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ノベル　教室にて

第1話 - 第1話

2025年10月17日

#哲学的？

#自問自答

#アホ

#人生

ユダ・スオミ

一馬

一つ確認をさせて欲しい。いいかな？

赤

いいだろう。なにから聞きたいのかな。

姫咲

ここって、学校よね？どうして誰もいないのかしら。

一馬

あぁ、それに、あなたは誰で、いったいどんな見た目をしているのか。どこから話しかけていてどんな声を…

赤

まぁ待ちたまえよ。確かに困惑することは仕方ない。でも良く考えてみて欲しい。ここは学校、確かにそのように見える。だが本当にそうかな？

姫咲

たしかに…確証なんてどこにもないわ。

一馬

あぁ、俺たちはそう見えるから学校だと考えただけで、実際ここがどこなのかもわかっていない。

赤

そう。人というものは実際にはどうなのかわからないものにさえ都合のいい解釈を当てはめて納得したがる。

姫咲

まぁ、言いたいことはわかるのだけれど、でもそれでもそう見えるからっていうのは物事を理解する上で大切な要素なんじゃないかしら？

赤

ほう、少し聞こうか。

姫咲

ありがとう、例えばもしテーブルの上に見慣れない奇抜な色の果実と、見慣れたオレンジのような果実の二つが置いてあってどちらかが毒でどちらかが食べられるけど、そのうちどちらかを選んで食べなきゃいけないものとしたら。どちらを選ぶ方が妥当かしら。

一馬

つまり、見慣れないもので一か八かの賭けに出るより、より知っているものに近いものを選ぶ方が安全で、正解しやすいように見えるってことか。

姫咲

そうそう、例えば種類が似てる果実なら安全な近縁種が存在すれば食べられる可能性も高くなるわ。それに見慣れないものには安全な要素を見極めるのは事前情報なしには大変なことになるわ。

一馬

へぇ、結構賢いんだな。ところで君の名前は？

姫咲

そういえば私たちも初対面よね。私は姫咲、よろしくね。

一馬

あ、俺も名乗るべきだったな。おれは一馬、高校2年生。よろしく。

姫咲

一馬ね、よろしく！わたしも高校2年生よ！

赤

一通り話は聞かせてもらったけど、確かにその論理ならここが学校だと判断する方が君たちという生き物にとって正しいことだと言えるね。

姫咲

でしょう？たしかにそれで間違えることもあるかもしれないけれど、少なくとも明確にこうだ！ってわかるものがなければ、より見知ったところを見知ったものとして解釈することが安全策なのよ。

赤

では答えをいうと、ここは学校ではないよ。

姫咲

うそ、じゃあここはなんなの？

一馬

うーん…

赤

ここはね、とある仮想空間なんだ。と言っても理解が進まないだろう？

一馬

それはそうだね、

姫咲

なにがなにやら…

赤

率直ににいうとここは存在していなくて、君達も自分の体を実感できないように、ここは意識だけがある空間なんだ。だから見えるというのも実際には見えてなくて、君たちがここをそう感じてるだけなんだ。

姫咲

えーっとつまり、私たちは意識だけ目覚めたまま夢の中みたいな場所に集まってるってこと？

赤

まぁそんなところかな。

一馬

うん…じゃあ赤、きみは何者なのかな。どうしてここがどういう場所なのか知ってるんだ？

赤

まぁいいよ。なるべく真摯に応えようと思っているからね。私は意思だ、一つの意識で複数の意思を持ってる存在。

一馬

人…？というわけではないのかな？

赤

人ではあるよ。ただし、君たちが普段感じているものとは少し違うけどね。

姫咲

言っていることがかなり複雑ね。わからないわけではないけど、それはちゃんと私たちが理解できると思って話しているの？

赤

うん。だって本質的には私も君達も変わらない存在だからね。

一馬

本質的には変わらない…？

赤

そ、少し私の話を聞いてもらおうか。

一馬

わかった。姫咲

姫咲

うん、いいわよ。

一馬

ありがとう。じゃあ、よろしく。

赤

じゃあ何から話そうかな。まず、君たちは記憶ってあるかな？

姫咲

そんなのあるに決まってるじゃない。私は友達と一緒に学校にいて…

赤

本当に？

姫咲

えーっ？ちょっと何言ってるのかわかんないわ？どういうこと？

赤

その友達はどんな子？普段はどんな会話をしてるの？その子の家の見た目は思い出せる？そもそも…その子って誰？

姫咲

えっと…それは…えっと…

一馬

あぁ、わからない。実際考えてみたけど、それがずっと引っかかってたんだ。

赤

ふむ。

一馬

俺の中には確かに友達がいて、ここが学校という場所で、自分が高校2年生だという確かな確信があった。

姫咲

そうね。そこまでは私もそうよ。

一馬

けど、よーく考えると、その友達とか学校とか、どういうものなのかこれっぽっちも思い出せないんだ。

一馬

それは記憶喪失っていうより、元々記憶がないものの上に文章としてのデータが書き込まれたみたいに感じるんだ。

赤

そう。大正解。つまり君たちは人でもなければ高校生でもなく、学校も家も友達もない。なんでもないんだよ。理解できる？

姫咲

あ……え…？

一馬

わかってしまうよ。嫌でもね。一馬ってなんなんだい？僕は…いや、俺は、私は？一体何者なんだ？そればっかりが今は気になるよ。

姫咲

そ、そんなこと言われても、納得なんてできっこないわ…私は私よ…

赤

そうだね。君は君だ。姫咲、さっき君が言ってたことへの返答をさせてもらおう。

赤

人は、自分が持つ前提や見識に絶対的な信頼を置きたがる。それは自分という人間の価値判断基準になるからだ。だが、それが必ず正しいかどうかはいったい誰がどうやって保障してくれるんだ？

赤

そもそも、世界という場所の担保は誰がするんだい？

一馬

たしかに一理あるが、それでも自分が自分である以上、自分が信じる前提の一つや二つが間違っていない可能性くらいは捨てきれないんじゃないかな。

姫咲

一馬？

一馬

おれも。否定したいんだ。きっとこの自分という存在が不安定な場所を。

赤

私は残酷ではない。なので、残酷にならないようにそこはお茶を濁してあげよう。つまり、その可能性はあるんじゃないかな？とだけ。

一馬

…。いったい君は何がしたいんだ。

赤

私は単にここにいるだけだ。ちなみに、ここを作ったのは私ではない。

姫咲

え…えっ？まさに管理人です！みたいな感じで話してたじゃない？

赤

うん。でも私はあくまで君たちと同じようなものだよ。でも一つ、ここには何もないものが何かあるような顔をして居座り、その立場が絶対に正しいんだと信じきってその役を演じるんだ。

赤

だから私は、それが人間であると思うよ。

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ユダ・スオミ

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