ハロー1923

小学校5年生のとみお。趣味は亡くなった祖父から受け継いだモールス信号で見知らぬ誰かと交流をする事だ。

とみおと1923の出会いは二ヶ月前。たまたま交信できた際仲良くなりほぼ毎日交信を取っている。

二ヶ月前…

とみおはこの1923と名乗る老人と祖父を重ねていた。職業も元軍人。重なる点が多かった。

何度も交信を重ねるうちにプライベートな話題が多くなっていった。

とみおは何気ない会話が好きだった。顔も分からない老人1923。だがまるで大好きだった祖父と話しているようだった。

とみおは心が踊った。1923の顔、声、名前全てに興味があった。直ぐにでも合って話がしたかった。

とみおの機械ももう何十年も前の物だったので時折ノイズはよく入った。それは1923も同じだった。

1923の打つモールス信号にはどこか焦りと悲しみが含まれているように感じた。

二人は会って話すためにお互いの情報を教え会った。意外に二人の住む地域は近くて電車で30分の距離であった。

二週間後

そう言うと男は足早に帰っていったそうだ

その夜…

ノイズが繰り返されるだけで1923の交信は途絶えた。とみおは謝罪したかった。しかしその日は調子が悪く諦めてしまった。

翌日

その日は雨が強かった。

祖母が来客応対をしに行った。絶対に1923だ。とみおは確信して玄関へ走り出した。

大きなコートを着た人の足元で祖母は倒れていた。雨に血が混じり血の海とかしていた。

違う。とみおは直感的にわかった。見た目ははっきりとは分からなかった。ただ1923ではないと確信した。

森林にとみおの家はあった。周囲は何もない。夜の雨が体を冷やす。

ブーーーーーーーー

突然ブザーが鳴った。大音量で木霊する。獣の鳴き声のようなブザー音だった。

一定のリズムで流れるブザー音。 男は悟った。

大きく木霊するブザーのリズムはこうだ。 ー-ー- -ー---- ー-ー-ー -ー- _ー

男は夜道へ走り出した。 とみおの身体付近ではモールス信号を伝えるブザー音だけが鳴り響いていた。