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君との距離、0センチ

第3話 - 嫉影

2025年07月10日

#恋愛

#青春

#学生

#告白

ような。

レース後

寺本　詩

はぁーー！

寺本　詩

頑張ったのに最下位だー！！

黒崎　蓮斗

お前、汗だくじゃねぇか

寺本　詩

だって、せ、先輩が速すぎて…

寺本　詩

追いつくのに必死なんですよこっちは!

寺本　詩

先輩、サッカー部のエースって自覚あります？！

黒崎　蓮斗

…

寺本　詩

（やばっ、そうじゃない！）

寺本　詩

すみません、ほんとに

寺本　詩

無理やりな形で走ってもらって

黒崎　蓮斗

別にいいよ

黒崎　蓮斗

…ほら

寺本　詩

わっ！

黒崎先輩が冷えたペットボトルを私の頬に当てる

黒崎　蓮斗

飲めば？顔真っ赤

寺本　詩

…ありがとうございます

黒崎　蓮斗

必死に走ってるお前、新鮮で面白かったわ

寺本　詩

…え？

黒崎　蓮斗

やっぱなんもない

黒崎　蓮斗

倒れんなよ、面倒だから

寺本　詩

あ、はい…

寺本　詩

（さっきまで走るの嫌がってたのに…）

寺本　詩

（一緒に走ってくれて、お水までくれて…）

寺本　詩

（ほんとは、すごく優しい人なんですよね、先輩）

女子たち

黒崎先輩ー！お疲れ様でしたー!

黒崎先輩に女子集団が駆け寄ってくる

女子たち

走ってる姿も当たり前にカッコよかったー!

女子たち

せんぱーい！写真撮ってください！

寺本　詩

（すごい人数…）

寺本　詩

（主役は私のはずなんだけどなぁ）

寺本　詩

（黒崎先輩、すごいなぁ）

寺本　詩

（人気があって、カッコよくて…私なんかが近づいてちゃいけない）

寺本　詩

（私邪魔だしこれ以上いたら迷惑だから休憩スペース戻ろ）

放課後　教室

佐倉　美琴

詩さんお疲れ〜♡どうだった〜？

寺本　詩

う、何その声のトーン、嫌な予感がする

佐倉　美琴

やだなぁ

佐倉　美琴

私はただ"女子人気No. 1の先輩くんとペアで走った人"に感想を伺いたいだけですけど〜？

寺本　詩

ほ、ほんとにそんなつもりなかったの！

寺本　詩

引いたカードが、たまたま…

佐倉　美琴

ふーん、でゴールした後、水くれたんでしょ？

寺本　詩

…別にそんなんじゃ

佐倉　美琴

あ、今思い出してドキッとしたでしょ！顔に出ちゃってますよ♡

寺本　詩

ち、違うってば…！

クラスメイト

ねぇ詩ちゃん、黒崎先輩と走ってたじゃん！すごすぎ！

クラスメイト

どうだった？やっぱカッコよかった？その後なんか喋ったの？！

寺本　詩

いや、ほんとにただの競技だから…

クラスメイト

いやでもあのお題引いたら黒崎先輩しかないもんねっ

クラスメイト

いい引きしたね詩ちゃん！

寺本　詩

そう、なのかな…

クラスメイト

でもさ、このレースがあったおかげで詩ちゃん、黒崎先輩の特別みたいに感じちゃう〜

寺本　詩

（特別、なんかじゃない）

寺本　詩

（私なんかが黒崎先輩の特別なんかで良いわけがないよ）

寺本　詩

（今回はたまたま私が引いたってだけだよ）

クラスメイト

それに、詩ちゃんってサッカー部のマネージャーだよね？

クラスメイト

余計に羨ましい〜

寺本　詩

ううん、全然そんなんじゃない、から

寺本　詩

先輩は多分、何も思ってないよ

寺本　詩

（うん、きっとそう）

寺本　詩

（部活中も迷惑かけちゃってるし、良い印象を持つはずがない）

クラスメイト

でもさ〜

寺本　詩

ごめん！私これから部活あるから急ぐね!

佐倉　美琴

え、詩？！

寺本　詩

（逃げてきちゃった…）

寺本　詩

（もうこれ以上考えちゃうとおかしくなりそう…）

岡本　大輝

詩？

寺本　詩

大輝…！

岡本　大輝

お疲れ、今から部室行く？

寺本　詩

うん、今から行こうかと

岡本　大輝

俺も

岡本　大輝

一緒に行こうぜ

寺本　詩

う、うん

部室

寺本　詩

まだみんな来てないねー

岡本　大輝

まぁ体育祭の後だしな

岡本　大輝

余韻に浸ってんじゃね

寺本　詩

確かに笑

岡本　大輝

…てかさ

岡本　大輝

どうだった？借り物競争

寺本　詩

っ…

寺本　詩

（だ、大輝までその話…）

寺本　詩

みんな聞くけど、ほんとに一緒に走っただけ

岡本　大輝

お前もさ、思ってんの？

寺本　詩

…何を？

岡本　大輝

蓮斗先輩のこと、カッコいいとか

寺本　詩

えっ？

岡本　大輝

詩から誘ったってことは、そういうことだよな？

寺本　詩

ち、違うよ

寺本　詩

あの場の雰囲気が「黒崎先輩じゃなかったらありえない!」みたいな感じだったじゃん!

岡本　大輝

まぁなー笑

岡本　大輝

あの後なんか話したの？蓮斗先輩と

寺本　詩

別に？お礼したくらい

寺本　詩

あとは、お水までもらった

寺本　詩

倒れられたら迷惑だからって

岡本　大輝

ふーん、そっか

寺本　詩

どしたの？

岡本　大輝

別に

岡本　大輝

詩と蓮斗先輩、最近距離縮まった気がして

寺本　詩

そ、そんなことないと思うけど

岡本　大輝

まぁいいや

岡本　大輝

全然みんな来ねぇし、自主練にでも付き合えよ

寺本　詩

うんっ

数日後

寺本　詩

（体育祭からやたら女の子の目線を感じるようになったな）

寺本　詩

（絶対調子乗ってるって思われてるよね）

寺本　詩

（ごめんなさい、私なんかがあのお題を引いてしまって…）

望月　結梨

ねぇ、寺本さん？

寺本　詩

…？

突然後ろから声をかけられ振り向く

寺本　詩

（何この人、すっごい美人…）

望月　結梨

私は望月結梨（もちづきゆうり）

望月　結梨

蓮斗の幼馴染なの

寺本　詩

（黒崎先輩の、幼馴染さん…）

寺本　詩

（蓮斗って…呼び捨てするくらいの仲だ）

望月　結梨

体育祭、見てたよ

望月　結梨

借り物競走、一緒に走ってたよね？

寺本　詩

…はい

寺本　詩

たまたまお題を引いちゃって

望月　結梨

そう、偶然なのよね

ニコッと笑いながら少しだけ顔を近づけてくる

望月　結梨

蓮斗って、「他人に興味ない子」なの

望月　結梨

気まぐれで優しくされたことはあってもそれは特別じゃない

寺本　詩

…？

望月　結梨

自分から誰かを求めようとしない

望月　結梨

だから優しくされたりするだけですぐ勘違いする人が多いの

望月　結梨

周りの女子たちはみんなそうなのよ

寺本　詩

え、っと？

望月　結梨

あなたも、そうじゃなきゃいいけど

クスッと笑って背を向ける

望月　結梨

またね、詩ちゃん。勘違いして自惚れないようにね

寺本　詩

（…何だったんだろう）

寺本　詩

（ずっと笑顔だったのに、なんか胸が苦しかった）

寺本　詩

（勘違い、？）

寺本　詩

（私、勘違いしちゃっているのかな）

君との距離、0センチ

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