テラーノベル
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黒く溶け込んだ部屋の中、薄暗いランプの灯りがほのかにその暗闇を照らす
灯りの近くにはお香が炊かれ、甘いローズマリーのにおいが部屋に充満している
俺はゆっくりと部屋の真ん中にあるベッドへと向かって歩いていく
夜の世界での俺はNo.1のホストであり、圧倒的な権力を誇っている
誰もが俺に憧れ、俺を求めた
俺のためにあらゆるところから必死に金をかき集めて会う姿をみると
俺の中にある何かの器が満たされていくのを感じた
けれど、この輝かしい座を維持するためには莫大な『金』が必要だ
俺を本当の意味で満たし、支配しているのは
金をかき集めてくる哀れな姫たちじゃない
……この部屋の主だ
薄暗い視界の先、ベッドの奥で俺を静かに見つめる瞳に背筋が凍り付きそうになる
逃げ場なんて、最初からどこにもない
ホストとしての余裕も、プライドもすべてここに置いていくと決めて
俺はそっと手をかける
パサリと、白いYシャツを脱いだ
──今月の売り上げNo.1は……『うり』!!
内勤のもふの声が響いた瞬間、フロアは割れんばかりの歓声と拍手に包まれた
じゃぱぱ
じゃぱぱ
じゃぱぱ
フロアで頭を抱えて大げさに悔しがってみせるのは、No.2のじゃぱぱだ
でもその顔には、悔しさと同じくらいの大きな笑みが浮かんでいる
ヒロ
ヒロ
ヒロ
ヒロくんが苦笑いしながらフォローすると、なおきりさんも「そうだよ」と優しく頷く
たっつん
たっつん
たっつんがうりの肩をバシバシ叩いて
メンバーみんなが自分のことのように嬉しそうにハイタッチを求めてきた
営業中は切磋琢磨するライバルだけど、終わればこうして笑い合える
この温かくて大好きな仲間たちがいるからこそ、俺は頑張れているのだ
みんなの笑顔に「ありがとな、じゃぱさんも惜しかったじゃん」と返しつつ
胸が針で刺されたようにチクリと痛む
この大好きな仲間たちと、このお店のエースという座を守りたい
そのためなら、俺はどんな泥だってすする
俺がここに居座れている本当の理由は、みんなには言えない
たった一人のVIP客──『ゆあん』という男に全面的に支えられているだなんて
みんなには口が裂けても、言えない秘密だから
シヴァ
シヴァ
片付けをしていたシヴァさんが、周りに気を使って
すれ違いざまにそっと耳打ちしてくれた
うり
うり
メンバーたちに手を振り返しながら、俺は静まり返った裏口へと歩き出した
賑やかなフロアを抜け、裏口の扉を開ける
涼しい夜風が肌に当たって気持ちいい
その風を吸い込んで、俺は道沿いに歩いていく
そこには、エンジンをかけたまま静かに佇むゆあんの高級車が停まっていた
重厚な助手席のドアを開けて滑り込むと
車内は冷房がよく効いていて、かすかに革の匂いが漂っている
ゆあんくん
ゆあんくん
運転席のシートに身を預け、ハンドルを握るゆあんは微笑んでいるけれど
どこか儚くて、触ったらすぐに壊れてしまいそうだった
うり
うり
俺がシートベルトを締めながらホストとしての笑みを返すと
ゆあんはフッと満足そうに目を細め、静かにアクセルを踏み込んだ
夜の街のネオンが、窓の外を滑るように通り過ぎていく
目的地は、彼が暮らす高級マンションの最上階
これからそこで、俺がNo.1であり続けるための『代償』を支払う
ドアが閉まった瞬間、それまでの静寂が嘘のように、部屋の空気が一気に熱を帯びる
ただ客とホストの関係
ここにいる理由は、俺がNo.1であり続けるための『代償』
ビジネスだと自分に言い聞かせ、俺はホストとしての笑みを無理やり張り付かせた
うり
うり
あえてお店での呼び方をして距離を置こうとする俺に、ゆあんはフッと目を細める
ジャケットを脱ぎ捨てて俺の目の前まで歩み寄ってくると
その瞳にはいつもの無邪気さはない
代わりにそこにあるのは
普段からは考えられないような、底の知れない暗い感情の色だった
ゆあんくん
ゆあんくん
ゆあんの長い指先が俺の顎を持ち上げ、強引に上を向かせる
至近距離で交わる視線。心臓がうるさく鼓動を打った
うり
ゆあんくん
ゆあんくん
耳元で、少し低めの声が鼓膜を揺らす
言い返そうと俺が口を開けた瞬間
それを待っていたかのように、ゆあんの唇が重なった
うり
驚いて身を引こうとしたけれど
ゆあんの空いている方の手が俺の後頭部をがっちりと固定して
さらに深くへと押し込まれる
うり
うり
うり
熱い舌が容赦なく口内を侵食してきて、俺の呼吸をじわじわと奪っていく
付き合ってもいないはずなのに
ゆあんの体温と、どこかけだるい大人の匂いが脳を狂わせていくのを感じた
うり
うり
一瞬だけ唇が離れた隙に、銀の糸を引きながら、俺はたまらず熱い吐息を漏らした
だけどゆあんは、俺の潤んだ目を見下ろして、意地悪くふっと口元を緩める
ゆあんくん
ゆあんくん
ゆあんくん
そう言って、次は俺の耳たぶを優しく食むように吸い付いてきた
うり
うり
敏感なところを責められて、思わず背中がゾクゾクと跳ね上がる
自分の口から出たとは思えない、情けない声が部屋に響いて
恥ずかしくして頭がおかしくなりそうだった
ゆあんくん
ゆあんくん
ゆあんくん
ゆあんの低くて甘い声が鼓動を直接揺らす
そのまま彼の大きな手が、俺の服の裾からゆっくりと滑り込んできて──
コンクリートのワンダーランド
こめ
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コメント
1件
うりくんの「No.1でいるための代償」って言葉がすごく重くて、最初から胸が締め付けられたよ……。仲間たちとの温かいやり取りと、ゆあんくんとの秘密の関係のギャップがたまらないね。ゆあんくん、儚いのに支配的で、そのギャップにゾクゾクしちゃった。暗い夜の雰囲気と甘いけど危険な香り、続きが気になる……! ニーナさん、素敵な世界観をありがとう🥀