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なんでそんな…書くの上手いんですか(´;ω;`)え、もう好きです…、応援してます!目覚めて落ち着いたsmさんとちゃんと話し合って欲しいですね…もう…幸せになってくれ…(´;ω;`)
Nk視点
社員旅行からそろそろ1週間が経とうとしている会社の社内。
社内にはいつも通りの光景が戻りつつあるが、
ただひとりだけ、いつも通りじゃない奴がいた。
社員旅行が終わってから、ぶるーくの様子がおかしい。
仕事のミスは多いし、話しかけても上の空だし、
ご飯だって、最近は食べているところを見ない。
それだけではない。
経理部の女の子について聞いてみても、ぶるーくは顔を顰めるし
経理部の女の子も、もうぶるーくには興味がなくなってしまったみたいだ。
Nk
正直、心配だった。
こんな弱ったぶるーくを見るのは初めてだったから…
…
ぶるーくがこんな状態になった原因に心当たりがある。
部署内でひとつだけ空席になっているデスク。
社員旅行からスマイルさんが会社に来ていない。
有給をとっているらしいが、仕事人間のスマイルさんがこんな長い間休むなんて珍しかった。
ぶるーくの様子がおかしくなったのは、スマイルさんが会社に来なくなってからだ。
俺の知らないところで何かあったのだろうか…
落ち込む友人を見て見ぬふりすることはできなかった。
Br視点
体が重い。
体調が悪いわけでもないのに、ご飯が喉を通らない。
心にぽっかりと穴が空いてしまったみたいな喪失感を抱きながら帰りの支度をしていると、
Nakamuにご飯に誘われた。
…
…
Nakamuに連れてこられたのは、駅前の定食屋。
人は思ったより少なくて、すんなり中に入れた。
席に座って胃に負担がなさそうな鯖定食を頼む。
キンキンに冷やされたお冷やを飲んでいると、
定食屋に入るまで一言も喋らなかったNakamuが意を決したように此方を見た。
Nk
Nk
br
Nakamuの口から出たあの人の名前に、耳がピクリと反応する。
br
笑顔を浮かべてそう返した。
Nk
Nakamuの目が悲しげに伏せられる。
それからNakamuも喋らなくなって、気まずい空気が間に流れる。
店員
気まずい雰囲気から目を逸らすようにお冷やを口に運んでいると、
空気を切り裂くように出来立ての料理を持った店員さんがきた。
目の前に頼んだ鯖定食が置かれる。
メニューに載っていた通りの鯖定食。
頼んだはいいものの、食欲がない。
どうしたものかと頭を悩ませていると、Nakamuが口を開いた。
Nk
Nk
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Nakamuの言葉に、時が止まったかのように周りの音が聞こえなくなる。
どくどくと鼓動が早くなって、Nakamuの言葉が脳内でこだまする。
スマイルさんが、、辞める、、?
Nk
Nk
ガタッ
Nk
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気づいたら勢いよく立ち上がっていた。
Nakamuが不思議そうに此方を見上げる。
br
…スマイルさんが会社を辞めるのは間違いなく僕のせいだ。
僕が身勝手な行動をしたからッ…
どうにかしないとッ!
頭の中にはその考えだけが渦巻いていた。
Nk
焦る僕とは対照に、Nakamuは冷静に頷く。
Nk
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Nk
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Nakamuが真っ直ぐ僕を見る。
…
Nk
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Nakamuの言葉に押されるように、定食屋を飛び出した。
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走り続けて数十分。
普段はこんなに走らないから息は苦しいし、脇腹は痛いけど、
タクシーを呼んでいる暇はない。
一刻も早くスマイルさんのところに行かないとッ…!
ただがむしゃらに記憶を頼りにスマイルさんの家へ向かった。
…
br
更に走ること15分。
ようやくスマイルさんの家に着いた。
記憶と変わらぬ家のインターフォンを押す。
…スマイルさんには伝えなきゃいけないことが多すぎる。
走ったせいか、はたまたスマイルさんに会うのに緊張しているせいか、
心拍数がどんどん上がる。
…
ガチャ
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sm
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しばらくしてドアから顔を覗かせたのは、ずっと会いたかった人。
でもスマイルさんを見て、言葉を失った。
以前とは比べ、ひと回りくらい細くなった体に、目の下の酷い隈。
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心配して聞くと、スマイルさんもそう言い返してきたがバツが悪そうに視線を逸らした。
sm
冷たくそういうスマイルさんに胸が痛みながらも言葉を紡ぐ。
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sm
ドアを閉めようとするスマイルさんに慌てて、ドアを掴む。
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sm
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sm
そこまで話すとスマイルさんが大きくため息をついた。
sm
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そう言ってドアを開けた。
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数ヶ月ぶりに入ったスマイルさんの家を見て絶句する。
前来たときは、ほこりひとつ落ちてない綺麗な部屋だったのに
廊下には色々なものが散乱していた。
決して綺麗とは言い難い廊下を抜けて、案内されたのはリビングだった。
リビングも、本や服などが散乱している。
sm
スマイルさんが此方を見ながらそう言った。
意を決して、言葉を出す。
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謝っても許されないことをした自覚はある。
そのくらい、僕の罪は重い。
でも、僕は…
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…社員旅行の時からずっと考えてた。
なんで今になってDomとしての欲求が出てきたんだろうって。
僕にDomとしての欲求はないはずなのに、
あの時は理性を失うぐらいのDomとしての欲求が湧いてきた。
今まで関係を持った女の子達にはこんな欲求を抱かなかった。
むしろ、プレイは僕にとって興味のないものだったし、
『Dom』を求められること自体、苦手だった。
僕にDomとしての欲求はない。
じゃあなんでスマイルさんにはDomの欲求が出たのか…
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ずっと考えて、考えて、、
今日、Nakamuの言葉でやっと気づいた。
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色鮮やかな紫色の瞳が揺れる。
僕は、この人のことが…
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僕の言葉に、スマイルさんが下を向いて体をわなわな震わせる。
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スマイルさんの声がリビングに響いた。
スマイルさんが僕の胸ぐらを掴む。
驚いて見ると涙を浮かべて怒りを露わにするスマイルさんの瞳と目が合った。
普段は感情的にならないスマイルさんの初めて見る怒った表情。
僕が呆気にとられていると、スマイルさんが声を荒げた。
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スマイルさんがずっと心の内に秘めていたであろう本音。
その本音が、涙と言葉になって溢れ出した。
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ポタポタと、透明な雫が床を濡らす。
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sm
sm
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スマイルの手がパッと離されたかと思ったら、
スマイルさんが苦しそうに床に倒れ込んだ。
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慌てて手を伸ばし、スマイルさんが床に体を打ち付けるのを回避する。
体に力が入っていないスマイルさんを、座って横抱きにする。
sm
腕の中でスマイルさんが苦しそうに息をする。
息を吸ってばかりで過呼吸状態に陥ってしまっていた。
…サブドロップに入っているのだ。
ーーー助けないと。
そこまで考えて手を伸ばしたとき。
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伸ばした手がピタリ、と止まる。
過呼吸状態のスマイルさんを落ち着かせるには、コマンドを出すしかない。
Domである僕が、コマンドを…
…あんな酷いことをしておいて、
スマイルさんを追い込んでおいて、
僕が、コマンドを…?
頭がぐるぐると混乱して、思考がまとまらない。
…もし、コマンドを出して嫌われてしまったら?
…また手を振りは払われてしまったら?
…もう、スマイルさんに会えなくなってしまったら…?
そうなるくらいなら、僕じゃない別のDomを呼んで…
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そこまで考えたとき、苦しそうに呼吸をするスマイルさんが見えた。
腕の中の体は可哀想なくらい小刻みに震えている。
sm
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…僕は馬鹿だ。
スマイルさんの綺麗な頬に手を伸ばす。
Domである僕が今1番しなくてはいけないこと。
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そんなこと分かりきっていたはずなのに。
…
好きな人を助けないで、どうするというのだ。
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出されたコマンドに、スマイルさんは驚いたように目を見開く。
物音ひとつない静かな部屋に、小さな呼吸音が響いた。
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サラサラの触り心地のいい髪の毛をできる限り優しく撫でる。
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嫌われてもいい。
避けられてもいい。
もう、会えなくなっても…
目の前のこの人を、
スマイルさんを、助けられるのなら
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この恋を、終わらせてしまおう。
…
…
しばらくすると、スマイルさんの呼吸が落ち着いてきて瞼がゆっくりと閉じられる。
やがて、スースーと規則正しい寝息が聞こえた。
その寝息にホッと安心する。
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瞼を閉じたスマイルさんに先程までの苦痛の表情はなくて
いつもより幼く感じる寝顔が可愛らしく見えた。
その顔を見ると、胸がキュウっと締め付けられる。
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涙で視界が滲む。
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好きな人をこんな状態にさせるなんて。
やっぱり僕は出来損ないのDomなのだ。