闇の中を進む。
足音はない。
呼吸も、無駄な動きも。
終わるのは一瞬だった。
背を向けるとき、
赤い布が風を受けて揺れる。
それだけが、
そこに誰かがいた証だった。
バイクで戻る途中、
イヤーピース越しに、声がする。
無事?
黒堂 緋月
問題ありません。
よかった。
玄関のドアを開けると、
深く息を吐いた。
黒堂 緋月
ふぅ、
夜風が肩に触れ、
冷たくて、
少しだけほっとした。
黒堂 緋月
ただいま……
誰も答えない。
でもそれでいい。
家にいるというだけで、安心できる。
靴を揃えながら、緋月は思う。
__家は戦場じゃない。少なくともここだけは。
黒堂 零
おかえり。
背後に立っていた零は、
書類を手にしている。
黒堂 零
……問題なかったか?
黒堂 緋月
はい。無事です
黒堂 零
怪我は?
黒堂 緋月
ありません
黒堂 緋月
…父さんは?
黒堂 零
まだ会議中だ。
玄冥の存在は遠くても、
気配は常に近い。
黒堂 緋月
黒崎さんは?
黒堂 零
台所。紅茶淹れてたぞ
黒堂 緋月
ありがと。
黒堂 零
うん






