、会社には戻ってくれないか？

ミカゲ

会社に戻るなんて、あり得ないわ

ミカゲ

あなたも、大概往生際が悪いわね

ユウジ

お願いだよ！一生に一度のお願いだよ！

ミカゲ

何を言われても、無理なものは無理！

ミカゲ

何でもするっていうなら、慰謝料をきっちり払ってね

ユウジ

ごめんよ。許してくれよ

～後日談～

ミカゲ

その後、数か月してヨウコの赤ん坊が産まれました

ミカゲ

ユウジの会社が倒産したので、結婚どころではなくなりました

ミカゲ

ユウジに残されたのは、私への慰謝料だけです

ミカゲ

ヨウコはユウジに嫌気がさして、実家に戻りました

ミカゲ

ユウジは慰謝料を両親に払ってもらおうと頼みに行きましたが

ミカゲ

こんな不出来な奴は自分達の子供ではないと

ミカゲ

親子の縁を切られてしまいました

ミカゲ

私はというと、物づくりの仕事を続けたいので

ミカゲ

就職先を探しました。業界では実力を認めてもらえていたので

ミカゲ

すぐに就職先は見つかりました

ミカゲ

家を売りに出したので、そのお金を手にすることができました

ミカゲ

今では、実家から通勤し、悠々自適に過ごしています

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タナカトシキ

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